厚生労働省の年金改革案

厚生労働省が政府の「社会保障と税の一体改革」で実現を目指す年金制度改革案の全容が5月20日に明らかになりました。

改革案の骨子は、次の通りです。

1.現行制度の改善

(1)働き方の選択に影響を与えない制度にする
 ①短時間労働者の厚生年金への加入
 ②働く60~64歳の年金減額緩和
 ③産前・産後も厚生年金の保険料を免除

(2)厚生年金と共済年金の一元化
 ①公務員、私学教員も厚生年金に加入
 ②保険料率や給付要件を厚生年金にそろえる

(3)最低保障機能の強化
 ①受給資格を得られる期間を短縮
 ②低所得者の基礎年金額を加算

(4)能力に応じた負担を求める
 ①高所得者の基礎年金額を減額
 ②高所得者の厚生年金保険料の上限引き上げ

(5)年金財政の持続可能性の確保
 ①基礎年金国庫負担二分の一の維持
 ②支給開始年齢の引き上げを中長期的に検討
 ③デフレ経済下での総合調整策の検討

2.新しい年金制度の方向性(一定準備期間が必要)

(1)所得比例年金(社会保険方式)
 ①職種を問わず、全ての人が同じ制度に加入
 ②所得が同じならば、同じ保険料、同じ給付
 
(2)最低保障年金(税方式)
 ①高齢期に最低限受給できる額を明示


1.現行制度の改善では、共済組合を原則廃止して厚生年金保険制度に一元化することを明示した点は大いに評価できますが、その他は小手先の改善案ばかり並んでいる印象をぬぐえません。また、基礎年金国庫負担二分の一の維持というのは、福祉目的税化した消費税の導入ということも当然念頭にあると見なければなりません。現行のままの賦課方式で行くか、積立方式を中心にした制度に改めるかという明々白々な論点を「デフレ経済下での総合調整策の検討」などとお茶を濁している点、いまさら何を検討するのかと言いたいです。

2.新しい年金制度の方向性では、政府及び与党の基本方針がないためにこの程度の素案しか出しようがないのでしょう。具体的な枠組みを構想するためには、所得が同じならば同じ保険料、同じ給付と言っても、所得を一元的に把握する制度が未だ手つかずの状態です。また、最低保障年金を実施するためには、当然税制度にも踏み込んで行く必要がありますが、百年に一度の大不況に震災が加わったしまった状況で、消費税の大幅引き上げが可能とはとても思えません。小生は、所得税の累進性を強める方が良いかと現段階では考えています。ただし、それには条件があって、それは、仕事なり、商売なりで大金を稼ぎ、多額の所得税を納めている人は、嫉妬されず、尊敬の対象になるという文化を根付かせることです。金持ちに対する嫉妬は、税及び年金に対する基本知識の不足に起因していると思われるものがあります。価値観の話は脇に置くとしても、一般的に税と年金の基本的なことも知らない人が多いのが現状です。税と年金の基礎の基礎は、義務教育の中学校でもう少し実践的に教育してはどうかと思うのです。

===5月21日 日本経済新聞より引用===

厚生労働省の年金改革案は働き方の多様化への対応で具体策を盛り込んだ。パートなど非正規の労働者の厚生年金の加入条件を緩め、週20時間以上に広げる。働く女性の産休中の保険料を免除し、子育てを支援する。高所得の会社員の保険料負担は引き上げる。高齢者については高所得者の年金は減額する一方、低所得者の年金は加算する。

改革案は現在の年金制度について「労働時間や収入によって適用が変わり、就業行動や事業主の雇い入れに影響を与えている」と指摘。「働き方・ライフコースの選択に影響を与えない制度」を目指すと打ち出した。

「3号問題」対応先送り 
具体的には厚生年金の加入要件を緩め、非正規労働者の加入を促す。現在は週30時間以上働く人としている対象を雇用保険と同じ週20時間以上に広げる方向だ。ただ、企業の保険料負担が増えるので実現には曲折も予想される。
 
出産・育児期の女性への支援策も拡充する。現在は育児休業中だけとしている厚生年金の保険料の免除期間を産前・産後の休業期間まで広げる。
 
夫が会社員の専業主婦である「3号被保険者」をめぐる問題では対応を先送りする。新たな保険料負担は求めない。
 
高所得の会社員には負担増を求める。厚生年金の保険料は報酬に応じてかかる仕組みで、現在は月額報酬が60万5千円以上だと保険料が月額約9万9千円で頭打ちとなる。この上限を引き上げ、保険料負担を増やす。
具体策を示さず、方向性を示すにとどめた項目も少なくない。例えば、年金受給資格を得るのに必要な期間(現在は25年)について、厚労省は10年に短縮する案を検討しているが、「短縮することを検討する」との表現にとどめた。
 
低所得の高齢者の基礎年金は、定額か定率での加算を検討する。厚労省内では定額で1万6000円程度、定率で25%の加算案が軸だ。いずれも民主党の議論が収束してないため数字を明記しておらず、財政への影響は分からない。

給付抑制は踏み込み不足 
民主党が掲げた月額7万円の最低保障年金の創設は「最低限これだけは受給できるという額を明示」という表現にとどめ、年金水準に触れていない。導入に40年かかる長期課題と棚上げした印象は否めない。
 
現役世代の負担増を和らげるための給付抑制策は踏み込み不足だ。高所得の高齢者の基礎年金(40年加入で月約6万6000円)を最大で半減する案を掲げたが、高所得者とみなす収入基準や減額でどれだけの給付抑制効果が出るのかといった肝心の点は不明だ
 
給付抑制効果が大きい支給開始年齢の引き上げも検討課題という位置付けにとどまる。長期的に年金財政をどう安定させるかの道筋は見えない。

=== 引用終わり ===
 

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