65歳超雇用継続に助成金新設へ

 巷では人手不足の状態が業種によってかなり深刻化しているといわれています。団塊の世代の引退などによる生産年齢人口の急激な減少こそが、今後数年間に顕著になると思われる我が国の労働市場最大の問題点です。そこで、「外国人労働者を入れよう」ではなくて、日本人の働き手をもっと活用することと一人当たりの生産性を徹底的に高めることで、この問題を乗り切ってゆこうという動きが、多少出てきたことは大いに喜ばしいことといえます。65歳以上の方が会社などの被用者として働かれる場合、厚生年金に70歳までは加入することとなり、保険料を支払います。また、年金と合わせて報酬が月額で47万円を超えると、年金額が一部停止されることがあります。しかし、元氣な高齢者にはどんどん働いていただく環境整備の施策を行っていくべきです。

 ところで、上記の厚生年金と報酬額の合計が47万円を超えると、年金額を一部停止するいわゆる「高在老」の仕組みですが、平成27年10月の被用者年金一元化に伴う法改正によって、全ての70歳以上の被用者にも適用されるようになっています。それまでは、昭和12年4月1日以前生まれには、70歳以上となるといくら会社から報酬を得ていても「高在老」の適用はなかったのです。この辺りは、高齢者の元氣な方にもっと働いていただこうという施策とより持続性の高い年金制度の構築という課題の調整が難しいところではありますが、働ける方にはどんどん働いて稼いでいただき、得た所得をパーと遣っていただくような仕組みの方が好いのではないかとも思います。

=== 毎日新聞電子版 平成28年8月24日 ===

 厚生労働省は、65歳を超えるまで継続して雇用する企業に対する助成金新設の方針を固めた。2017年度予算の概算要求と今年度補正予算案に必要経費を盛り込み、年内の開始を目指す。また、終業と次の始業の間に一定時間をおく「勤務間インターバル(連続休息時間)」制度を導入した中小企業への助成金も設ける方針だ。いずれも政府が進める働き方改革の一環。

 新設するのは「65歳超雇用推進助成金」(仮称)で、定年の引き上げや廃止、非正規労働などでの継続雇用によって65歳を超えて意欲のある高齢者を引き続き雇用した企業に、コンサルタント料などの必要経費60万〜120万円を助成する。17年度概算要求と今年度補正予算案に計34億円を盛り込む。現在は25年度までに、希望者全員を65歳まで雇うことが高年齢者雇用安定法で義務付けられている。

 インターバル制度は、労働時間などの管理システムなどを導入した企業が対象で、50万円を上限に助成する。1000企業程度での導入を想定し、17年度概算要求に4億円を計上。生活保護受給者を雇用した企業への助成制度も創設する。

 17年度概算要求には、児童虐待対策の強化に向けた市町村の拠点整備なども盛り込んでいる。来年4月施行の改正児童福祉法は、都道府県などの児童相談所が専門的な対応に注力できるようにするため、緊急性の低い事案は市町村が対応するとしている。厚労省は17年度予算で、今年度当初比8108億円増の31兆1217億円を要求する。社会保障の自然増は6400億円を見込む。【阿部亮介、熊谷豪】

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

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労使協定と届出義務

 労働法関係で締結義務のある労使協定、時間外労働について定める「36協定」などは、監督署に届出の義務が生じます。しかし、締結しても届出の義務まではない労使協定も数多く存在します。

(1)労働者の委託による貯蓄金の管理 (届出義務) 
(2)1箇月単位の変形労働時間制
(就業規則に定めて実施の場合、届出義務なし)
(3)1年単位の変形労働時間制 (届出義務) 
(4)1週間単位の非定型的変形労働時間制 (届出義務) 
(5)時間外・休日労働(36協定) (届出義務)
(6)専門業務型裁量労働制における労働時間の算定 (届出義務)
 
(7)事業場外みなし労働時間制 (8時間を超える場合、届出義務)
(8)賃金全額払いの例外
(9)フレックスタイム制 
(10)一斉休憩の適用除外
(11)年次有給休暇の計画的付与
(12)年次有給休暇の賃金を標準報酬日額支払とする
(13)育児休業・介護休業の対象労働者の一部除外 

( (14)高年齢者の再雇用制度に伴う人選基準の設定 )

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労務管理関係書類の保存期間

1.労働基準法109条

 浅草社労士は、根っからの文系のようで、めっぽう数字に弱く、法定帳簿の保存期間など勉強してもすぐに忘れてしまう。ましてや、法律によって年数が微妙に異なっていたりするともはやお手上げです。改めて基礎的なところをまとめておきます。

 まずは、基準法109条です。ここでは、3年の保存期間が原則です。
「使用者は、労働者の名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」
「その他労働関係に関する重要な書類」とは、例えば出勤簿、タイムカードなどの記録、労働基準法の規定に基づく労使協定の協定書および各種許認可書などが該当するとされています。

 では、いつから3年なのかということですが、これでもすっきり明瞭という感じにはなれませんが、大雑把なところは次のとおりです。
(1)労働者名簿: 退職又は死亡の日から
(2)賃金台帳: 最後に記入した日から
(3)採用と退職に関する書類: 退職又は死亡の日から
(4)災害補償に関する書類: 補償が終わった日から
(5)その他労働関係に関する重要な書類: 処理が完結した日から


2.その他の労務関係書類

 その他の労務管理関係書類についてざっと見ておくと、概ね次のようになります。その他、例えばストレスチェックの実施結果は何年かなど、その都度調べていくしかないですね。

(1)労災保険に関する書類   3年 労働者災害補償保険法
(2)健康診断結果         5年 安全衛生法
(3)雇用保険に関する書類   2年(労働者に関する書類4年) 雇用保険法
(4)健康保険関係         2年 健康保険法
(5)厚生年金保険関係      2年 厚生年金保険法

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製造業復活の手がかり

 以前にも「中小企業の人を生かす経営」で紹介した嘉悦大学大学院教授の黒瀬直宏は、長年中小企業経営の事例研究を専門分野とされ、提言をしてこられた方です。7月22日の放送では、「中小企業の新しいものづくり」と題して、次のような事例を紹介されています。最先端を走っているコンセプト重視の中小企業のようでもありますが、大量生産と利益追求重視するあまり大企業が見失ってしまった物づくりの本質的な内容を含んでいるように思われます。ただ、こういう中小企業が育っていくためには、やはり一定以上の社会全体の豊かさが必要だな、と浅草社労士などは考えてしまいます。それは、金銭的な面でもあり、また、精神的な豊かさでもあります。多くの人が生活していくことだけで精一杯のような状況では、大量生産型の安くて一応不都合なく使える製品で市場が席巻される傾向が強まると考えられるからです。

 豊田自動車でコンセプトカーの企画・制作などに携わっていた根津孝太氏が、平成17年に独立して設立した「つなぐデザイン」という会社があります。この会社は、様々な製品のデザインを手掛ける一方で、工場を持たない自動車メーカー、つまり、コンセプトカーの企画を行っていると紹介されています。放送の中で紹介されていたのは、一台888万円もする未来型電動バイク「ZecOO」、子供でも運転できる車「カマッテ」、そして、小型で人にやさしい2人乗りの電氣自動車「リモノ(rimOnO)」などです。この手のコンセプトカー、記事を見ていて浅草社労士は楽しそうだなとは思うのですが、いま一つ実用性はどうなんだろうと考えてしまい、正直興味は高くはありません。やはり実物に触ってみて、乗ってみないと何とも言えないのです。

 しかし、「つなぐデザイン」には、中小企業らしく根津社長の個性が反映された会社の存在理由、理念といえるものが明確に意識されているようです。その第一は、「物づくりとは、思いを実現することである」と考える点です。従ってつなぐデザインでは、製品を世に送り出すにあたって、まずその思いを共に働く者全員で共有することを追求します。そして、製品を買っていただく使い手と製品を通じて思いも共有していくことを目指しています。つまり、物づくりを通じてある思いを具現し、その製品を世に送り出し、それを通じて思いを共有した共同体を生み出すこと、使い手により豊かになってもらうこと、利益はその結果に過ぎない、という思想です。

 第二は、近代大量生産方式の対極に位置する職人的技術を重視していることです。つなぐデザインは、工場を持たない会社ですので、物づくりをするにあたっては実際に製品を作る製造部門を担当する人々の協力が不可欠です。ここで、前述した思いに共鳴する職人的技術を集めて生かすことができる人脈や仕組を構築していることです。

 第三は、世に送り出す製品を使い手にこれは自分だけのものと実感して、愛着を持ってもらえることを重視しています。コンセプトカーのデザインを手がけてきた根津氏は、今日巷間でささやかれている若者の車離れの主な原因の一つに、車のブラックボックス化があると考えています。IT化が進み、あらゆる製品がコンピュータ技術とつながる流れを止めることは、おそらく不可能だと思われます。大量生産やブラックボックス化が今後ますます高度に進んでいく自体は止められないのですが、一方で、その対極にあるような職人的ものづくりの仕組みや作り手の思いを具現した製品等の存在価値も高まってゆくと想像することができます。行き過ぎた大量生産方式や利益偏重主義が行き詰まったときに、物づくりにおける一つの方向性を示してくれるような中小企業が育っているのは、素晴らしいことのように思えました。

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記事検索-2016年上半期

人事労務


労働契約における責任制限法理_1月14日
「同一労働・同一賃金」のキャッチコピー性_1月26日
退職金減額訴訟で最高裁差し戻し判決_2月24日
政府 長時間労働の歯止めに動き出す_3月24日
三菱自動車と諭旨退職__5月17日

 


安全・衛生(メンタルヘルス)


「社員をうつ病に」社労士事件の雑感_6月23日

 


労働保険


平成28年度雇用保険料率_4月5日
育児休業と育児休業給付の最終日_6月30日

 


社会保険


平成28年度年金給付額は据置_2月2日
厚生年金逃れ防止に法人用共通番号利用_2月28日
月末退職と退職改定など_5月23日

 


経 営


大企業の動向と技術_1月19日
トヨタ自動車カンパニー制へ移行_3月3日
人を生かす経営_4月20日

 


その他


新年のお慶びを申し上げます_1月1日
プチ鎖国の勧め_3月22日
台東区ボランティア・フェスティバル_4月14日
熊本大震災の義捐金_4月17日
台東区ボランティア・フェスティバルの報告_5月2日
台東区の民泊規制について_5月31日

 


月刊社労士


1月号「共通番号制度運用開始と社労士の対応」(12頁)、「医療コンサルタントの実務」(52頁)、「社会保険審査会裁決事例 労災請求が健保療養費の時効事由になるか」(54頁)、「平成28年度雇用保険料率1000分の11」(57頁)
2月号「木全社会保険労務士による不適切情報発信」に関する会長声明(6頁)、「社労士の事務所と支店について」(10頁)、「共通番号利用開始の前後の動向」(12頁)、「社会保険審査会裁決事例 退職社員からの暴行で受けた負傷が労災の対象になるか」(58頁)
3月号「医師による高ストレス者への対応実務」(19頁)、「待ったなし65歳以上雇用」(38頁)、「社会保険審査会裁決事例 年金特別便で判明した厚年期間初診日」(40頁)
4月号「第11回紛争解決手続代理業務試験出題趣旨」(19頁)、「人事改革と求められる人事の創造性」(42頁)、「労働保険審査会裁決事例 自殺の故意性否認の可否」(46頁)
5月号「戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書」の適正な取り扱い」(18頁)、「ストレスチェックと産業医との意思疎通」(25頁)、「社会保険審査会裁決事例 業務量に季節的変動のある事業所算定」(46頁)、「違法な時間外を行った事業所、同一労働同一賃金の目的」(51頁)
6月号「労働者を退職に追い込む代行業務等の報道に関する会長声明」(2頁)、「紛争解決手続代行業務」(18頁)、「労働保険審査会裁決事例 窓清掃作業中の転落負傷と労働者性」(48頁)

東京会会報


1月号「平成27年度上期事業実施・収支状況報告」(試験実施事業の赤字対策に言及)、「労働判例9 業務上のミス・ノルマ未達を理由とする労働者に対する損害賠償請求」(46頁)、「TPP協定(第19章)の概要」(50)
2月号「社会保険労務士職業倫理」、「電子申請のメリット・事前準備①」(30頁)、「労働組合法の基礎知識」(33頁)、「東京都自主研一覧」(37頁)、「個別的労働紛争処理制度の展開」(42頁)
3月号「木全社会保険労務士による不適切情報発信」に関する会長声明(2頁)、「障害者差別解消法と改正障害者雇用促進法」(6頁)、「電子申請のメリット・事前準備②」(21頁)、「労働組合法の基礎知識・当事者及び対象事項」(24頁)、「労働判例 タクシー業界の割増賃金の実態と違法性」(28頁)、「平成27年度 中小企業の賃金事情調査」(32頁)
4月号「障害年金 精神障害に係る等級判定ガイドライン」(10頁)、「電子申請 雇用保険資格取得届・喪失届」(27頁)、「労働組合法の基礎知識・労働協約」(34頁)、「神奈川SR経営労務センター事件」(42頁)、「平成27年賃金構造基本統計調査」(45頁)
5月号☆「家族手当と賃金設計の方法」(18頁)、「電子申請 算定基礎届・賞与支払届」(46頁)、「労働判例 妊娠を理由とする軽易業務転換を契機とする降格」(64頁)
6月号「社会保険労務士の不適切な情報発信の防止について」(2頁)、「無期転換ルールの実務対応要点」(22頁)、「電子申請 高年齢雇用継続給付支給申請」(39頁)

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