世界を動かす11の原理

 現在の世界情勢は、冷戦終結後、米国による一極支配が確立しましたが、これが2007年ごろに終了し、多極化の時代に入っています。言い換えれば、世界の覇権国米国の力が弱くなったので、世界中で様々な対立が表面化してきたということです。そんな先行きの見通せない混沌とした時代に世界情勢が突入しており、しかもグローバル化した世界では、猛烈な速さで世界情勢の変化の影響が我々の生活にも及んでくるのです。そのような認識の下で、モスクワ在住の国際情勢分析家の北野幸伯氏が「日本人の知らないクレムリンメソッド、世界を動かす11の原理」という新刊を上梓されました。

 「赤信号を渡るのもコワいけど、目隠しした状態で交差点を渡るのは、もっとコワくないですか?」というのは、ある著名な経済評論家からの問いかけです。何とか目隠しされた状態を脱するために、この本は時宜を得た内容と思い、この年末に拝読してみました。


1.世界の大局を知るには

 北野氏は、第一の原理として、まず世界を動かしている主役、ライバル、準主役を特定することと述べています。つまり、世界を動かす主要国の動きを押さえておければ、世界情勢の大局が見えてくるというわけです。そして、国際政治における「影響力と国力を測る基準となるのは、『品格』ではない。それは、『経済力』と『軍事力』である。」と冷徹に事実を指摘します。さらに、「経済力」と「軍事力」に加え、「国連における常任理事国であること」及び「核保有国であること」という2つの要件も考慮して、現在の主役は覇権国米国、ライバルはチャイナ、準主役が日本、ロシア、及びEU主要国である英国、フランス、ドイツなどと結論付けます。


2.国益とは何か

 続いて著者は、世界の歴史は「覇権争奪」の繰り返し(第2の原理)、国家にはライフサイクルがある(第3の原理)という事実を指摘した上で、第4の原理として、国益の本質とは「金儲け」と「安全保障」であると、味も素っ気もない事実を突きつけてきます。我々日本人が特に見過ごしやすい点ですが、世界の各国は煎じ詰めれば自国の「金儲け」と「安全保障」のためにうごいているというのが、世界の常識というものなのかもしれません。欧米列強が虎狼のごとくうごめいていた帝国主義の時代に何とか独立を護ることに成功した明治政府の旗印「富国強兵」が思い出されます。そういう前提で外国の動きを見ていれば、より世界情勢の本質が見えてくることは間違いないでしょう。

 北野氏は、国益に関連して、我が国は身にしみて理解しなければならないエネルギーの確保の重要性(第5の原理)及び基軸通貨の意味(第6の原理)についても言及されています。そして、国家は、国益のためならあらゆる嘘をつくものなのです(第7の原理)、 要は、組織も人間も自己の利益のために「本音」と「建前」を使い分けているということです、といったことを、「イラク戦争開戦の理由」、「日米開戦の際の米国大統領の思惑」、「米国の対イラン政策の矛盾」など具体例を出して論証してゆきます。


3.情報戦が戦われる世界

 第8の原理、「世界のすべての情報は操作されている」では、世界情勢を左右するような大きな問題に関しては、「客観報道」ではなく、「プロパガンダ」が強くなると指摘され、世界は「米英」、「欧州」、「中共」、「クレムリン」、「イスラム」の各情報ピラミッドに組み込まれていると論じられます。各情報ピラミッドでは、自陣営に都合の良い情報が流されることになります。

 そして、第10の原理では、戦争とは、実際の戦闘のみではなく、「情報戦」及び「経済戦」を含めて総合的に捉えられなければならず、情報戦争においては、第一段階の自国民を洗脳すること、第二段階の国際社会を洗脳することが行われ、北野氏に言わせれば、我が国は先の大戦において、この情報戦に敗れ、結果的にチャイナ、米英、ソ連等々を敵に回すことになった時点で勝ち目のない戦に突っ込んでいってしまったということになるのです。著者は、自虐史観からの脱却の重要性を強く主張しておられますが、それだけでは最早不十分で、情報戦に敗れて国際社会で孤立してしまった戦前の失敗を二度と繰り返してはならないことがより肝心であると持論を展開されます。さらに不氣味なのは、現時点で既に情報戦が仕掛けられているという氏の透徹した認識が語られているくだりです。

 北野流国際情報分析の集大成ともいうべき本書は、「2度と過ちを繰り返さないため」に、「新聞・テレビ報道その他によるおかしな洗脳を回避するため」に必読の書といえます。また、具体的な公開情報の収集の仕方などについても言及されており、実践的な内容も便利で参考になります。

 


 

平均賃金の基本知識

 東京都社会保険労務士会の月報12月号に、平均賃金についての記事が掲載されておりました。中央支部 飯野正明先生による記事に触発されて、平均賃金の基礎をこの機会にまとめておくことにしました。


1.平均賃金とは何か

 平均賃金とは、労働基準法が定めた1日当たりの生活賃金といえるものです。どういうことかというと、例えば、使用者の責めに帰すべき事由で、労働者に休業を命じなければならない場合などに、使用者がその休業期間中にある労働者の生活を補償しなければならないとされています。その際に支払われる補償額を算定するに当たって用いられるのが、この平均賃金です。

 労働基準法12条1項は、平均賃金について「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう」と定義しています。ここでいう「総日数」とは、「総暦日数」のことを指しています。


2.平均賃金を算定すべき事由

 それでは、平均賃金を「算定すべき事由」とは何か、という点です。労働基準法は、次の5つの場合を明示しています。

(1)解雇予告手当(20条)
(2)休業手当(26条) 使用者の責に帰すべき事由により休業させる場合
(3)年次有給休暇の賃金(39条)
  ただし、平均賃金の代わりに、就業規則に定めることにより「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」又は、労使協定を締結することにより、「健康保険の標準報酬月額に相当する金額」を使用することも可能となっています。
(4)災害補償 業務上負傷若しくは疾病にかかり、又は死亡した場合
(5)減給制裁の制限額(91条)


3.事由の発生した日以前の3箇月とは

 「事由の発生した日以前の3箇月」というのも、厳密に検討してみる必要のある文言です。まず、「事由の発生した日」についてですが、次のように決定されます。

(1)解雇予告手当 ---------解雇を予告した日
(2)休業手当(26条) --------使用者の責に帰すべき事由で休業をさせた日
(3)年次有給休暇の賃金(39条) ---年次有給休暇を与えた日
(4)災害補償 -----------事故が発生した日又は診断によって疾病の発生が確定した日
(5)減給制裁の制限額(91条) ----制裁の意思表示が労働者に到達した日

 次に「事由の発生した日以前の3箇月」の読み方です。労働基準法では、労働者保護の立場から労働者に有利なように解釈されるため、算定事由発生日を除いてその前日から算定することになっています。そのため、「以前」というのは誤解を招く表現ということもできます。

 それでは、3箇月の総暦日数が具体的にどのようになるかを算定してみます。具体例として、平成26年12月19日に解雇を予告されたとします。そうすると、9月19日から12月18日までの91日となります。ところで、月給制の場合、賃金締切日があるのが通常ですが、この場合には起算日を直前の賃金締切日とするとされています。

(1)月末締めの場合 : 9月1日から11月30日までの91日
(2)10日締めの場合 : 9月11日から12月10日までの91日
(3)20日締めの場合 : 8月21日から11月20日までの92日

 雇入れ後3箇月に満たない者であっても、入社後1箇月を下回らない限り、賃金締切日基準を使います。例えば、上記(2)で11月1日入社の者がいたとします。この者については、11月1日から12月10日までの40日を総暦日数として計算できます。1箇月に満たない場合には、原則に戻り算定事由発生日からの計算となります。


4.総暦日数及び賃金総額に含めない期間等

 算定期間中に次のような休業期間がある場合には、その日数及び賃金は、総暦日数及び賃金総額から控除するものとされています。

(1)業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業した期間
(2)産前産後の女性が労働基準法65条の規定により休業した期間
(3)使用者の責に帰すべき事由により休業した期間
(4)育児休業又は介護休業を取得した期間
(5)試用期間

また、次のものは、賃金総額に算入しないことになっています。

(1)臨時的、突発的な理由で支払われた賃金で、支給事由が何時発生するか定かでない性質を有するもの
(2)3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金、一般的には賞与 cf.年俸制の取扱いには要注意。
(3)通貨以外のもので支払われる賃金 ただし、通勤定期乗車券は、賃金総額に算入されます。

5.端数の取扱い

 平均賃金は「銭」まで求め、銭未満の端数が生じた場合にこれを切り捨てます。次に、平均賃金を用いて解雇予告手当、休業手当等を求めたら、今度は1円未満の端数を四捨五入して円の位までの金額を算出します。

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「ぼったくり」に遭遇したら

 それほど酒好きというほどではなくても、飲みに行く機会が増える時節ではないかと思います。景氣が上向いてきて、繁華街の飲食店等が繁盛するのは好いことですが、若い女性が付くような店で法外な料金が請求されるいわゆる「ぼったくり」の被害が増えているようです。そんな怪しげな店で、凄みを効かせた店員を相手に、頭にアルコールと血が上った状態で、どう交渉するのか、弁護士の谷原誠先生のメルマガ後記に実戦的な助言が掲載されておりましたので、許可を得て転載させてもらうことになりました。

=== 谷原先生のメルマガからの転載(太字、下線は浅草社労士) ===

 ぼったくり店に入ってしまった時は断固として支払わずひたすら警察に行って話し合おう、と主張し続けましょう。けんか腰になったり、相手のプライドを傷つけると、暴力沙汰になる可能性があります。

 法律の知識も必要ですね。

店を出ようとして阻止されたら、 → 「監禁ですか?」

腕をつかまれたら、 → 「腕をつかむだけでも法律上暴行罪になりますよ」

警察に電話しようとしたり、録音しようとした携帯電話を取られたら、 → 「窃盗ですか? 壊したら、器物損壊罪ですよ。返してください」

と、警察権力の土俵で話をします。

「先日、ぼったくり条例で逮捕された人がいますが、大丈夫ですか?」という言葉を挟んでもいいですね。

この繰り返しですね。

ちなみに、「なめてんじゃねえぞ!」と言われたら?

同じですね。

「そんなに自信があるなら、警察で話してもいいでしょう」

と、返します。

決して相手の土俵に乗らないこと。

どんな交渉でも、ここが大切ですね。

=== 転載 終わり ===

 頭に血が上ってしまうと、なかなか厳しいものがあるかもしれませんが、幸い我が国は法治国家であることを思い出して一呼吸、深呼吸というところでしょうか。その上で、警察に行って話をつけようという大原則を貫き通し、相手の脅しにもひるむことなく、相手の土俵には決して持ち込ませない、という方針でがんばりとおすということです。警察の民事不介入とか言ってきたら、じゃー試してみようじゃないか、くらいの冷静さを保つことも肝心なところです。

 それと、いざとなったら110番通報をすればよいわけですが、最寄の交番の位置を日常的に把握しておくこともこういう非常時には役立ちます。正に危機管理ですね。

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