有期労働契約における解雇の問題_1

1.期間の定めのある労働契約(有期労働契約)

3箇月、6箇月又は1年など、労働関係の期間が定められている契約を「期間の定めのある労働契約(又は雇用契約)」と呼びます。しかし、通常正社員だって定年までの期間が定められているではないかという方がおられるかもしれませんが、いわゆる正社員が会社と締結している労働契約は、「期間の定めのない労働契約」とされています。

労働基準法14条1項は、有期労働契約の期間について原則3年の上限を設けて制限しています。

「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。
1.専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
2.満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
(註)高度の専門的知識を有する者の例:博士の学位を有する者、公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、薬剤師、不動産鑑定士、弁理士、技術士、社会保険労務士又は税理士の資格保有者、システムアナリスト試験等合格者、特許発明の発明者等、その他年収1075万円以上のシステムエンジニア等一定の業務に就こうとする者であって、一定の学歴と実務経験を持つ者

次に、一般法としての民法は、どのように定めているかを見ておきます。民法623条から631条で雇用契約について規定しています。そのうち626条及び628条で、期間の定めのある雇用契約について次のように述べています。

(期間の定めのある雇用の解除)
第626条 雇用の期間が5年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、10年とする。
2.前項の規定により契約の解除をしようとするときは、3箇月前にその予告をしなければならない。

(やむを得ない事由による雇用の解除)
第628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

一般法である民法に対して特別法である労働基準法及び労働契約法により厳しい規定がある場合には、それらの特別法による規定の方が優先する。前述の基準法14条1項及び基準法附則137条により、労働者の権利を保護するための規定が設けられています。

基準法附則
第137条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。


2.解雇と雇止めとの違い

雇止めとは、期間の定めのある労働契約の「期間満了時」において、事業所側の意思により契約を更新しないことです。前提として、契約更新の可能性がありながら、事業所の意思で更新が為されなかったという含意があります。しかし、契約期間は当事者の合意によって決定されたものであり、期間が満了すれば、有期労働契約の更新は労使双方の合意があって初めて成立するのが建前です。論理的には、雇止めは原則として認められるのであって、原則として認められる雇止めについて、個別の有期労働契約の実態を見て労働契約期間満了をもって更新しないとすることに問題があると判定される場合、例外的に労働者の権利が保護されると判例は考えていると頭を整理することができます。

これに対して、有期労働契約における解雇とは、労働契約期間途中における解約権の行使であり、民法628条及び労働契約法17条1項は、「やむを得ない事由」がある場合でなければ、契約の解除はできないとし、また、労働者を解雇することはできないとしています。「やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるものですが、契約期間は労使が合意して決定したものであり、本来遵守されるべきものですから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、期間の定めのない労働契約における解雇権濫用法理よりもさらに厳格な基準によって判定されることになっています。すなわち、解雇権濫用法理では「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」に権利の濫用に該当するとして解雇無効と判定されますが、有期労働契約の場合、権利濫用法理に該当しなくても、「やむを得ない事由」には当たらないと判断され、解雇無効とされる場合があり得るということです。

仮に、「やむを得ない事由」があると判定され、解雇が可能になったとしても、民法628条後段で、損害賠償の責任を負わねばならない場合が考えられます。この場合、契約期間の途中で解雇した場合の具体的な損害賠償額は、本来の契約期間の残存期間に対応した賃金相当額になります。従って、解雇が認められたとしても、損害賠償の請求を受けた場合には、本来の契約期間の賃金相当額を補償しなければならなくなる可能性があります。
20110406_桜@不忍池0014

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