10年年金の請求書発送始まる

 本年8月(10月支給分)から公的年金の受給資格期間が10年に短縮されるのに伴って、新たに年金受給資格が生じる対象者への老齢年金の請求書送付が始まりました。対象となるのは、10年以上25年未満の加入期間がある65歳以上の人など約64万人とされています。年金請求書は、今回一斉に64万人に送付されるわけではなく、8月までに徐々に受給権者のもとに届けられるとのことです。ただし、納付期間は10年未満でも学生や専業主婦が任意加入であった時代の合算対象期間などを加えて10年になるような方には請求書は送られてこないので、年金事務所に照会したり、社会保険労務士に相談することが推奨されます。

20170210_梅園@隅田公園

改正育児・介護休業法と通勤災害適用範囲

 平成29年1月1日から改正育児・介護休業法が施行されています。改正育児・介護休業法の要点については、平成28年7月28日の記事にまとめてありますが、その他の細かい改正点が労災保険における通勤災害の適用範囲に影響を与えています。細かい点ですが、それらをまとめると以下のようになります。


1.介護休業を取得できる対象家族の拡大

 介護休業取得の対象となる家族は、無条件の(1)配偶者、(2)父母、(3)子、及び同居かつ扶養が要件とされた(4)祖父母、(5)兄弟姉妹、(6)孫でした。平成29年改正で(4)から(6)の「同居かつ扶養」の要件が取り払われました。


2.対象家族の要件緩和による通勤災害への影響

 ところで、通勤災害について、通勤の途中で逸脱又は中断があると、通勤はそこで途切れたとみなされ、逸脱又は中断後に起きた事故等についての通勤災害適用は否認されます。ただし、(1)日常生活において必要な行為で厚生労働省令で定めるもの、(2)やむを得ない理由で最小限度で行う場合については、通勤経路復帰後の移動を通勤に含めるとされています。要介護状態にある一定の家族について継続的に又は反復的に行われる介護のために通勤経路を逸脱・中断することは「日常生活において必要な行為」とされていましたが、前述の対象家族の要件緩和により、別居あるいは扶養していない祖父母、兄弟姉妹、又は孫がいて、この介護に当たっているときにも、通勤災害が認定されるようになりました。

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平成28年の実質賃金は0.7%増加

 厚生労働省が6日発表した平成28年(2016年)の毎月勤労統計調査(速報値)によると、実質賃金が5年ぶりに増加に転じたとのことです。しかし、その内訳は、名目賃金が0.5%の増加した一方で、物価が下落したことによるものです。物価が緩やかに上昇し、それを上回る水準で賃金が上昇する理想形には至っておらず、デフレ傾向が依然として続いていることを示す数字となりました。トランプ氏の大統領選出から株価の上昇は続いていますが、先行き楽観できない情勢であることは否めないところです。ただし、生産年齢人口の急激な減少から、我が国の雇用環境の改善が続いていることは間違いないので、外国人労働者の流入促進のような馬鹿げた政策を阻止することができれば、名目賃金の上昇→実質賃金の上昇の傾向は継続するものと思われます。

=== 日本経済新聞電子版 平成29年2月6日 ===

 厚生労働省が6日発表した 2016年の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた16年通年の実質賃金は前年から0.7%増えた。5年ぶりのプラスとなる。名目賃金にあたる現金給与総額が0.5%増と3年連続で増え、原油安や円高で物価が下がった要因も寄与した。ただ12月は原油高などで実質賃金が前年同月より0.4%減っており、先行きは不透明だ。

 消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年に比べ0.2%下落し、実質賃金の伸びが名目賃金を上回った。デフレ局面に特徴的な「名実逆転」も11年以来、5年ぶりとなる。16年の現金給与総額は月平均で31万5372円だった。内訳をみると基本給や特別給与が前年を上回った。

 基本給を示す所定内給与は前年比0.2%増の24万267円だった。フルタイムで働く労働者の基本給は0.6%増で、前年を上回る増加幅だった。残業代にあたる所定外給与は0.6%減り、1万9468円だった。16年は夏のボーナスが増え、特別に支払われた給与が5万5637円と前年比2.0%増加した。

 少子高齢化で働ける年齢の人が減り、企業は人手不足に陥っている。求職者1人当たりにどれだけの求人があるかを示す有効求人倍率は16年に1.36倍と1を大きく上回っており、1990年前後の水準になっている。従業員をつなぎとめるため、企業は待遇の改善に動いており、一時金の大幅増で対応した。

=== 引用終わり (下線は浅草社労士) ===


残業時間上限月間60時間へ

 2月2日の日本経済新聞電子版によれば、政府は2月1日、首相官邸で「働き方改革実現会議」を開き、長時間労働是正に向けた議論を開始。対象を原則、全業種として残業上限を月平均60時間、年間計720時間までとする政府案に沿って意見集約を行ったとのことです。政府は年内に労働基準法改正案を国会に提出し、早ければ2019年度の施行を目指しています。

 記事では、競争力強化の観点から特例の設定が必要となる業種や職種があることにも言及しており、これは首肯できることですが、裁量労働制や今後導入が見込まれる「高度プロフェッショナル制度」との整合性の確保などについては、今後議論が積み重ねられることになりそうです。

=== 日本経済新聞電子版 平成29年2月2日 ===

 この日の会議は各委員からの意見表明が中心で、1カ月の残業上限を平均60時間、年間計720時間までとした政府原案は14日の次回会議で示す。企業の繁閑に柔軟に対応できるようにするため、単月なら100時間、その翌月と合わせた2カ月平均では80時間までなら残業を認める方針だ。

 経済界も規制の必要性は認めており、経団連の榊原定征会長は会議で「現状は実質的に無制限で残業ができる。36協定には何らかの上限規制が必要だ」と語った。

 政府が上限の参考にしているのは過労死の認定基準だ。現在は過労死の原因の多くを占める脳・心臓疾患が発症する前の1カ月間に100時間超、または2カ月から6カ月間に月80時間超の時間外労働があった場合に疾患との関係性が強まる。政府の上限規制案もおおむねこのラインを参考にしたものだが、連合の神津里季生会長は「100時間という基準はあり得ない。過労死基準との距離感を明確にすべきだ」と反発した。

 月平均を60時間と設定するのは、労働基準法で定められた割増賃金の割増率が上がる「60時間超」を意識したものだ。ただこの60時間には医学的な背景などが乏しく、野党などから論拠を追及されそうだ。

 今の労働時間規制では、業務の特性を勘案して建設業や運輸業が適用を除外されている。政府は一定の猶予期間を経て、これらの業種にも規制を適用したい考えだ。全国中小企業団体中央会の大村功作会長は同日の会議で「適用除外を本格的に見直すなら十分な時間的余裕が必要」と指摘。働き手不足などに悩む中小が規制強化に対応し切れないとの不安も出ている。全業種が大原則だが一部で例外は設ける。「企業競争力の発揮」といった観点から特例が必要となる業種を選定する方向で、研究開発職などが候補となりそうだ。

 働いた時間ではなく、仕事の成果で評価される脱時間給の対象者には規制を適用しない。脱時間給は今後導入が見込まれている仕組みで「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれる。同制度は年収や職種など一定の要件を満たす人を労働基準法による労働時間規制から外す仕組みだ。 一方、労使で一定の「みなし労働時間」を定める裁量労働制の適用企業は、このみなし時間に同じ月60時間の上限をかける方針だ。野党は労使協定で設けたみなしの時間でなく、実労働時間に規制をかけるべきだと主張している。裁量労働制の仕組みを根本から変えることにつながるため、政府はこの案に否定的だ。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

20170129_梅園@隅田公園

記事検索-2016年下半期

人事労務


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就業規則


 


安全・衛生(メンタルヘルス)


「社員をうつ病に」社労士事件の雑感_6月23日

 


労働保険


歓送迎会後の帰社中に事故と労災適用_7月11日
歓送迎会後の帰社中に事故と労災適用2_10月13日
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社会保険


年金受給資格期間を10年に_7月15日
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助成金


65歳超雇用継続に助成金新設へ_8月24日

 


経 営


製造業復活の手がかり_8月3日
TPPは批准せず生産年齢人口減は設備投資で補え_11月3日

 


その他


働き方改革実現会議_10月24日
技能実習制度は早急に抜本的見直しを_11月1日
新年のお慶びを申し上げます_1月1日

 


月刊社労士


7月号「平成27年度事業・決算報告及び平成28年度事業計画・収支予算」(2頁)、「トラブル防止と業務委託契約書」(45頁)、「DC法改正」(68頁)

8月号「平成28年倫理研修設例問題」(22頁)、「個別労働関係紛争 斡旋・労働審判・民事訴訟」(44頁)、「平成28年熊本地震における社労士のあり方」(58頁)、「高年齢者雇用安定助成金」(63頁)

9月号「非社労士との提携禁止規定 営業代行サーヴィスもだめ」(12頁)、「長時間労働の是正」(44頁)、「ADR斡旋業務最近の減少傾向について」(46頁)

10月号「企業のニーズは専門性と信頼できる人柄の社労士」(13頁)、「27年度斡旋申し立て事案統計」(28頁)、「個別労働紛争解決システムと解雇の金銭解決」(49頁)、「中小企業退職金共済制度」(64頁)

11月号「大学院における研究成果と社労士業務」(37頁)、「契約上の地位の譲渡と多角の視点」(50頁)、「労働裁判に補佐人として参加して」(53頁)、「社会保険審査会裁決事例 行政法上の処分とは」(54頁)

12月号「サイバー法人台帳ROBINSの現状と確認者登録のお願い」(24頁)、「熊本会 和田健会長」(36頁)、「第48回社会保険労務士試験結果」(46頁)、「契約上の地位の譲渡と多角の視点」(50頁)、「日本年金機構で個人番号の利用開始」(61頁)

東京会会報


7月号 「第38回通常総会報告 年金相談窓口会計収支」(43頁)、「電子申請 社労士コードとは等」(58頁)、「不適切な情報発信の禁止と発言する社労士」(72頁)

8月号 「不適切な情報発信の防止・東京会の対応」(2頁)、「相談事例・パワハラにより退職 会社都合?」(12頁)、「労働組合法の基礎知識・不当労働行為の類型」(16頁)、「個別的労働紛争解決制度の施行状況・いじめが解雇を抜く」(20頁)

9月号 社会保険適用拡大と実務上の留意点(14頁)、N運輸事件についての考察(同一労働・同一賃金)(20頁)、タクシー乗務員の年休取得に伴う賃金控除規定の有効性(32頁)

10月号「歓送迎会後の交通事故死最高裁判決と労災保険請求」(2頁)、「育児介護と労務管理の実務」(6頁)、「労働基準関係法令違反の現状」(8頁)、「転職先からの内定取り消し」(14頁)、

11月号「キャリアアップ助成金の手続き実務」(10頁)、☆「労働判例 役職定年制導入に伴う就業規則の変更と労働者の同意」(26頁)、「平成27年民間企業の勤務条件制度等調査結果」(30頁)

12月号「兼業の労働法上の問題点」(8頁)、「勤務態度不良の古参社員に関する相談」(32頁)、「日本的雇用・人事の変容に関する調査結果」(34頁)