厚生年金逃れ防止に法人用共通番号利用

 昨年の2月23日厚生年金逃れの実態という記事を投稿して、この問題についての管見を述べました。今年も同じ時期にまたもやという感じですが、日本経済新聞により踏み込んだ内容の記事が出ておりました。今度は昨今話題の共通番号を利用するという点がミソで、法人用の共通番号を利用して、迅速かつ簡単に、従業員の所得税を給与天引きで国に納めているのに社会保険料を納付していない法人事業所を把握して社会保険への加入を促そうというものです。

=== 日本経済新聞電子版 平成28年2月24日 ===

 従業員のための厚生年金や健康保険への加入手続きを企業が怠らないように厚生労働省が抜本的な対策を始める。4月から企業版マイナンバー(法人番号)を活用し、2017年度末までに全ての未加入企業を特定する。未加入の疑いのある企業は79万社にのぼる。悪質な企業には立ち入り検査を実施して強制加入させる方針だ。

 厚生年金や従業員向けの健康保険は、法人や従業員5人以上の個人事業主に加入する義務がある。保険料は労使で折半して負担している。ところが、保険料の負担を逃れるため、意図的に加入せずに義務を果たしていない悪質な企業があり、問題になっている。厚労省の推計では、本来は公的年金制度で2階建ての部分に当たる厚生年金に加入できるはずなのに、1階部分の国民年金(基礎年金)にしか加入していない会社員が約200万人にのぼる。国民年金は厚生年金よりも年金額が少ない。医療保険も国民健康保険のままだと全額自己負担なので保険料が高くなるケースが多い。

 企業向けマイナンバーを使った加入逃れの防止対策は保険料を徴収する日本年金機構が4月から始める。従業員に代わって所得税を納める義務が課されている企業の法人番号を国税庁からもらう。保険料を支払う企業の法人番号と照らし合わせ、未加入の企業をあぶり出す。法人番号を使えば、同じ名前の企業など紛らわしいケースで、職員が個別に審査する作業を大幅に省くことができる。未加入企業の特定が今より格段に早くなる。

 年金機構は未加入企業を特定したら、まず文書や電話で加入を要請する。それでも加入しない場合は企業を訪問するなどして加入を求める。何度要請しても拒否する企業は立ち入り検査に入り、強制的に加入手続きする。厚労省と年金機構は2014年11月、国税庁から源泉徴収義務を課されている企業の社名と住所をもらい、加入漏れ企業の特定を進めてきた。79万社で加入漏れの疑いのあることは分かったものの、個社の特定作業を進めるなかで、社名の表記違いや転居している場合など紛らわしいケースも多く、手間と時間がかかっていた。2015年4月から9月までの半年間で調査が済んだのは18万事業所にとどまる。今の調査では17年度末までに終わらない可能性が高まっていた。

=== 転載終わり ===

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退職金減額訴訟で最高裁差し戻し判決

 いわゆる「就業規則の不利益変更」の論点に関して、19日に重要な最高裁判決が出ました。退職金を大幅に下げる際の労使の交渉が妥当かどうかが争われた裁判で、最高裁第二小法廷は、労使が合意したと見なすには書面上の同意では不十分で、使用者側が具体的な内容を説明する必要があるという初判断を示しました。

 山梨県の旧峡南信用組合の職員は、2度にわたる合併の際、労使の交渉で退職金の計算方法の変更点などについて説明を受けたあと、同意する文書に署名しました。しかし、その後、合併で退職金の規定が変更され、著しく減額されたとして合併先の山梨県民信用組合(甲府市)に以前と同じ退職金の支払いを請求する訴えを起こしていました。元職員らは規定変更の同意書に署名押印しており、同意があったと言えるかどうかが大きな争点の一つです。

 最高裁判所第二小法廷の千葉勝美裁判長は、「労働者は同意の基礎となる情報を収集する能力に限界がある。署名押印があったとしても、労働者への事前の情報提供の内容などに照らして判断すべきだ」と指摘。「自己都合退職の場合には支給額が0円となる可能性が高くなることなど、具体的な不利益の程度を説明する必要があった」などとして、原告側が敗訴した2審の判決を取り消して審理をやり直すよう命じました。要するに、労使が合意したと見なすには書面上の同意では不十分で、使用者側が具体的な内容を説明する必要があるという初判断を示したもので、今後、同じようなケースに影響を与えることが予想されます。

 類似の論点に関する判決としてしばしば参照されるのが、以下に掲げられた判例です。

(1)秋北バス事件(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決)
 就業規則の変更により、定年制度を改正して主任以上の職の者の定年を55歳に定めたため、新たに定年制度の対象となった労働者が解雇された事例で、新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきとし、不利益を受ける労働者に対しても変更後の就業規則の適用を認めた。

(2)大曲市農業協同組合事件(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決)
 農協の合併に伴い、新たに作成・適用された就業規則上の退職給与規定が、ある農協の従前の退職給与規定より不利益なものであった事例で、秋北バス事件の最高裁判決の考え方を踏襲した上で、就業規則の合理性について、就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面から見て、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものであることをいうとし、新規則の合理性を認めて、不利益を受ける労働者に対しても拘束力を生じるものとした。

(3)第四銀行事件(最高裁平成9年2月28日第二小法廷判決)
 就業規則により定年を延長する代わりに給与が減額される事例で、秋北バス事件、大曲市農協事件の最高裁判決の考え方を踏襲し、さらに合理性の有無の判断に当たっての考慮要素を具体的に列挙し、その考慮要素に照らした上で、就業規則の変更は合理的であると判断した。

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平成28年度の年金給付額は据え置き

 平成28(2016)年度の年金額が前年度と同じ水準に据え置かれることになりました。厚生労働省は、先月29日、総務省が平成27年全国消費者物価指数を発表したのを受け、公的年金額を現在の水準で据え置くことを発表しました。平成27(2015)年度に初めて実施した年金額抑制のための「マクロ経済スライド」は、支給据え置きとなったことから適用しないことになった模様です。

 年金額は物価や賃金に連動して毎年度改定されることになっています。総務省が29日に発表した平成27年の素の全国消費者物価指数は前年比0.8%上昇しましたが、厚労省が年金給付額を決定する際に指標として併用する賃金変動率は0.2%低下したため、年金給付額は据え置きという結論に至ったとのことです。

 ちなみに、現行水準とは、夫が平均的収入(賞与含む月額換算42.8万円)で40年間働き、妻が専業主婦のモデル世帯の厚生年金額は、22万1507円となっております。また、自営業者や非正規社員らの国民年金の場合は、満額が78万100円(月額6万5008円)です。また、被保険者が支払う保険料については、平成29年度まで段階的に引き上げられる措置により、国民年金保険料は、一月当たり16260円(現行15590円)、厚生年金保険料については、4月以降も現行の17.828%で9月から(10月納付分から)18.182%に引き上げられることが予定されています。

( 参 考 )【年金額改定ルールの要旨】

 法律で本来想定されている年金額(以下「本来水準の年金額」という。)改定ルールは、ざっくりまとめると「現役世代の賃金水準に連動する仕組み」ということになっています。年金受給を開始する際の年金額(新規裁定年金)は名目手取り賃金変動率によって改定し、受給中の年金額(既裁定年金)は購買力を維持する観点から物価変動率により、改定することとされています。ただし、給付と負担の長期的な均衡を保つなどの観点から、賃金水準の変動よりも物価水準の変動の方が大きい場合、既裁定年金も名目手取賃金変動率で改定されると規定されているからです。

 名目手取賃金 = 物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率

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記事検索-2015年下半期

人事労務



過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)動く__7月2日
労働基準法改正案今国会での成立見送り_8月26日
労働者派遣法改正案 参院で可決_9月9日
給与計算手習い始め_10月7日
改正労働者派遣法の盲点_11月5日
ワタミ過労自殺訴訟が和解_12月9日

 


労働保険


共通番号と労災_10月20日

 


社会保険


年金漏洩犯人絶対に逮捕を!_7月9日
障害年金 地域差是正へ新指針設ける方針_7月24日
年金特別会計2014年度は大幅黒字_8月10日
健康保険の標準報酬月額上限変更_10月27日
GPIF 7~9月期運用結果_12月1日
障害年金新判定指針の影響_12月15日

 


経 営


東芝不正会計事件_7月21日
経営理念は明文化すべきか_8月18日
新しい名刺_9月17日
海外進出に関する異なる2つの見解_10月16日
15年後の就業者数推計値_11月28日
東芝不正会計事件と役員の賠償保険_12月8日

 


その他


ガンプラと技術立国_11月30日
Panzer vor(戦車前進)!_12月28日

 


月刊社労士


7月号「共通番号制度ハンドブックのご紹介」(48頁)、「過労死防止対策推進法」(78頁)、「社会保険審査会 第3号被保険者の被扶養配偶者認定基準」(82頁)
8月号「共通番号制度ハンドブックのご紹介・事務所の安全管理措置」(6頁)、「労働保険審査会 基礎疾患を有していた請求人の感電による発症」(48頁)、「有期労働契約の無期転換ルールの特例等」(56頁)
9月号「共通番号制度ハンドブックのご紹介・事務所の安全管理措置②」(4頁)、「松下村塾の人材育成法」(29頁)、「労働契約申込みみなし制度施行」(40頁)、「労働保険審査会 保険料免除における世帯主」(42頁)
10月号「共通番号制度ハンドブックのご紹介・事務所の安全管理措置③」、「社労士業務の種類」(16頁)、「労働保険審査会 業務上疾病に起因した精神障害者の交通事故死」(40頁)
11月号「共通番号制度1.0」の内容と今後の課題整理(21頁)、「改革は現状活用で 徳川吉宗」(54頁)、「同一労働同一賃金推進法」(56頁)
12月号「共通番号制度新SRP認証」(14頁)、「庭番集 徳川吉宗」(48頁)、「大人の発達障害」の雇用支援(52頁)、「所定時間外に負傷した特別加入者の労働者資格」(58頁)

 


東京会 会報


7月号「平成27年度 事業計画」(33頁)、「ストレスチェックの実務」(52頁)、「審査請求・再審査請求の実務」(58頁)、「36協定締結の実務・過半数の代表者の選出方法」(66頁)、「労働判例 仮眠・休憩時間は労働時間か? ヒソー工業事件」(72頁)
8月号「高齢者雇用安定法への企業の対応」(20頁)、「36協定締結の実務」(42頁)
9月号「共通番号制度対応チェックリスト」(5頁)、「ハラスメント対応の実際」(22頁)、「賃金減額と労働者の同意の意味」(34頁)
10月号「衛生委員会の運営方法」、「従業員への個人番号の報告に関する依頼書」(15頁)、「委員会等名簿」(22頁)、「民事訴訟の基礎知識 地位“不”存在確認請求訴訟に確認の利益があるか」(26頁)、「精神障害に係る等級判定GL(案)」(33頁)
11月号「社労士のための共通番号制度実務研修」、「過半数を超える従業員代表制の論点」(14頁)、「民事訴訟の基礎知識 労働争議への関わり方①」(20頁)、「労働判例 東芝事件(鬱病・解雇と安全配慮義務)」(34頁)
12月号「個別労働紛争処理制度の展開と今後の展望」(2頁)、「民事訴訟の基礎知識 労働争議への関わり方②(合意退職の解決金)」(22頁)、「サイバー法人台帳ROBINS」(24頁)