台東区の民泊規制について

 浅草社労士の根拠地である台東(たいとう)区は、上野、浅草という古くからの人の集積地をおひざ元にかかえる一大観光地です。東日本大震災の影響で一時減少した外国人観光客等の姿は、ここ数年元に戻ったどころか、倍増、倍増、また倍増というのが、住人の実感ではないでしょうか。そんな都内有数の観光区である台東区のことなので、最近はやりの「民泊」についても推進派と思いきや、実は規制派の急先鋒なのです。少々旧聞となりますが、本年3月29日、台東区議会は、「民泊」を巡り、営業時間内は従業員を常駐させることなどの条件を課す区の旅館業法施行条例改正案を議員提案し、全会一致で可決しています。

 昨今よく耳にするようになった「民泊」、言ってみればホテル・旅館業界版白タクのようなものです。規制を緩和すれば、まともに旅館業法等の規制を遵守して営業している従来のホテルや旅館の経営を圧迫しかねないおそれがある上、近隣住民や宿泊客との様々な問題を引き起こす危険性をはらんだビジネス・モデルということができると思います。東京23区の中には、「民泊」事業に限らず、人権をはき違えておかしな方向に突き進んで、それがあたかも革新的のように取り上げられている区も近年散見されます。それらに比べると、下町の代表格である台東区の示した見識に、住民としてはほっと一息というところです。

=== 平成28年3月29日 毎日新聞電子版 ===

 住宅の空き室などに旅行客を有料で泊める「民泊」を巡り、東京都台東区議会は29日、営業時間内は従業員を常駐させることなどの条件を課す区の旅館業法施行条例改正案を議員提案し、全会一致で可決した。国が4月から民泊営業を認める規制緩和を「時期尚早」とし、独自に条件を付ける。改正案の可決で、区内での民泊営業は極めて困難になる見通しだ。【柳澤一男】

 外国人観光客の増加で宿泊施設が不足していることを受け、国は4月から、都道府県などの許可を得た民泊を法律上の「簡易宿所」と位置づけ、営業を認める方針。旅館業法施行令の緩和で客室面積の制限を引き下げ、フロントの設置義務も一部免除する。これにより、現在は違法なマンションのワンルームを使った営業などにも道を開く。一方で、宿泊する外国人観光客と近隣住民とのトラブルも懸念されており、区によると既に、無許可の民泊でごみ出しの方法や騒音などでトラブルが相次いでいるという。

 浅草寺や上野公園など日本有数の観光地を擁する区には、年間約4500万人の観光客が訪れる。規制緩和で民泊も増える可能性が高かったが、区議会は、先行して民泊条例を施行している大田区などの課題を検討した上で緩和の可否を決めるべきだとし、従来の宿泊施設条件を維持するよう条例改正した。改正では、宿泊者の就寝中を含む営業時間内は従業員を常駐させることや、玄関帳場かそれに準じる設備の設置を宿泊施設に義務づける。これにより、区内ではワンルームや一軒家の貸し出しなどの民泊営業はできなくなる。提案理由について、和泉浩司区議(自民)は「民泊そのものに反対ではない。だれもが安心して訪れることができる区にするためだ」と説明した。

=== 転載終わり 下線は浅草社労士 ===

 台東区議会や他の地域の「民泊」を規制する動きは、この記事も参考になります。人口の集積した我が国で、「民泊」の規制緩和など進めれば、問題が続出するのは目に見えています。「民泊」問題に関しては、国よりも台東区をはじめとした一部の自治体の方が、はるかに見識が高いと浅草社労士は感じています。

20160401_Skytree@墨堤_006

月末退職と退職改定など

 老齢年金の手続きに関する技術的な問題をかなりマニアックなところまで掘り下げて論じてみたいと思います。


1.月末退職と退職改定

 そもそも老齢年金の額は、60歳、65歳など、特定の決められた時期にのみ改定されます。老齢年金の基本的な思想は、いうまでもなく、年齢をとって働く能力がなくなっていくことを保険事故とみなす年金ということですが、近年は60歳台前半は働くのが当たり前、65歳を過ぎても働き続ける人も珍しくなくなっています。そこで、老齢年金の受給者でありながら、同時に厚生年金の被保険者で、毎月保険料を納付している人の場合、年金額が改定されるのはいつかということが問題になってきます。このリセット的改定の時期は、65歳、70歳の特定年齢到達時を除くと、退職のときとなります。このリセット的改定のことを「退職時改定」と呼びます。

 退職時改定とは、「被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、(再び)被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過したときは、資格を喪失した日から起算して1月を経過した日の属する月から、年金額を改定する。」(厚生年金保険法43条の3項)というものでした。具体的には、5月23日に退職するとき、喪失日は翌24日になりますので、1箇月経過は6月24日、すなわち6月から年金額が改定されます。ここで問題になっていたのが、月末退職の場合でした。5月31日退職ですと、翌日は6月1日です。6月1日から1箇月経過する日は7月1日となりますので、月末退職の場合の退職改定は、翌々月からとなっていたのです。しかし、平成27年10月1日からの被用者年金の一元化の影響で、「退職日から1箇月を経過した日」と読みかえて運用されることとなり、月末退職であっても1箇月を経過した日は、上記の例ですと、6月30日となり、月末退職ときも翌月から年金額が改定されることとなりました。


2.継続雇用に関する同日得喪

 ここで、退職改定に関連してはおりますが、別の問題で「継続雇用に関する同日得喪」ということが論じられなければなりません。これは、60歳以降、定年等で一旦会社を退職しますが、間を置かずに継続雇用制度などで資格を再取得した場合、通常は正社員から嘱託社員などに地位が変更になることで給与が相当程度引き下げられるのが一般です。そして、このような場合に限って、標準報酬月額の引き下げが、3箇月の平均給与の水準を見てから届け出る月変届に依らず、給与水準が引き下げられた月から標準報酬月額を変更することが、資格喪失届と取得届を同時に届け出ることによって、許容されています。この仕組を「継続雇用に関する同日得喪」といっていますが、かつての「定年退職の場合にかぎられる」、「60歳から64歳までの特老厚の受給権者」といった要件が現在は不要とされており、60歳以上の同日得喪の場合には、この仕組みが広く適用されるようになっています。


3.2のときの在老の問題

 それでは、ここで問題です。

 これまで特老厚は給与水準が高かったため、全額支給停止されていた人が、平成28年5月末日、62歳到達で退職、翌月1日より嘱託で採用されることになった場合、もちろん年金が全額支給される水準まで給与は引き下げられたとします。この場合、年金額の改定は、何時からになるかということです。まず、この場合も、被保険者の資格を喪失して1箇月経過という事実は存在しませんので、6月の「退職改定」は起こり得ません。ですが、「継続雇用に関する同日得喪」ということは考えられますので、標準報酬月額は、6月から引き下げられます。ところが、年金額停止又は一部停止の調整は7月、つまり、取得から1箇月経過した日の属する月からとなります。ここのところの考え方は、「継続雇用に関する同日得喪」というのが、あくまでも継続雇用などで給与が引き下げられる人の保険料を引き下げてあげるための単なる便法であり、その効果は標準報酬月額にしか及ばないということでしょうか。ですから、年金額の改定は、原則に戻り資格取得から1箇月を経過した月からというようになるようです。

 それでは、65歳時改定と絡むときはどうでしょうか。

 上記の事例とほとんど同じですが、これまで特老厚は給与水準が高かったため、全額支給停止されていた人が、平成28年5月末日、65歳到達で退職(5月中に誕生日を迎える人でも、切りのよい末日退職という会社は多いと思います。)、翌月1日より嘱託で採用されることになった場合です。この場合も、考え方は上記と同じです。まず、「継続雇用に関する同日得喪」により、標準報酬月額は、6月から引き下げです。そして、年金額も65歳時改定で6月から改定されています。しかし、ここで65歳改定された新年金の6月分調整を行う標準報酬月額は、従来の高い標準報酬月額を使って停止額を決定します。もちろんその方式は、従来の低在老ではなく、高在老が用いられます。嘱託となってからの新しい標準報酬月額が用いられるのは、なぜか7月からということになります。


4.では、月変の場合は

 ここで、さらに問題を複雑化しているのは、継続雇用のような一旦資格喪失してから取得する場合ではなくて、ずっと正社員のまま高齢になっても働き続けている場合で、原則通り月額変更届によって標準報酬月額が変更されたときです。このときは、同月改定ということで、月変届によって標準報酬月額が改定された月と同じ月から停止額と年金額の改定が行われます。すなわち、月変届によって標準報酬月額の改定は、単なる便法などではなく、本当の改定であるため、保険料額ばかりでなく、年金額等全ての周辺事情に効果を及ぼす改定と考えると分かり易いかと思われます。

20160401_Skytree@墨堤_005

三菱自動車と諭旨退職

1.三菱自動車の燃費データ不正問題の経緯
 
 4月20日 日産自動車向けも含め、軽自動車4車種で、実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていたと発表。

 不正が行われていたのは、いずれも平成25年6月以降に生産した三菱自動車の「eKワゴン」と「eKスペース」、日産自動車向けの「デイズ」と「デイズルークス」。これらの車種のうち、三菱自動車が販売したのは15万7000台、日産向けに生産したのは46万8000台で、合わせて62万5000台に上る。こうした不正は、日産側から指摘を受けて判明。三菱自動車は、対象となる車の生産と販売を停止。

 5月11日 国土交通省に追加で求められていた調査の結果について報告し、記者会見を行い、不正を行った4つの車種の燃費を調べる走行試験を改めて行ったところ、公表している数値に比べて5%から最大で15%程度、燃費が悪くなった車種があったことを明らかにした。

 5月12日 三菱自動車は、日産から2373億円の出資を受けて事実上、傘下に入るとともに、会長なども受け入れる資本業務提携を結ぶことになったと発表。


2.新型RVR開発部長2人「諭旨退職」三菱自動車に何が?

 しかし、今回の燃費データ不正発覚から遡ること5箇月ほど前に、軽自動車とともに同社の主力車であったRVR開発部門において、開発部長2人が新型車の開発が間に合わなかったことを理由に同社を諭旨退職させられるという事件があったことを平成27年11月27日の毎日新聞電子版などが伝えています。諭旨退職とは、自主的に退職願いを出して辞職するか、さもなくば解雇されるという厳しい懲戒処分の一つです。主力商品の開発の遅れは、競争が激化する自動車業界において、会社の命運を決しかねない致命的な出来事ではありますが、開発部門の幹部社員2人が事実上解雇されるというのは、はなはだ厳しい処分であったと思います。

 相川哲郎社長の役員報酬の一部自主返納や執行役員ら2人を降格する処分も同時に発表されてはおりますが、同社の広報は「国への虚偽報告などの不祥事ではない」と、法に触れるようなことが行われたとの見方を全面的に否定した上で、「同社の数少ないラインアップ車種での開発の遅れに対するけじめをつけた」と説明していました。しかし、この記事を今読み返してみると、前兆のようなものだったという感じを強く持ってしまいます。

201602_日本丸@横浜_SBSH0081

台東区ボランティア・フェスティバルの報告

 4月29日の「昭和の日」、千束公園で台東区社会福祉協議会が開催したボランティア・フェスティバルに行ってきました。午前中9時30分ごろから、台東社労士ボランティア研究会の相談コーナーの設営と相談員の任に当たるためです。当日は風が強く、生憎の天気でしたが、前日の雨が止み、何とか開催にこぎつけたことだけでも幸いでした。

 肝心の労務・年金相談の方は、強風の影響もあって、午前中は相談者も現れずじまいでした。フェスティバル自体は、強風に負けず、様々な出店や音楽演奏が行われ、昼頃には結構な人出が見られてにぎわっておりました。消防署から派遣された地震車も来ていたので、震度7の模擬地震を体験することが出来ました。確かにこのくらいの揺れだと置いてある物が飛んでくるという現象が起こり得ることを実感しました。

 社会福祉協議会という組織は日頃あまり目にすることはありませんが、今回の熊本地震では、現地ボランティアの受け入れや義援金の振り分けに関連して時折ニュースでも耳にするようになり、その存在が再認識された感じを持っています。今後もできる範囲で協力していこうと思っています。

20160429_Voluntary@千束公園