未支給年金の問題-その1-

1.未支給年金とは

 年金の給付は、原則として毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の偶数月にそれぞれの前月までの分が支払われます。すなわち、8月15日に支払われる年金は6月及び7月分の年金という訳です(国民年金法18条3項、厚生年金保険法36条3項)。ところで、老齢年金、障害年金又は遺族年金のいずれを受給している場合でも、受給権者の死亡は失権事由です。例えば7月中に老齢年金の受給権者が死亡した場合、年金の支給は年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から権利が消滅した月までなので、6月と7月分の年金支分権は発生していますが、8月15日の支払日に受給権者がこの世にいなくなったために本来支払われるべき年金が受け取れないということになります。こういう事態は、年金が後払い制度であるために全ての年金受給に関して必然的に発生します。

 このような事態を比較的簡便な方法で回避し、同居の親族を早期に救済できるように国民年金法及び厚生年金保険法は、次のような規定を設けています。

(国民年金法)
第19条 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
(厚生年金保険法)
第37条 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。


つまり、上記に挙げられる親族で年金受給権者と生計を一にすると認められた者は、相続手続などにはよらず自己の名で、未支給の年金を請求することができるということです。上の例ですと、受給権者本人に支払うことが出来なくなった6月及び7月分の年金を未支給の年金として支給請求することになります。


2.未支給年金請求手続き

 死亡した受給権者の未支給年金の給付を受けようとする人は、死亡届と一緒に「未支給【年金・保険給付】請求書」を管轄の年金事務所に提出します。この請求書に添付しなければならない書類は以下の通りです。

(1)受給権者の年金証書(添えることができない場合は、その事由書)
(2)受給権者の死亡の事実を明らかにすることができる書類
(3)死亡した受給権者と請求者との身分関係を明らかにすることができる市町村長の証明書又は戸籍抄本(住民票は不可)
(4)受給権者と請求者の住民票の写し(住民票上、受給権者と請求者の住所が異なっているときは、住民票の他第3者の証明を受けるか、又は受給権者の死亡の当時、請求者が受給権者と生計を同じくしていたことを明らかにする書類)
(5)請求書の金融期間の証明欄に証明が受けられない場合、預金通帳の記号番号についての当該金融機関の証明書
(6)死亡者がまだ年金給付又は保険給付の請求書を提出していなかったときは、その年金請求書とその添付書類等


3.未支給年金と課税

 年金は受給権者に支給される場合、原則として公課は禁止されていますが、例外として老齢年金等については所得税が源泉徴収され、住民税も課税されます。実際、年金を受給している件数から言えば、老齢年金等が圧倒的に多いと思われますので、あたかも例外の方が原則と言える状況です。ところで、未支給年金について、課税関係がどのように取り扱われ、それはどのような理屈によるものなのでしょうか。

 単純に相続税の対象になると考えられそうですが、実際の国税庁の見解は「未支給年金請求権については、当該死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。なお、遺族が支給を受けた当該未支給の年金は、当該遺族の一時所得に該当します。」というものです。

 その理由として、第1に、国民年金法19条等の規定が、支給請求できる者の範囲及び順位について民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは異なった定め方をしていることは、民法の相続とは別の被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたものであると解されるからです。第2に、未支給年金請求権は、法律の規定に基づき一方的に付与される契約に基づかない請求権でありますが、相続税法第3条1項6号の「契約に基づかない定期金(これに係る一時金を含む)に関する権利」をみなし相続財産として相続税の課税対象とするという規定にもかかわらず、未支給年金請求権は「契約に基づかない定期金(これに係る一時金を含む)に関する権利」には含まれないと考えられているからです。以上2点から、未支給年金請求権を本来の相続財産として相続税の課税対象とするべきではないと考えているのです。

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