試用期間とは何か_(三菱樹脂事件)

1.試用期間の性質

 三菱油脂事件のもう一つの主要論点は、試用期間の性質についての議論です。どういうことかといいますと、件のXは、採用時の面接で不採用になった訳ではなく、一旦採用となってから、3箇月の試用期間中に明らかになった経歴秘匿事実を理由に試用期間満了とともに本採用をYから拒否されたということです。

 今日、多数説は試用期間を「解約権留保付労働契約説」を支持しているとされています。解約権留保付労働契約説とは、採用により当初から期間の定めのない通常の労働契約が締結されているが、試用期間中は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が大幅に留保されているとする立場です。本最高裁判決でも試用期間の性質は個別に判断されるべきとしながらも、長期雇用制度下の通常の試用期間は、解約権留保付労働契約を構成するという判断を下したものと解されています。

 これに対して、試用期間中は未だ労働契約は成立していないとする学説があります。試用期間は、労働契約そのものではなく、予備的に労働者の職業上の能力・適格性を判断するための特別な「試用契約」が締結されただけなので、使用者は、この期間に適格と判断された者と試用期間満了時に改めて労働契約を締結する。従って、試用期間満了後の本採用の拒否は使用者の自由であるという立場で、「予備契約説」と呼ばれています。


2.解 説

 試用期間中に労働契約が成立しているのか否か。そのことにこだわるのは、労働契約が成立していれば、採用拒否の問題ではなく、「解雇」の問題になるからです。労働契約法は、第16条で解雇権の濫用について規定していますが、「解雇権濫用法理」は労働契約法制定以前から確立していた法理で、我が国の労働法では、使用者の解雇権の行使について厳しい制限が課されています。

 しかし、解約権留保付労働契約の解約権が通常の労働契約の解雇権と全く同じものだと解したのでは、試用期間を設けている意味がありません。本最高裁判決では、試用期間中の留保解約権に基づく解雇は通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められてしかるべきとした上で、「留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合のみ許される。」と判示しています。

 とはいえ、判決の文言は、客観的合理的理由及び社会通念上の相当性という「解雇権濫用法理」の文言そのものとも読むことができます。試用期間中の解雇は通常の解雇に比べ制限がより緩やかと考えて、安易に解雇するようなことは、決してあってはならないと思うのです。


3.その他

 試用期間の長さは一体どのくらいまで許されるのだろうということです。留保解約権が解雇権の行使に比べ、多少緩やかな程度ということであれば、長期間の試用期間は実務的にあまり意味がないようにも思えます。法律上直接的な制限はないようですが、あまりに長いものは、公序良俗違反で無効になる恐れもあると考えるべきでしょう。常識的には、長くても1年が限度というところではないでしょうか。ここでも、結論は試用期間をあてにせず、採用時にきちっと人物を見るということに尽きてしまいます。

 また、労働基準法第21条4号は、同法第19条「解雇制限」及び第20条「解雇予告」の規定の適用除外として「試の使用期間中の者」を挙げていますが、この場合は、当初の14日間に限られ、それ以降の試用期間は19条及び20条の規定がそのまま適用されますので、注意が必要です。

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