民法120年ぶりの大改正

 浅草社労士は、こう見えて大学では民法財産法を専攻したのでした。しかし、今日では、債務不履行や不法行為などといった特定分野について、必要に応じて勉強しなおすことはありますが、今回の大改正をしっかりとフォローしていたとは、お世辞にも言えない体たらくでした。民法は、労働法を始め、あらゆる法令に関係してくる基本法の一つです。社労士もしっかりとフォローしておくべき分野だと改めて思います。

 5月26日日本経済新聞電子版によれば、「企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が26日午前の参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直した。インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視した。改正は約200項目に及び、公布から3年以内に施行する。」とのことです。

 改正の柱の一つが、当事者間で特に利率を定めていない際に適用される「法定利率」の引き下げで、現在は年5%で固定されている法定利率が年3%に引き下げられます。法定利率は、交通事故の損害賠償額の算定などに使われているものです。

 インターネット通販など不特定多数の消費者と同じ内容の取引をする場合に事業者が示す「約款」の規定も新たに設けられ、消費者の利益を一方的に害する条項は無効になります。長文で細かい約款をほとんど読まずに契約したことによるトラブルで泣き寝入りする事例を減らす狙いがあるようです。この改正は、消費者保護の観点から必須だったのではないかと浅草社労士も納得できます。昔から、生命保険の約款などはなかなか読まれないという問題はありました。しかし、今日ではインターネットを使って何か商取引をしたり、オンラインバンキングを利用したりするという機会が激増しています。そういうときに必ず登場するのが、取引約款等の契約書に同意しますかという問いかけですが、あれを隅から隅まで読んでから同意をクリックしている人が一体何人いるのか、考えたこともありませんでした。そもそもマイクロソフト社が提供している基本OSの類も、使用に当たって何かに同意させられていたような氣がしないでもありません。

 連帯保証人制度でも、個人の保護が進められ、中小零細企業への融資などで、第三者が個人で保証人になる場合、公証人による自発的な意思の確認を必要とするようになります。このほか、賃貸住宅の退去時の敷金を原則として返還するルールが設けられるなどの改正が行われます。

20170403_桜花@品川_IMG_0137

残業時間公表を大企業に義務付け

 政府の働き方改革に呼応した厚生労働省の次の一手は、「大企業に残業時間の公表義務を課す」ということのようです。働き方改革実現会議の初回会合は、昨年9月27日に開催されておりますが、そこで提案された論点9項目の第3番目が、「時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正」でした。厚労省は、2020年にも従業員の残業時間の公表を大企業に義務付けることとしており、企業は月当たりの平均残業時間を年1回開示するよう求められ、従わなければ処分を受けるとのことです。

 新たな規制は労働法制では大企業とみなされる従業員数301人以上の約1万5千社が対象とされ、従業員300人以下の中小企業については罰則を伴わない「努力義務」にとどめる方向です。対象企業は厚労省が企業情報をまとめたデータベースや企業のホームページで年1回開示する。虚偽が疑われるような情報しか出さない企業にはまず行政指導を実施、悪質な場合には最大20万円のペナルティーを科す。正社員と非正規社員を分けるかどうかなど詳細な仕組みの議論を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で来年から始めることになっています。

 厚労省では、残業時間を公表することで、企業が業界他社を互いに意識し合ったり、時間外労働を減らす新たな動機づけになったりすると見ています。また、学生が就職活動で企業を選ぶ際の判断基準になるとも期待しています。なるほど、大企業でも、ブラック度が外部に透け透けになってしまうというわけです。

 ただ、企業にとっては労務管理の事務が増えることになり、残業時間を他社と並べて相対的に比べられることへの心理的な抵抗感もあるため、労政審では経営側から慎重論も出されることが予想されます。従業員の平均値を年1回示すだけなので細かな労働実態をつかみにくい面もあり、経営者の理解を得ながら実効性ある仕組みをつくれるかどうか問われることになりそうです。

 また、こんなクオータ制のようなことまでやるのかというのが、厚労省は制度導入へ女性活躍推進法の改正を視野に入れてやっているという点です。同法の改正が残業時間の公表とどういう関係があるのかは今一つ不明ですが、採用時の男女別の競争倍率や月平均残業時間の公表などを求めていくということのようです。残業時間などについては公表を義務に切り替え、法改正が必要な場合、2019年の通常国会に関連法案を提出する方針とのことです。

20170301_Skytree@押上_KIMG_0124

労働法令違反企業名の公表

 この先週11日の日本経済新聞電子版が伝えた記事、「労働法令違反企業名公表 厚労省」というのがありました。電通事件が大きなきっかけになったのか、また、政府が進める働き方改革の一環なのでしょうか、ここのところ厚労省が次々と手を打ってきている感じがいたします。

 記事によれば、厚生労働省は、違法な長時間労働や労災につながる瑕疵(かし)、賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いで書類送検した334件に関し、関与した企業名を同省のホームページで公開、各労働局の発表内容を一覧表にして一括掲載したのは初めての試みとのことです。一覧表にまとめられたのは各地の労働局が昨年10月以降、法令違反で書類送検した企業名で、最も多かったのは愛知労働局の28件で大阪労働局の20件、福岡労働局の19件が続いています。

 また、一覧表には社員に違法な残業をさせた疑いで書類送検された電通やパナソニック、労災事故を報告しなかった疑いで書類送検された日本郵便など大企業も含まれています。企業経営者にとって、このような一覧表に社名を掲載されたときの負の宣伝効果は、全く洒落になりません。

労働基準関係法令違反に係る公表事案一覧表

20170301_Skytree@押上_KIMG_0121

子供・子育て拠出金率が引き上げられました

 健康保険料と厚生年金保険料は事業主と被用者で折半のはずですが、実際には使用者の負担する社会保険料の金額の方が若干高くなっております。この原因は、すべての被用者の標準報酬月額に一定の料率を乗じて求める子供・子育て拠出金といわれるものを事業主が全額負担しているためです。同拠出金は、児童手当その他の子育て支援のための原資となっています。

 その子供・子育て拠出金が、平成29年4月から1000分の2.3に引き上げられています。社会保険料の支払いは、1箇月遅れになるため、5月納付分から社会保険料の納付額がその分増額となります。

 子供・子育て拠出金 料率推移
 
 平成24年4月~28年3月 0.15%
 
 平成28年4月         0.20% 
 
 平成29年4月         0.23%

20170301_Skytree@押上_KIMG_0120