国民年金法等の改正案概要

 厚生労働省は、現在開催中の第186回通常国会に公的年金関係で次のような改正案を提出しています。国民年金保険料関連の法案など非常に身近な改正点が含まれています。今年度4月からは、国民年金保険料の2年前納制度が開始されることが既に決まっているなど、国民年金制度の見直しが進んでいるようです。


1.年金保険料の納付率の向上方策

 保険料の納付率が6割程度にとどまっている現状に対して、次のような措置を講じるとしています。

(1)納付猶予制度の対象者拡大
 納付猶予制度の対象者を30歳未満の者から50歳未満の者にまで拡大します。納付の猶予期間は年金受給額に反映されませんが、受給に必要な資格期間には算入できます。また、所得が増えてから10年以内に保険料を追納すれば、将来の受給額も増やせる仕組みです。この改正事項については平成28年7月1日施行としています。なお、この納付猶予制度自体が平成37年6月までの時限措置とされていることは、これまで何度か延長されてきているとはいえ、注意すべきでしょう。

(2)学生納付特例事務法人の申請受理機能強化
 所得が少なく保険料を納めることが困難な20歳以上の学生について、在学期間中の納付を猶予し、社会人になってから在学期間中の保険料を納付できるようにするのが学生納付特例です。この制度を活用するためには、初めての申請の際に学生が市区町村の窓口に申請を行う必要がありますが、できるだけ申請しやすい環境を整備し、学生の年金受給権を確保する観点から、学生納付特例事務法人の指定を受けた学校等であれば、学生の委託を受けて、学生納付特例の申請を代行できる(代行事務)こととしています。今回の改正案では、当該納付猶予を承認する日について、現行では大学等の事務機関が厚生労働大臣に申請書を提出した日とされているところを、学生から納付猶予の申請の委託を受けた時点からにするとしています。この改正事項については平成26年10月1日施行としています。

(3)新後納制度の創設
 現行の後納制度は平成27年9月で時限立法の期限が切れます。しかし、その後についても、過去5年間の保険料については遡って納付することができる新制度を平成32年9月までの時限立法の形で創設するとしています。この改正事項については平成27年10月1日施行として、現行の後納制度との切れ目が生じないように配慮されています。

(4)保険料全額免除の申請手続の簡素化
 保険料の全額免除について、指定民間事業者が被保険者からの申請を受託できる制度を新設します。被保険者の手続き上の負担を軽減し、全額免除等の申請の機会を拡充する観点から厚生労働大臣が指定する民間事業者等が一定の被保険者から申請を受託できる制度を新設するとしています。この場合、指定民間業者等が被保険者からの申請を受託した日が厚生労働大臣への当該申請があった日とみなされます。この改正事項については平成27年7月1日施行とされています。

(5)滞納した保険料等に係る延滞金の利率を軽減
 滞納した保険料に係る延滞金について、現行市中金利の水準を踏まえ、延滞税の利率設定を参考にして、引下げることとしています。平成26年度でいえば、現行14.6%(納期限から3箇月以内ならば4.3%)であるところ、9.2%(納期限から3箇月以内ならば2.9%)となります。ただし、この改正事項についても平成27年1月1日施行とされています。


2.事務処理誤り等に関する特例保険料の納付等の制度の創設

(1)事務処理誤り等に関する特例保険料の納付等の制度
 事務処理誤り等の事由により、国民年金保険料の納付の機会を逸失した場合等について、特例保険料の納付等を可能とする制度を創設するとしています。「事後的に事務処理誤り等の事由が明らかになり、それにより国民年金保険料の納付の機会を逸したと認められる場合等」について、年金受給権を得る途を確保する観点から、事後的に特例保険料の納付等(追納・免除申請を含む)を認める制度が新設されます。

 この場合の効果は、承認の申出を行った日に保険料の追納等があったものとみなし、受給権者については、将来に向けて年金額を改定するものとしています。

(2)付加保険料の納付特例
 過去に付加保険料を支払う銀行口座に十分な預金がなかったことなどの理由で期限内に納付されず、付加保険料納付について辞退の申出をしたものとみなされた期間について、過去10年分の付加保険料の納付を法律施行後3年間の時限立法の形で実施します。

 なお、(1)及び(2)の改正事項については法律の公布日から2年以内の政令で定める日に施行するとしています。

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雇用保険法の一部を改正する法律案

 1月31日、「雇用保険法の一部を改正する法律案」が第186回通常国会に提出されています。その要点は以下の通りです。


1.育児休業給付の充実

 育児休業給付(休業開始前賃金の50%を支給)について、1歳未満の子を養育するための育児休業をする場合の休業開始後6月につき、休業開始前の賃金に対する給付割合を67%に引き上げます。この措置の施行は、平成26年4月1日とされています。


2.教育訓練給付金の拡充及び教育訓練支援給付金の創設

(1)現在受講費用の2割、10万円を上限としている教育訓練給付金を拡充し、中長期的なキャリア形成を支援するため、専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣が指定する講座を受ける場合に、給付を受講費用の4割、1年当たり48万円上限に引上げます。ただし、2年以上の被保険者期間を有する者が対象であり、給付期間は原則2年までで、資格につながる等の場合には3年まで延長可能とされています。また、資格取得等の上で就職に結びついた場合には、前述の1年当たり48万円上限の範囲内で受講費用の2割を追加的に給付する仕組みも新設します。

(2)平成30年度までの暫定措置として、45歳未満の離職者が上記の教育訓練を受講する場合に、訓練中に離職前賃金に基づき算出した額(基本手当の半額)を給付します。

 これらの措置の施行は、平成26年10月1日とされています。


3.就業促進手当(再就職手当)の拡充

 現行の給付(早期再就職した場合に、基本手当の支給残日数の50%~60%相当額を一時金として支給)に加えて、早期再就職した雇用保険受給者が、離職前賃金と比べて再就職後賃金が低下した場合には、6月間職場に定着することを条件に、基本手当の支給残日数の40%を上限として、低下した賃金の6月分を一時金として追加的に給付します。平成26年4月1日からの施行です。


4.平成25年度末までの暫定措置3年間の延長

(1)解雇、雇止め等による離職者の所定給付日数を60日間延長する個別延長給付について、要件厳格化の上で延長します。
(2) 雇止め等の離職者(特定理由離職者)について、解雇等の者と同じ給付日数で基本手当を支給する暫定措置を延長します。

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平成26年度雇用保険料率

 今週は、耳目を集めた東京都知事選挙が終わり、元厚労相の舛添要一氏が新都知事に就任しました。2020年の五輪の準備を万全に進めてもらい、予想される大地震等についても抜かりなく災害対策の準備をしていって欲しいと思います。

 冬季五輪の真っ最中ですが、大会序盤戦にメダルがなかなか取れず、日本国内の盛上がりはいまひとつの氣がします。近年夏の五輪については、総合的な支援体制が整ってきているのか、日本選手の活躍が目立つようになりましたが、冬季五輪については、同じような支援体制がまだまだ整っていないのかもしれません。

 平成26年度の雇用保険料は、前年度から変更はありません。4月から消費税が上がり、国民年金保険料も引上げられる中で、据え置きは朗報です。

平成26年度雇用保険料率

祇園暴走事故と使用者責任

 2月4日に、京都市祇園で平成24年(2012年)4月、軽ワゴン車が暴走し、通行人7人をはねて死亡させ、12人が重軽傷を負った事故で、亡くなった大阪府豊中市の女性(当時68歳)の夫(71)ら遺族3人が、車を運転していた呉服店従業員の男性(同30歳、死亡)の両親と同店に約6100万円の損害賠償を求めた訴訟で、京都地裁(上田賀代裁判官)は、両者に計約5200万円の支払いを命じる判決を言い渡したことが報道機関を通じて伝えられておりました。

 新聞等によれば、この事故の原因は、死亡した男性が持病のてんかん発作が起きた状態で軽ワゴン車を運転したことによるとされています。この点について、運転者男性の担当医による「てんかんの発作を起こした状態では自動車の運転は不可能」という見解が示され、運転者男性の家族も過去の発作は完全に意識を消失する発作であったことを証言していました。しかし、最終的に京都府警は、最初のタクシーとの衝突によって精神的に動転し、大和大路通を逃走中にてんかん発作を起こして暴走に至ったと判断し、運転者男性を容疑者死亡のまま検察へ書類送致しています。

 刑事責任については、男性が自動車運転過失致死傷容疑、呉服店社長は持病を知りながら運転させたとして業務上過失致死傷容疑で書類送検されましたが、京都地検は昨年8月、男を容疑者死亡で、社長を嫌疑不十分で、それぞれ不起訴にしています。

 今回判決のあった民事責任については、勤務中の事故だったことから呉服店には使用者責任に基づき、男性の両親には相続した賠償責任に基づき、逸失利益や慰謝料などの支払いを求め、昨年1月に遺族等が提訴。訴訟では、被告双方が事故の事実関係や責任をおおむね認め、慰謝料などの算定方法で争っていたとのことです。また、この事件などをきっかけに、持病を申告せずに免許を取得又は更新をして病気の発作によって重大事故が相次いでいることが問題視されるようになり、平成25年(2013年)6月14日、道路交通法が改正され、運転に支障のある者が免許取得又は更新時に虚偽申告を行った場合の罰則が設けられることになりました。

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遺族補償年金の生計維持関係とは?

 以前、遺族基礎年金又は遺族厚生年金などに出てくる生計維持関係又は生計同一とはということで、記事を書きました(生計維持関係とはどういう関係_2013年4月15日

 ところで、労働者災害補償保険法(以下労災法という。)にも似たような制度で遺族補償年金が存在します。労災の遺族補償年金についても生計維持要件があり、確か教科書などでは「主として労働者の収入によって生計を維持されていたことを要せず、労働者の収入によって生計の一部を維持されていれば足りる。従って、いわゆる共働きの場合もこれに含まれる。」と説明されています。

 結論としては、狭義の社会保険における遺族基礎年金又は遺族厚生年金のような収入金額又は所得金額による要件はありません。例えば、住所を同じくして、互いに依存関係をもって共に生活している夫婦がいるとして、妻がパートで勤務中に労災事故で亡くなったというような場合、他の要件を満たしていれば、夫が1000万円を超える収入を得ていたとしても遺族補償年金が支給されることになります。ただし、夫の年齢要件について、労災法ではなく、地法公務員災害補償法の事件でしたが、昨年11月最高裁から違憲判決が出ています(遺族補償年金の男女差に違憲判決_2013年11月29日

 個人的な見解を述べるとすると、労災の場合には、遺族の生活補償という意味合いの他、勤務中に事故が起きたことに対する罰則的な意味合い、遺族に対するお見舞い(極端にいえば謝罪)的な意味合いが混入しており、機械的に遺族の収入等で切り捨てにできないものがあるということなのだろうなどと管見をめぐらしているところです。

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