働き方改革実現会議

 働き方改革の実現を目指す政府の「働き方改革実現会議」の初会合が9月27日に開催されております。同会議の議長には、安倍晋三総理、議長代理に加藤勝信働き方改革担当相、塩崎厚労相が就き、その他菅官房長官など5人の閣僚と有識者議員が15人で構成されています。

 この日の初会合では、有識者議員から以下に掲げる9つの議論されるべき議題が提案され、今後これらの議題が議論され、具体的な実行計画がまとめられてゆくようです。(9)の外国人労働者受け入れは国を滅ぼしかねない非常に深刻な問題をはらんでいます。これをやってしまうと、(2)などは到底実現不可能になるのです。なぜなら、外国人労働者を入れる本当の目的は、安い労働力の確保であり、日本人労働者より安く使える労働者が国内でも大量に確保できることになれば、生産性向上のための設備投資が抑制される要因として働くことになるからです。仏独などの西ヨーロッパ諸国で多文化共生の美名の下に行われた労働政策が正にこれで、その結果欧州諸国がどうなってしまったか、我が国は今こそ彼らの失敗からしっかりと学んでゆくべきなのです。また、外国人労働者は一旦入れてみて、状況によって事後に取り消せるような生易しい問題でもありません。この点も欧州の現状を見れば誰の目にも明らかなはずです。

(1)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
(2)賃金引上げと労働生産性の向上
(3)時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正
(4)雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
(5)テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
(6)働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
(7)高齢者の就業促進
(8)病氣の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
(9)外国人材のの受け入れの問題

(有識者)

生稲晃子 女優
岩村正彦 東京大学大学院法学政治学研究科教授
大村功作 全国中小企業団体中央会会長
岡崎瑞穂 株式会社オーザック専務取締役
金丸恭文 フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長 グループ CEO
神津里季生 日本労働組合総連合会会長
榊原定征 日本経済団体連合会会長
白河桃子 相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリスト
新屋和代 株式会社りそなホールディングス執行役人材サービス部長
高橋 進 日本総合研究所理事長
武田洋子 株式会社三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長 チーフエコノミスト
田中弘樹 株式会社イトーヨーカ堂 人事室 総括マネジャー
樋口美雄 慶應義塾大学商学部教授
水町勇一郎 東京大学社会科学研究所教授
三村明夫 日本商工会議所会頭

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2度目の電通事件

 東京大学文学部を卒業して電通に入社したほどに優秀な人材が、なぜ入社1年目にして自ら命を絶つところにまで追い込まれていったのでしょう。報道されているところによれば、「君の残業時間は会社にとって無駄」、「目が充血したまま出勤するな」、「女子力がない」などとパワーハラスメント、セクシャルハラスメントを受けていたとみられ、「誰もが朝の4時退勤とか徹夜とかしている中で新入社員が眠いとか疲れたとか言えない雰囲気」(本人のTwitterより)という状況の中で、深夜勤務が常態化、時間外労働時間は月100時間を超えていたということがいわれています。

 概して日本人には、良い意味で、「周りに迷惑をかけてはいけない、協調性がとても重要」という意識を強く持つ傾向があります。しかし、電通という会社は、そういう日本的な倫理観と利を追求する企業本来の目的が極度に先鋭化して怪物化し、聡明な若者でも理性的な判断ができないような精神状態に追い込んでゆく奇妙な組織としての体質及び文化があったものと思われても仕方がないのです。きれいごとを言っているのかもしれませんが、世間をあっと言わせるアイデアはもっと自由で個性を尊重する多少の遊び心を持った組織から生み出されるのであって、こんなにも人を追い込んで仕事をさせる組織はその対極に位置しているとしか思えません。

 昨年12月、自ら若い命を絶った高橋まつりさん、心からご冥福をお祈り申し上げます。

 電通新入社員自殺に見る、過労死事件頻発の理由とは

<東京労働局の対応>

 東京労働局は10月14日、労働基準法に基づき電通本社等を立ち入り調査しました。出退勤記録等を調査し、是正勧告や刑事告発も視野に実態解明を進める方針とのことです。さらに、子会社5社にも立ち入り調査も行われたとのことです。

 通常の調査は事業場のある所轄が対応しますが、今回は事件の大きさ等を考え、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)が動いています。

 11月7日 東京労働局などは、電通本社(東京・汐留)と3支社に労働基準法違反の疑いで一斉に強制捜査に入った。違法な長時間労働が全社的に常態化していた可能性が高く、労務管理の資料などを押収して立件を視野に解明する方針。
(朝日新聞電子版号外)

緊急時事業継続計画(BCP)について2

1.どういう事態が緊急時か

 それでは、緊急事態としてどのような事態が起こった場合を想定するか、おおよそ次のような事態が想定されます。

(1)大地震、大規模風水害
(2)火災
(3)重大な感染症の蔓延
(4)テロなどによる建物及びシステムの破壊
(5)誤操作によるシステム破壊
(6)サイバー攻撃によるシステム破壊又は改ざん


2.緊急事態は何を引き起こすのか

 様々な緊急事態が想定されますが、畢竟緊急時にはどういう事態が引き起こされると想定されるから業務が継続できなくなるのか、「結果事象アプローチ」という手法で洗い出してみることが効果的です。すると、大雑把ですが、次の3点くらいに集約されてきます。

(A)従業員が出社できないことによる人手不足の問題
1-(1)、(2)、(3)

(B)事業所、事務所が物理的に使えない問題
1-(1)、(2)、(4)

(C)情報システムが使用できない問題
1-(1)、(2)、(4)、(5)、(6)

 つまり、「人、物、情報」です。加えて、銀行システムが麻痺するような大規模災害の場合、資金繰りのことも十分に配慮して備えておかなければなりません。


3.では、どういう対策が有効か

(A)安否確認システムの確立と最低限の人材確保

 まず、(A)人手の確保の問題です。しかし、その前提として、大規模災害の場合などには、全従業員の安否確認ができなければ話になりません。数日間電力インフラが使えなくなったり、電話が使えなくなることを想定して如何に迅速に安否確認を行うか、平時から準備し、できれば訓練を実施しておくことが望まれます。その上で、必ず出社する幹部社員及び緊急時の業務継続にどうしても必要な社員をあらかじめ選抜して、これらの人員を緊急時にどのようにして出社させるか、また、就業中に緊急事態が勃発したときには、帰宅するのか、社内泊とするのかなど具体的に検討しておく必要があります。

 また、緊急時の決定権者は、通常社長でよいと思われますが、社長が不在の場合、誰がその任に当たるのか、少なくとも3番目くらいまでは決めておき、平時からBCPの最高責任者としての自覚を持っていただくことが望まれます。

(B)代替手段による運用、バックアップ事務所の準備及び移転

 大規模災害を想定すると、バックアップ事務所があるのが理想的です。しかし、費用と効果の関係で中小企業ではなかなか難しいかと思われます。通信インフラが回復していれば、自宅のパソコンや電話を使って最低限の仕事がこなせるように平時に話し合っておくことが必要かもしれません。事業所社屋の火災のような局所的な災害の場合、早急に代替事務所を見つけて移転することは、困難なことではないと思われます。

(C)バックアップシステムへの切り替え

 社内で利用している情報システムを洗い出して、バックアップできるのか、どういう状況になっているのかなど、再確認する必要があります。50人を超える会社の場合、社内で利用しているシステムを俯瞰でき、細かいところまで分かっている技術系の社員が最低1人は必要かと思われます。もちろん、この社員は緊急時に出社する人員となります。

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歓送迎会後の帰社中に事故と労災適用2

 会社が企画した歓送迎会出席、その後仕事のため再び事務所に戻る途中で交通事故に遭い死亡した者に労災が適用されるのか、という事案に最高裁がこれを認める判決を下したことは7月11日の記事で紹介しました。この事案に関連して、労基署はこのような場合、業務遂行性を一般的にどう解釈しているのか、それに対応して社労士はどのように案件を取り扱うべきなのか、東京都社労士会会報10月号の特集記事から要点を抜粋してみました。

 厚生労働省が公にしている解釈集によれば、次のような解釈によるべきだとされ、業務遂行性が認められるためには「特別な事情」が必要とされているようです。

 「宴会、懇親会、慰安旅行等、各種の催しが取引上又は労務管理上の必要から対外的、対内的に行われている場合、これに参加した労働者の災害については、まず業務遂行性の判断に困難な場合が少なくない。この種の催しの世話役等が自己の職務として参加する場合(営業課員、庶務課員などに多い)には、一般的に業務遂行性が認められるが、それ以外の労働者の場合には、その催しの主催者、目的、内容(経過)、参加方法、運営方法、費用負担等について総合的に判断しなければならないとしても、特別の事情がない限り、業務遂行性がないのがむしろ通例である。」

 今回の事案が、当初労基署で業務遂行性が否認され、審査、再審査、さらに地裁、東京高裁でもその決定が覆らず、そして最高裁判決にまで及んでしまったことについて、こういった解釈の分かれることが予想される事案の場合、初期の労災保険の請求段階で「項目ごとの主張と請求趣旨を明示した各種証拠及び資料をそろえ、請求趣旨の詳細かつ論理的な記述を心がけることが望ましいと考えられるようです。本事案で言えば、遺族補償年金支給請求書の「災害の原因及び状況」欄に催しの主催者、目的、内容(経過)、参加方法、運営方法、費用負担等懇親会開催の経緯について詳述することが求められます。従って、これらを詳述するための相当量の資料及び証拠の収集が必要だったといえます。

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「同一労働・同一賃金」に対応できる評価制度の研修に出てきました

 「同一労働・同一賃金」に対応できる賃金・評価制度という研修に出てまいりました。東京都社労士会中央統括支部の主催で、講師は現代マネジメント研究会を主宰されている菅野篤二さんという方でした。浅草社労士は、紋切り型の「同一労働・同一賃金」の考え方は誤りであり、日本の労働慣行には馴染まないと思っているので、基本的には反対の立場です。ですので、菅野講師がどのようなお考えを示されるのか、興味を抱いて聴講することにしたわけです。

 冒頭、賃金の基本的な考え方は2つある、一つは「人につける賃金」、もう一つは、「職務に就ける賃金」という考え方です。年功序列制度などに代表される従来我が国で行われてきた慣行が前者に当たります。一方、「同一労働・同一賃金」は後者の考え方です、という解説がありました。つまり、「同一労働・同一賃金」の考え方は、従来の我が国労働慣行には馴染まず、これを変えるとなると相当面倒なことになるとの認識です。成果給が徹底されている世界の代表のようなプロスポーツの世界でも、日米の野球などを見ていると、空氣の違いを感じることができます。大リーグはとてつもない契約金を支払いますが、実績はあってもその年成果を上げられない選手がいとも簡単に自由契約にされてしまうのに比べ、日本のプロ野球は過去の実績をより尊重する傾向にある(った?)印象を受けます。そして、ファンの私たちにも十年以上もチームに貢献してきた〇〇を少々衰えたからといって退団させるなどおかしい、といった感覚を持っていると思われます。書いていて氣がつきましたが「同一労働・同一賃金」の考え方は、成果主義とも親和性が高い感じがとてもします。

 とはいえ、定年後の再雇用で賃金格差は違法という東京地裁の判決が出たように、政府が唱える定年後「同一労働・同一賃金」の標語がそれなりに世の中の流れに影響を及ぼし始めていることもまた事実のようです。そこで、菅野講師が提唱されていたのが、職務の内容を具体的に見直し、職務内容のスキルマップというものを作成して、職務内容基準の人事考課を行う制度を導入していこうということでした。その際制度を社労士がお任せで作成してしまい、会社にやらせるのではなく、職務内容の見直しから会社にやってもらうことが成功の要諦とのことです。講義を聞いて、なかなかいいと思ったところは、次のような点です。

(1)具体的にどのような職務をこなしているのか整理する作業があるので、職務の無駄の見直し、他部署との重複の見直しなど、業務「改善」のきっかけになる。

(2)整理した職務をどこまでこなせればよいか、目標管理もより客観的かつ具体的にできるようになる。

(3)目標が決まってくると、社員の能力を向上させるための教育訓練やOJT研修でも何をすればよいのか分かりやすくなる。

(4)昇給、賞与、及び昇進の判定のベースとなる汎用性の高い評価制度となる可能性を持っている。

 浅草社労士も、職務内容を具体的に見直して、より客観性の高い人事評価基準を作成することには大賛成です。どんなに無能な上司が評価しても一応は機能するしっかりした人事評価制度を構築することの意味はとても大きいと思います。ただし、ここでも難しいのは、人事はやはり人の事であり、人間として優れた経営者が適当に行う人事の方が精緻に作った人事制度にのっとって無能な経営者が行った人事評価よりもおそらくは優れた結果になるだろうという点です。

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