ソーシャル・メディアと就業規則

1.ソーシャル・メディア(Social Media)の隆盛と問題点

 Twitter、Facebookと米国発のソーシャル・メディア(Social Media)が勢いを増しています。検索の巨人GoogleもGoogle+の新サーヴィスを開始し、迎撃態勢を整えつつあるようで、ソーシャル・メディアをめぐる世の中の動きから目が離せなくなっています。そんな中で、従業員がTwitterなどに業務で知り得た情報を気軽に投稿してしまい、企業の信用問題に発展するような場合も散見されるようになりました(「軽率ツイート」大騒動に)

 これまでは、「会社のパソコンでインターネット、E-mail等を私的に利用してはならない。また、会社は不正使用がないか、会社のパソコンについて従業員の使用状況を適宜検査することができる」などの服務規律を就業規則で謳っておいて、服務規律に違反した場合には、一定の懲戒処分を行うことで就労時間中の問題にはそれなりに対処することができました。また、「業務上知り得た顧客及び従業員等の個人情報を社外に持ち出してはならない。その他別途定めた『秘密情報管理規程』を順守しなければならない。」、「業務上知り得た会社の業務の方針、重要事項等の社内機密を外部の人に話したり、関係する書類を見せたりしてはならない。また、雑談などから当該内容を外部の人に察知されないようにしなければならない。」といった類の服務規律は、従業員の私的な時間であっても遵守されると考えるのが常識です。

 もちろん、これらの規定は、ソーシャル・メディアであろうがなかろうが遵守されるべきことではありますが、現実社会に比べ、仮想世界性が高いともいえるソーシャル・メディアにおいては、現実世界におけるほど従業員の良識や警戒感が働きにくい傾向にあるのかもしれません。特に、匿名性が高いTwitterなどは要注意のようです。


2.ソーシャル・メディア(Social Media)への企業の対応

 日進月歩のIT技術に対して、できる限り事の本質を整理して、何らかの事前対策を準備しておくことは必要です。第一に、会社のPCでのインターネットへの接続を禁止にしてしまうというのは、今どき有り得ない選択のように思えます。また、スマート・フォンなどの高機能携帯端末が怒涛の勢いで普及している昨今、会社のPCだけ規制をかけても問題は解決しません。やはり、「携帯電話等高機能携帯端末は、就業時間中の使用を禁止する。ただし、業務でこれを使用することにつき事前に会社から許可を受けている者、特別の事情で電話又はE-mailの受信について事前に所属部長に届け出ている者は、この限りではない。」といった服務規律を準備する必要があります。

 第二に、技術的な側面から、会社のPCによるインターネットの使用では、個人のIDによる認証が必要な画面に入っていけない設定にすることによって、少なくとも会社のPCを使ってTwitterやFacebookを使うことはできなくなりますし、特定の掲示板への書き込みなどもできなくなります。しかし、こういった設定は、社内にそれなりのITに詳しい人材がいないと難しいことなのかもしれません。

 問題の本質は、入れ物がソーシャル・メディアという新しい容器ではありますが、中身は「個人情報の漏えい」又は「業務上知り得た秘密の漏えい」など古典的な話であり、従業員教育の徹底によって従業員が従業員として服務規律を遵守できればそもそも起こりえないことのようにも思えます。しかし、容器が新しくなることによって、従業員のこれまでの遵守意識を麻痺させたり、社会への伝播の速度が飛躍的に増してしまい、従来のような対処では手が付けられなくなるなど、古典的な事例とは様相を異にしているのも事実です。

 Facebookなどを会社として積極的に利用している日本コカ・コーラも「ソーシャル・メディアの利用に関する行動指針」を作成して、ソーシャル・メディアの隆盛を上手に活用しながらも、それに伴って生じ得る様々な不都合を回避しようとしています。行動指針は、1.本行動指針の基本理念、2.ソーシャルメディアに関するコカ・コーラからのコミットメント及び3.社員及び協力会社によるソーシャルメディアの利用についてからなり、個人の立場でソーシャル・メディアを利用する場合及びコカ・コーラを代表する立場で、各ブランドや企業についてソーシャル・メディアを通じて語る場合について述べています。

 個人の立場でソーシャル・メディアを利用する場合
 1.本行動指針の基本理念、2.ソーシャル・メディアに関するコカ・コーラからのコミットメントを理解した上で、3.社員及び協力会社によるソーシャル・メディアの利用についてを遵守することが求められます。ザ コカ・コーラ カンパニーが掲げる事業運営規範(Code of Business Conduct)、コカ・コーラシステムの社員及びコカ・コーラシステムの業務に従事する協力会社の社員が所属する各社の就業規則、及びその他の関連諸法令や方針等の遵守はもちろんのこと、ソーシャル・メディア活動においてコカ・コーラが掲げる5つの基本的価値観を理解し、ソーシャルメディア活動に参加する際に求められる4項目を遵守することは、ソーシャル・メディア上の活動に、たとえ個人としての立場で参加する場合であっても、必要な前提条件となります。なお、ソーシャルメディア活動に参加する際に求められる4項目の内の1つは、次のように述べています。
 
 ソーシャル・メディア上では、業務に関する記述と自身のプライベートに関する記述の境界が非常に曖昧になりやすい特徴があります。コカ・コーラシステムでは従業者の言論の自由を尊重していますが、同僚や上司、更にはビジネスパートナーもそれらのコンテンツにアクセスしたり、転送されて目にしたりする場合があることを忘れてはいけません。そのため、業務における機密情報の記載は一切行わないのは勿論のこと、コカ・コーラシステムとしての公式見解や利益に反する立場を公にしたような場合には、ブランド価値の毀損につながる議論や憶測を引き起こす可能性があることを、十分認識する必要があります。

 コカ・コーラを代表する立場で、各ブランドや企業についてソーシャル・メディアを通じて語る場合
 コカ・コーラシステムを代表する立場で、コカ・コーラの企業活動や各ブランドについてソーシャル・メディアを通じて発言するためには、所属する組織や雇用の形態にかかわらず、日本コカ・コーラが定める認定トレーニング・プログラムを受講して認定を受けることがその前提条件となります。各種ソーシャル・メディア上においてなされるコカ・コーラの企業活動や各ブランドに関する記述のうち、日本コカ・コーラが公認するアカウント内で、かつ認定トレーニング・プログラムを受講して認定を受けた従業者によって記述されたもののみが、コカ・コーラシステムの公式見解として認定されます。なお、公認アカウントは、日本コカ・コーラの社員ならびに公認アカウントの運営サポートを委託された代理店及び制作会社のスタッフにより運営・記述されます。

「ソーシャル・メディアの利用に関する行動指針」

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