年金額の改定とマクロ経済スライドなど

 今月第1回目の支給が実施される平成23年度の年金額は、昨年度に比べて0.4%引き下げられることになっています。この結果、老齢基礎年金の満額支給金額が792100円から788900円に3200円引き下げられることなど、既に報道等でご案内の通りです。公的年金の支給額引下げは、平成18年度以来5年ぶりになりますが、これは総務省が発表している平成22年の全国消費者物価指数が前年比0.7%の下落となった事実を踏まえています。

 それでは、年金額の改定が一体どのように行われるのか、その仕組みについて解説していきたいと思います。


1.マクロ経済スライド

 いきなり訳のわからない年金用語が出てきます。しかし、平成16年の法改正により、年金額を改定するときの大原則は、このマクロ経済スライドによるということになっています。それでは、マクロ経済スライドとは何かということです。従来からあった年金額改定の仕組みは、賃金及び物価増減率のみを考慮していたのに対し、マクロ経済スライドではこれらに加えて、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、平成35年度末まで年金額の上昇を抑制する仕組みです。ここでは、賃金及び物価の上昇率(まともに経済成長している国では普通毎年上昇するものなので)を労働力人口の減少及び平均余命の伸びで値切った末に出てきた改定率を改定率Aとします。そこで、老齢基礎年金を例に話を進めると、年金額は次の式で決定するとしています。

780900円×改定率A

 平成35年度末までは、なぜこうなるかといいますと、まず政府は、少なくとも5年ごとに、年金「財政の現況及び見通し」を作成し、遅滞なく公表しなければならないと法律で規定されています。その「財政の現況及び見通し」の中で明らかにしなければならないことは、(1)保険料及び国庫負担の額並びに国民年金法による給付に要する費用の額その他の国民年金事業の財政に係る収支の現況、(2)当該「財政の現況及び見通し」が作成される年以降おおむね100年間とされている財政均衡期間における前記(1)の収支の見通し、です。

 そして、「財政の現況及び見通し」を作成するに当たり、国民年金事業の財政が、財政均衡期間の終了時に給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金を保有しつつ当該財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には、年金たる給付の額を調整するものとするとしています。その給付額を調整するための期間を「調整期間」といい、今回その開始年度は平成17年度とされているのです。

 ここでいう積立金とは、国民年金特別会計の国民年金勘定に係る積立金のことを指します。ここまで述べたのと同様の規定は、厚生年金保険法にも定められていて、厚生年金の場合、積立金とは厚生保険特別会計の年金勘定に係る積立金及び責任準備金を指しています。


2.物価スライド特例措置

 ところが、前述のマクロ経済スライドは、平成17年から既に5年を経過した今現在も実施されない保留状態が続いています。訳のわからぬマクロ経済スライドなどという専門用語をせっかく勉強したのに虚しくなるところですが、この理由は、平成12年から14年の景気後退期に生じた-1.7%の物価下落がその後の物価上昇によって相殺されるまで、マクロ経済スライドを含む前述の原則的な年金額の改定方法の実施を延期することとしてしまったからです。平成12年といえば2000年ですが、小泉政権の誕生が2001年の4月であり、同政権が景気後退が窮まった閉塞感の中から生まれたことを思い出すと、マクロ経済スライドの実施を延期した当時の経緯を想像することができます。

 そして、現在行われている物価スライド特例措置による年金額改定の方法は、次の式となります。

804200円×改定率B

 804200円とは平成12年改正後の年金額であり、仮に改定率Bとおいた改定率は、物価が上昇しても据え置かれた-1.7%を解消するまで物価上昇率を反映させず、物価が下落したときにだけ改定率を引き下げるというものです。実際に物価が下落した場合の改定率変更の方法ですが、直近の年金額改定時の物価水準を下回った分を引き下げるということになっています。直近の改定は5年前の平成18年度ですので、平成17年の物価水準を見ていきます。そして平成17年の物価水準からの物価増減率は、18年+0.3%、19年±0、20年+1.4%、21年-1.4%、そして22年-0.7%でしたので、23年度分になって初めて平成17年の物価水準を0.4%下回ることになり、その分の年金額が引き下げられることになったのです。

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財政の現況及び見通し

来年平成26年は「財政の現況及び見通し」作成年に当たります。

2013年11月13日 09:27 from ヨコテ URL

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