武者陵司氏4月11日新宿セミナーより

武者リサーチの武者陵司氏が4月中旬に新宿で行った投資家向け「歴史的大相場が始まった!?」という講演のUPをPC動画でたまたま聴講したので、覚書メモを作ってみました。いつもながらの少数説ですが、普通の経済評論家や学者などは触れない論点満載で面白いと思いました。

1.2008年金融危機の評価

通説は、悲観論に立ち、原因として米国経済は債務依存体質であり、世界経済は借金に依存した米国の購買力に依存していた。「世界が作り米国が買う」という構造での成長はいつまでも続くはずもなく、実際破綻した。従って、金融危機後の市場価格こそ公正なものであり、大幅な財政出動を行った政策の有効性については、否定的。これに対して、武者氏は楽観論に立脚し、金融危機の原因を金融制度の欠陥による市場の崩壊と見る。具体的にはCDS(Credit Default Swap)のような保険をかけたから安心というような金融派生商品が、危機の時には有効に機能せず、パニックを生み出したと考える。市場価格も売られすぎのミスプライシング状態がしばらく続いた。だから、政策で対処することは有効であると考える。

2.2010年から2011年の米国経済

依然として米国経済の動向が圧倒的に重要で、FRBはGDPの伸び率を2.5~4.0%と予想している。ここで転換点の指標として注目しなければならないのは、(1)経営者の思考、(2)家計と消費、そして、(3)住宅市場である。

(1)経営者の思考
 ①在庫:2009年8月頃で在庫調整は終わった。
 ②雇用:失業率は10%弱だが、非農業部門雇用者数は3月、4月と増加に転じている。また、特筆すべきは、今回の景気後退期にあって、通常は増加すると考えられる労働分配率が史上最低水準に低下している。これは、米国企業が如何に凄まじい整理解雇を行ってきたかを物語る。
 ③設備:②と関連していることと思われるが、設備投資は落ち込んだが、キャッシュフローは減少しなかった。
 ④貸借対照表(B/S):この結果余剰資金は空前の水準に達している。設備投資はもちろん、M&A及び自社株買いが起こりやすい環境がそろってきている。

 2009年の主要国のGDPは、米国-2.4、日本-5.1、欧州-4.0なのに、金融危機前からの失業率は、米国5.8→9.3%、日本4.0→5.1%、欧州7.5→9.4%と米国の変化率が最も高い。


(2)家計と消費
自動車の販売台数はピーク時の半分、住宅販売は四分の一に落ち込んでいる。家計は我慢して需要が蓄積されている状態と判断され、雇用状況さえ好転すれば、一気に消費が高まる可能性が高い。

貯蓄率の推移は、月次で2009年5月6.4%と将来への不安を反映して高まったが、2010年になって1月3.3%、2月3.1%と下がってきている。

米国の家計の総資産から債務残高を控除した純財産は、
2007年第2四半期65兆ドル
2009年第1四半期48兆ドル
2009年第4四半期54兆ドル(総資産68兆ドル-債務残高14兆ドル)
金融危機で大幅に落ち込んだ後、回復傾向にある。そして、借金が多いと言われるが、純財産でこれだけ持っている点には注目しなければならない。

また、2009年第4四半期の統計によれば、家計の支払い金利は2030億ドルだったのに対し、受取金利及び配当金などの資産収入は2兆740億ドルに達する。

(3)住宅市場
「米国住宅買い易さ指数」統計は、2006年100だったのに対し、2009年170となっており、完全にお買得状態といってよい。また、新設住宅在庫は、歴史的に見ても最低水準になっている。もうこれ以上の市場の悪化は考えずらい。

3.2009年の証券金融市場の分析

株式市場は2009年3月に底を打って上昇、一方為替は11月まで米国ドル安が続いた。これは何故かというと、(1)株式市場の上昇からみても資金の逃避があったとは考えられない。(2)むしろ、超低金利状態となった米国ドルで資金調達して世界市場にもグローバル投資が行われた、そのためのドルキャリー(米国ドルを調達して投資通貨に換える)が起こった結果と見る。しかし、その動きは、米国の景気回復シナリオが大分見えてきた年末で終了し、将来のドル金利上昇を見越したキャリーの巻き戻しが起こりつつある。そのときには円キャリー(円で調達、円を売って投資通貨に交換する)がドルキャリーに取って代わると考えられるので、今後の「円安」を予想する。

4.日本市場と失われた20年

1995年~2008年の名目GDPの推移
 中 国: 5.0倍
 韓 国: 2.5倍
 米 国: 2.0倍
 日 本: 0.9倍

なぜ日本経済は、これほど成長力が失われたのか、その原因はデフレといわれ、デフレの要因は、
(1)中央銀行の金融政策失敗
(2)需給GAP
(3)経済のグローバル化及び技術革新
しかし、(2)はデフレが起こった理由はデフレと言っているに過ぎず、また、(3)は日本だけの問題ではなかったはずだとして、武者氏はデフレの最大の要因は「円高」にあったとする。

1995年に購買力平価で見た為替は、1米国ドル200円の水準だったのに対し、実際の取引レートは100円位だった。この内外価格差を埋めるため、日本の輸出企業は、労働生産性を上げると同時に一人当たり労働コストを引き下げることを続けなければならなかった。つまり、購買力平価で見た為替レートから30%以上も乖離した円高によって、日本企業の従業員は「いくらがんばっても賃金が上昇しない」と言う状態に置かれていたわけだ。この間、通常では考えられない円高水準が経済原則に沿って是正されなかった理由は、貿易摩擦、日本異質論などの日本封じ込め策が背景にあったのではないかと武者氏は分析する。

結果として、日本の輸出企業は、失われた20年でかつてない筋肉質の企業になっているはずなのだが、その成果は、延々と続く円高に持って行かれて目に見える形では表れて来なかった。しかし、日本封じ込め策の必要性は既になくなっており、円相場も普通の外国為替相場の変動率に回帰していくはずで、上記の円キャリーもあいまって今後円安になれば、輸出企業を中心に本来の業績を回復させ、これに引っ張られる形で相場は回復に向かうはすだ。

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