もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

遅ればせながら、岩崎夏海著「もしドラ」を読んでみました。別に萌えキャラの表紙に抵抗感があったという訳ではなく、単に天邪鬼な性格が出て、ここまで良く売れてしまった作品なので逆に手を伸ばさないということがよくあるのです。その上、速読ならぬ「遅読」なので、もともと買う本は厳選する傾向もあります。

さて、「もしドラ」ですが、Amazonの読者批評欄を読むと、流石によく売れているだけあってその多さに驚かされます。次に、7月10日現在の参考になった批評3傑を見てみますと、曰く、「著者が秋元康に師事したその関係者であること」、「売れた理由は表紙が萌えキャラだからで中身の質は大したことなし」、「文章はライトノベルより読みづらい」などいずれも酷評であることも意外な感じがします。

Amazonの読者批評欄はさておき、楽しんで物語を追って行くうちに、ドラッカーの教えの基本的なところが理解できるという点で、良書だと思いました。文章の巧拙の評価は、遅読を自覚している小生も一気に読めましたので、ライトノベルより読みづらいという評価は全くの的外れでしょう。ドラッカーの気質は、どうやらイチロー選手などと同じ1型の完全主義者だったという話もあり、自己管理の話などにはついていけないかなという先入観もあったのですが、もしドラの主人公を見習って著作を熟読してみたいという気持ちにさせられました。

この本の序盤に、一番の論点の一つである組織の定義付けの重要性についての記述があります。野球部は野球をするための組織というようなわかりきったことではなくて、野球部にとって「顧客」とは何かという問いから始めて、野球部にとって顧客とは、高校野球を支えてくれていると思われる全ての利害関係者(これには野球部員自身も含まれていることに主人公は気付くのですが)であり、野球部とは「高校野球を支えてくれていると思われる全ての利害関係者に感動してもらう組織である」と定義付けます。その上で、その定義付に最も適った目標として「甲子園に行くこと」という目標が初めて設定されることになります。

企業経営においても、今どきは企業理念の設定ということが当たり前のように言われるようになってきましたが、このもしドラの主人公のように突き詰めて実感の伴う定義付けを最初にしておけば、企業理念が実感を伴わない飾り物に陥ってしまうことも避けられ、実効性のある大原則になりうる可能性が高まるのでしょう。

さらに、国全体に目を向けると、日本国という組織においては、日本国民全体がその中核となる顧客というわけで、また、国際社会が出来上がっている現代においては世界も顧客と考えられます。その世界という顧客に対して、日本はこれまで優れた工業製品及び文化の提供、途上国に対する莫大な援助などによって少なからぬ貢献をしてきており、明らかに喜ばれる存在、役に立つ存在であり続けてきました。ほんの一握りの不条理なクレーマーの主張に耳を傾け過ぎて、その中核顧客までもが組織を嫌いになるような教育や宣伝をするというのは、ドラッカー流からすると下の下の策であることがわかります。衰退期に入って長期にわたる景気後退と財政悪化に見舞われている我が国の立て直しも、中核となる顧客に対するマーケティングによる組織の基本理念の再構築から手を付けて、その上で目標を設定するという作業が必要な時期に来ている気がいたしました。

コメント

真摯さ

もう一つ、マネジャーになる人にとって不可欠の資質として、ドラッカーは「真摯さ」を挙げています。大阪の橋下知事が広く府民に人気がある秘密の1つは、彼がこの資質を持っていることを常に府民に見せ続けているからなのでしょうね。

2011年07月11日 10:35 from ヨコテ URL

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