老齢基礎年金繰下げの損得計算

 何らかの理由で老齢基礎年金を繰下げたときの損得計算を考えてみたいと思います。年金の繰下げを希望されるような方は、一般的に健康に自信があり、長生きされるということを前提として考察して行きます。

1.老齢基礎年金の繰下げ

 まず、国民年金法は、繰下げについて28条で次のように規定しています。

(支給の繰下げ)
第28条 老齢基礎年金の受給権を有する者であつて65歳に達する前に当該老齢基礎年金を請求していなかつたものは、厚生労働大臣に当該老齢基礎年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者が65歳に達したときに、他の年金給付(付加年金を除く。以下この条において同じ。)若しくは被用者年金各法による年金たる給付(老齢又は退職を支給事由とするものを除く。以下この条において同じ。)の受給権者であつたとき、又は65歳に達した日から66歳に達した日までの間において他の年金給付若しくは被用者年金各法による年金たる給付の受給権者となつたときは、この限りでない。
2.66歳に達した日後に他の年金給付若しくは被用者年金各法による年金たる給付の受給権者となつた者が、他の年金給付若しくは被用者年金各法による年金たる給付を支給すべき事由が生じた日(以下この項において「受給権者となつた日」という。)以後前項の申出をしたときは、次項の規定を適用する場合を除き、受給権者となつた日において、前項の申出があつたものとみなす。
3.第1項の申出をした者に対する老齢基礎年金の支給は、第18条第1項の規定にかかわらず、当該申出のあつた日の属する月の翌月から始めるものとする。
4.第1項の申出をした者に支給する老齢基礎年金の額は、第27条の規定にかかわらず、同条に定める額に政令で定める額を加算した額とする。

 従って、66歳に達した日後に付加年金又は被用者年金各法による老齢若しくは退職を支給事由とする年金を除く他の年金の受給権を取得した場合、次の3つの中から選択することが出来ます。

(1)支給繰下げの申出を行い、他の年金の受給権を取得したときから増額された老齢基礎年金を受給する
(2)支給繰下げの申出を行わず、65歳から他の年金の受給権を取得したときまでの本来受けるべきであった老齢基礎年金を遡及請求(一括受給)し、他の受給権を取得した日以後は、増額されない老齢基礎年金を受給する
(3)他の受給権が発生した年金を受給する


2.繰下げの損得

 さて、繰下げの申出を行った場合の増額率ですが、昭和16年4月2日以後に生まれた者については、次の式から求められる増額率を本来の年金額に乗じて求められた額が年金額に加算されます。ただし月数については60月(5年)が上限とされています。従って、年齢別増額率は以下の表のようになります。

増額率=(受給権取得月から繰下げ申出月の前月までの月数)×0.007

老齢基礎年金繰下げ増額率新
そこで、20歳から60歳まで40年間第1号被保険者として保険料を納付し、かつ、付加年金の保険料も支払ってきた模範的な被保険者を例に損得計算をしてみると以下のようになります。

65歳時の年金額(平成23年度現在):884900円 (788900円+96000円)

70歳繰下げ時加算額:884900円×0.42≒371700円 (788900円×0.42≒331300円 96000円×0.42≒40300円)
68歳繰下げ時加算額:884900円×0.252≒223000円 (788900円×0.252≒198800円 96000円×0.252≒24200円)

 そこで、まず気になるのは、何歳で65歳から70歳までに受給するはずだった年金額を取り戻すことができるのかということだと思います。本当は現実的な割引率で現在価値に割引くことを考えなければならないのでしょうが単純化のために無視しますと、884900円×5÷371700円(68歳繰下げだと884900円×3÷223000円)の計算をすることで求められます。結論としては、約12年程(68歳繰下げでも同じ)かかり、およそ82歳位(68歳繰下げだと80歳位)ということになります。

 ところで、大正15年4月2日から昭和41年4月1日生まれの者については、その者の配偶者が20年以上厚生年金保険の被保険者又は共済組合の加入員であった場合、その配偶者に加給年金が加算されて支給されます。その者が65歳に達して老齢基礎年金の受給権を取得すると、その配偶者に対する加給年金が無くなる代わりにこの老齢基礎年金に振替加算が行われます。しかし、振替加算は本人の老齢基礎年金に加算されるものなので、本体たる老齢基礎年金を繰下げてしまうと振替加算も繰下げ支給開始の時まで支給は停止されてしまいます。しかも、振替加算の額の増額は行われません。振替加算の額は、15200円から227000円(平成23年度現在)です。この振替加算が付く人は、5年間で最低でも76000円を放棄することになります。

 ところが、昭和16年4月1日以前生まれ(平成23年4月現在既に70歳以上)の人の場合には、当該年金の受給権取得日から起算して支給の繰下げを申し出た日までの期間(以下「計算期間」という)に応じて次のような高い増額率になっていたため、運用の細かな差異を無視して現行に当てはめてみると、何と6年足らずで65歳からの年金受給者に追いつき、76歳の時には逆転しています。付加年金を全く掛けていなかった人でも6年少々で付加年金を40年間掛けていた人に追いつき、こちらも77歳で完全に追い越してしまいます。

老齢基礎年金繰下げ増額率旧
70歳繰下げ時加算額:884900円×0.88≒778700円 (788900円×0.88≒694200円 96000円×0.88≒84500円)

コメント

非公開コメント

トラックバック

http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/tb.php/170-b112f33c