社会保障協定とは何か

1.社会保障協定とは何か

 例えば、日本企業に籍を置く日本人従業員Xが米国の子会社に出向しているような場合において、Xは放っておくと日本の厚生年金保険の被保険者として保険料を負担すると同時に米国の社会保険制度にも加入して保険料を負担することになります。社会保障協定とは、このような二重加入の防止を目的として2国間の協定に基づいて発効する制度です。社会保障協定を締結した2国間では、就労地である国の制度が優先され、原則として就労地の制度にのみ加入することになります。但し、例外的に一時的な派遣の場合には、派遣元の国の制度にのみ加入することとしています。原則で行くか例外措置になるかの分かれ目の目安は、5年とされています。当初から派遣期間が5年以内の場合、派遣先の国の社会保障には加入せず、上記Xの例でいえば米国滞在中も厚生年金の被保険者を続けます。派遣期間が5年を超える場合、又は何年になるかはっきりと決められない場合は、原則通り派遣先の制度にのみ加入します。

 社会保障協定を締結するもう一つの目的として、短期滞在による保険料の掛捨て防止のために加入期間の通算が行えるようにするということが挙げられます。協定の内容によっては加入期間の通算ができない場合もありますが、米国を始め多くの場合、一方の国の年金制度の加入期間のみでは受給資格期間を満たせない場合に、他方の国の年金制度の加入期間を一方の国の加入期間とみなして受給資格期間に通算することが認められています。とは言っても、通算された加入期間に応じて計算された年金が一方の国からまとめて支給される仕組みではなく、一方の国の実際の加入期間に応じて計算された年金額が一方の国から支給され、他方の国でも同様に受給資格期間の通算が行われて、受給資格を満たせば、他方の国で実際に加入していた期間に応じて計算された額の年金が支給されることになります。


2.国民年金の場合

 国民年金の第1号被保険者が住所を協定相手国に移すと、国民年金の強制加入被保険者である第1号被保険者ではなくなります。一方、相手国内で事業活動を行った場合、外国人であっても一定の要件に該当すれば相手国の年金制度に加入することになります。但し、その事業活動が5年以内の一時的なものである限り、相手国の年金制度への加入が免除されます。


3.厚生年金保険の場合

 厚生年金保険の場合、協定の本人への適用は前述のとおりです。厚生年金保険の被保険者によって生計を維持する20歳以上60歳未満の配偶者は、居住地にかかわらず、国民年金の第3号被保険者です。従って、相手国に派遣された者が引き続き厚生年金の被保険者である限り、その配偶者が、相手国にいるか日本にいるかにかかわらず要件に該当すれば、第3号被保険者になります。

 また、相手国に派遣された者が原則通り相手国の年金制度のみに加入することになった場合であっても、その配偶者は、就労していなけらば、相手国の年金制度に加入する義務はありません。配偶者は、日本に居住していれば国民年金の第1号被保険者となります。相手国に居住しており、かつ日本人であれば、国民年金の強制加入被保険者ではなくなり、被保険者になりたければ任意加入することになります。

 なお、共済年金のうち、国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合の組合員が相手国へ派遣される場合は、派遣期間にかかわらず、相手国の年金制度への加入が免除されます。一方、私立学校教職員共済の加入員が相手国へ派遣される場合の取扱いは、厚生年金保険の被保険者の場合と同様になります。


4.社会保障協定の現状

 社会保障協定は、「社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例に関する法律」の施行が平成20年(2008年)4月1日からも分かる通り、比較的新しい制度です。2011年3月末現在我が国との間に社会保障協定を締結している国は以下の通りです。

ドイツ、英国、韓国、米国、
ベルギー、フランス、カナダ、
豪州、オランダ、チェコ

コメント

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2011年06月09日 14:00 from -

Re: オーストリア在住

米国の例ですが、日米の協定が発効する以前に米国の社会保障制度に加入していた期間が5年、その後日本に帰国して20年間日本の年金制度で保険料を納め続けて今年60歳に到達したとします。その間に協定が発効していますので、この人は5年+20年=25年で日本の老齢基礎年金の資格を満たしています。また、米国の年金も日米通算で10年以上ありますので、受給資格を満たします。ただし、年金額は、日本からは20年分、米国からは5年分相当です。この方が、もし協定発効以前の米国在住時代に国年に任意加入していれば(米国の制度と重複して保険料を支払っていた)、日本から支給される年金は当然25年分になります。国によって社会保険制度は異なるので、必ず在留先の制度を良く調べてみてください。

2011年06月09日 20:56 from ヨコテ URL

社会保障協定締結国現状

2013年12月現在
スペイン(平成22年12月発行)
アイルランド(平成22年12月発行)
ブラジル(平成24年3月発行)
スイス(平成24年3月発行)
交渉中などイタリア、ハンガリー、ルクセン、印度、スェーデン、中国、オーストリア、スロバキア、フィリピン、トルコ

2013年06月16日 14:14 from ヨコテ URL

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