「マクロ経済スライド」発動

 総務省は、本日30日物やサーヴィスの値動きを示す先月の全国消費者物価指数を発表しました。平成26年12月の消費者物価指数は、天候による変動の大きい生鮮食品を除いて、平成22年を100とした指数で103.2となり、前の年の同じ月を2.5%上回って、19箇月連続の上昇となりました。ただ、原油価格の下落によりガソリンや灯油が値下がりしている影響で、上昇幅は去年11月と比べて0.2ポイント縮小し、去年6月以降は縮小傾向となっています。

 日銀の試算では、消費税率の引上げで、全国の消費者物価指数は2%程度、押し上げられるとされていますが、今回これを当てはめるた場合、増税分を除いた上昇率は0.5%程度と見られ、1%を下回る状況が続いています。また、去年1年間の全国の消費者物価指数は、消費税率の引上げの影響で2.6%となり、2年連続の上昇となりました。

 昨年の消費者物価指数が公表されたのを受けて、厚生労働省は、平成27年度の公的年金の受取額を発表しました。 これによれば、夫が平均的収入(賞与含む月額換算42.8万円)で40年間働き、妻が専業主婦のモデル世帯の厚生年金額は、22万1507円と昨年度より2441円増えます。また、自営業者や非正規社員らの国民年金の場合は、満額が78万100円(月額6万5008円)で一月当たり608円増えることになります。年金額の改定は4月分からとなりますが、4月及び5月分の年金が実際に銀行口座などに振り込まれ、受け取ることができるのは6月中旬になります。

 今回の年金額改定で最も注目されるべき点は、「マクロ経済スライド」が初めて発動されたことです。マクロ経済スライドとは、従来からあった年金額改定の仕組みが賃金及び物価増減率のみを考慮して決定されていたのに対し、これらに加えて、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、平成35年度末まで年金額の上昇を抑制する仕組みです。要は、物価及び賃金の上昇という要素に、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びというマイナスの要素を入れて、全体の年金額を値切る仕組みのことです。

 昨年の物価上昇率が総合指数ベースで2.4%、賃金上昇率は2.3%となったため、平成27年度の年金額は、2.3%程度の増額率となるはずでした。しかし、今回はマクロ経済スライドが発動される上に、年金額特例水準の引下げ(いわゆる現行の年金の「もらいすぎ」状態の解消)で、0.5%減額されることになっていたため、年金額は0.9%という賃金の上昇率をはるかに下回る増額率になってしまっています。

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新労働時間制の素案提示—厚労省

 昨年の5月ごろ盛んに報じられていたいわゆる「残業代ゼロ制度」について、先週新たな進展があった模様です。時事通信が伝えるところによれば、以下の通りです。昨年報じられていた通り、厚労省案では、成果に基づく賃金制度の対象とされる職種は、金融商品のディーラーや研究開発職などの専門的能力を持つ労働者に限定されるようです。ただ、政府は、例外的な制度とはいえ、規定路線として「残業代ゼロ制度」の導入を進めていく模様です。しかし、純粋に成果に基づく賃金制度となるこのしくみの導入に当たっては、ごく一部の例外にとどめられるべきであり、今後一般化していくことについては、成果給制度導入での失敗に見られたような点、すなわち我が国の労働慣行や労働者の意識の中にあった本質的な強みをさらに薄めてしまうおそれがあることを、十分認識しておくべきなのでしょう(いわゆる「残業代ゼロ制度」、もう一つの視点_平成26年5月30日)。


=== 時事通信 1月16日より ===

 厚生労働省は16日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会を開き、働いた時間ではなく成果に応じ賃金を支払う新しい労働時間制度「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、年収1075万円以上の専門職を対象に導入する制度改革素案を示した。審議会で議論を詰めた上で、次期通常国会に労働基準法改正案を提出する。

 新制度導入は安倍政権が進める労働改革の柱。柔軟な働き方ができるようになる一方、「週40時間まで」などの労働時間規制の適用が除外され、残業代も支払われなくなる。労働組合や野党などは「残業代ゼロ」制度と強く反発している。

 年収要件は、労働基準法に基づく厚労省告示で、年収1075万円以上の専門職を対象としている類似の制度と整合性を取った。対象職種は、金融商品のディーラーや研究開発職などの専門的能力を持つ労働者を想定している。年収要件とともに法案成立後に省令で定める。

 導入に際しては「終業から次の始業までに一定時間の間隔を設定」「労働時間の上限を設定」「年104日以上の休日付与」-のいずれかの長時間労働対策を経営側に求める。労働が長時間に及んだ場合は、医師による面接指導も義務付ける。

=== 引用終わり ===

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有期雇用労働者特別措置法(無期転換申込権の例外措置)

 昨年秋の第187回国会(臨時会)で、有期雇用労働者特別措置法(正式には「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」)が可決、成立しています。重要な法律でありながら、意外と周知されていない印象を受けています。

 この法律は、国家戦略特別区域法の規定等を踏まえ、有期の業務に就く高度専門的知識を有する有期雇用労働者等について、労働契約法に基づく無期転換申込権発生までの期間に関する特例を設けるものです。法律の施行期日は、平成27年4月1日とされています。労働契約法18条の無期転換申込権に関する規定とは、平成25年4月から施行された同法の改正法で、「有期労働契約が反復更新され、期間が通算5年を超えた場合、労働者の申込により無期労働契約に転換する」というものです。


1.特例の対象となる特定有期雇用労働者

(1)5年を超える一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する有期契約労働者。(対象者の範囲や年収などの具体的な要件については、労働政策審議会において改めて検討されることとなりますが、弁護士、公認会計士、デザイナー、博士号取得者等、また、年収制限は約1000万円といったところに落ち着くのでしょうか?)
(2)定年(60歳以上)後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律における「特殊関係事業主」)に引き続いて雇用される高齢者。


2.特例の適用を受けるには

 今後、厚生労働大臣が、特定有期雇用労働者の特性に応じた適切な雇用管理の実施に関する基本的な指針を定めることとされており、この基本指針にそった対応を取ることができると厚労相が認定した事業主は、この特例措置を活用することができることになります。換言すると、この特例を活用したい事業主は、特定有期雇用労働者の特性に応じた適切な雇用管理に関する措置についての「計画」を作成し、厚労相に提出して認定を受けることが必要になります。

 また、ここでいう「計画」に関しては、(1)の労働者(高度専門特例有期雇用労働者)に関しては、次の事項を盛り込むことになっています。
・特定有期業務の内容並びに開始及び完了の日
・能力の維持向上を自主的に図るための機会の付与に関する措置

 (2)の労働者(高齢者特例有期雇用労働者)に関しては、その配置、職務及び職場環境に関する配慮等の雇用管理の措置の内容を盛り込むことになっています。

 
3.特例の効果

 特例有期雇用労働者については、労働契約法に基づく無期転換申込権発生までの期間(5年)を超えても無期転換申込権が発生しないことになります。

(1)高度専門特例有期雇用労働者
 一定期間以内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限10年)

(2)高齢者特例有期雇用労働者
 定年後に引き続き雇用されている期間201411_伝法院お茶会_IMG_0314

 

新年のお慶びを申し上げます

 一昨年の東京五輪開催決定まで、久々に実施されたまっとうな経済政策が功を奏し、明るさを取り戻しかけていた日本経済ですが、昨年は、結局、デフレ脱却の期待が遠退いてゆく危うげな一年になってしまいました。元凶は、もちろん消費税増税であり、結果論ですが、未だ本格的な成長軌道に立ち戻っていない日本経済に、3%もの増税をはね返して成長する余力はなかったということなのでしょう。

 「将来世代につけをまわすのは止めにしよう」という常套句は、まじめな国民性に強く訴えるところがあります。ですが、やみくもに税率を上げても、国民経済そのものが病を得て経済成長を止めることになれば、かえって税収が落ち込んでしまうこと、前回の消費税引上げという社会実験で実証済みでありました。

 また、いわゆる「国の借金」というのは、正しくは「政府部門の借金」であって、その債権者は日本国民であり、私達が子孫に残すのは、政府に対する債権であって、借金ではありません。そして、私達が子孫に残すべきは、日本のよき伝統や慣習であり、世界に冠たる文化や技術であるはずです。「平成26年は少なくとも27年よりはましだった」とならないように、今年もできる限りのことをしてゆきたいと思います。

 本年が希望の持てるような一年になるよう、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

 2015年 元 旦

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