パワハラが個別労働紛争トップに

 厚生労働省によれば、個別労働紛争関係でよせられる相談件数の2012年度第1位は、「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」(5万1670件)が2011年まで第1位であった「解雇」(5万1515件)を抜いて初めて最多となったとのことです。これは、景気が回復傾向にあることの顕れであるとの見解もあるようですが、さは然りながら、今後従業員満足やESという用語を益々耳にすることが多くなると予想させる出来事です。

 労働相談「いじめ・嫌がらせ」トップ 12年度、件数は横ばい (5月31日 日本経済新聞電子版)
 パワハラ:労働相談で最多 「バカ」など中傷、暴言(5月31日 毎日新聞電子版)

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年金機能強化法の施行に関する政令公布

 平成24年8月10日の消費税引上げ法案可決、成立に伴い、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金機能強化法)という長い名前の法律が国会で成立し、同月22日に公布されました。同法の目玉は、なんと言っても平成27年10月施行分、即ち、消費税が10%に引上げられることを前提に、受給資格をこれまでの25年から10年に大幅に短縮することが規定されていることでした。しかし、この法案の中には、公布の日から2年以内で政令の定める日に施行されるとした改正点がいくつか盛込まれておりました(年金機能強化法の内容_平成24年9月2日)。今月始め件の政令が公布され、施行日は平成26年4月1日と決まりましたので、その内容について確認しておきたいと思います。


1.老齢年金の繰下げ支給に係る支給開始時期の見直し

 65歳から支給される老齢年金は、70歳まで繰り下げることができます。5年間繰り下げると42%(1月当たり0.7%)増額になりますが、それより後に申出を行っても42%以上に増額されることはありません。それにもかかわらず支給は申出のあった月の翌月以降の年金からという取扱いになっていたのです。これが、平成26年4月1日以降は、70歳時に遡って申出があったものとみなされ、70歳到達月の翌月分から支給されることになりました。


2.国民年金の任意加入者の保険料未納期間の合算対象期間への算入

 基礎年金制度導入前の被用者年金加入者の配偶者(いわゆるサラリーマンの妻)、基礎年金制度導入後の海外在住者、平成3年3月以前の20歳以上の学生などで任意に国民年金制度に加入の手続きをとっておきながら保険料を支払わなかった場合、これらの期間は未納期間になるので、合算対象期間とはされませんでした。しかし、平成26年4月1日以降は、任意加入しておきながら未納になっている期間が合算対象期間とされることになりました。従って、法改正により受給資格期間を充たし、新たに年金受給者となるものは平成26年4月からの年金を受給することになります。


3.障害年金の額改定請求に係る待機期間の緩和措置

 障害年金の受給者で障害の程度が進んでしまって増額改定請求をした場合、この改定請求が認められないときには、事務負担等を考慮し、1年間の待機期間が設けられています。しかし、明らかに障害の程度が増進したことが確認できる場合には、1年間の待機期間を経ずに再請求できることになりました。再請求できる場合の具体的な事例は、省令等で別途定められることになりました。


4.特別支給の老齢厚生年金に係る障害特例の支給開始時期の見直し

 特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢に達しており、かつ障害等級1級から3級の該当者については、本人からの請求があれば、請求月の翌月から定額部分の支給も開始することになっています。しかし、障害年金受給権者については、障害等級1級から3級の障害状態が固定した日又は初診日から1年6箇月が経過し障害状態にある日(特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢以前から障害状態にある場合には、支給開始年齢到達時)に遡って障害特例による支給を行うことになりました。


5.未支給年金の請求権者の範囲拡大

 年金受給権者が死亡した場合、死亡月分の年金については、受取人がいないこととなりますが、当該年金受給者と生計を同じくしていた一定範囲の親族に限り、年金の一身専属権の例外措置として、当該親族が「未支給年金」として年金を請求する権利を有するとされています。

 平成26年4月1日以降は、未支給年金を請求できる親族の範囲が「生計を同じくする2親等以内の親族」から「生計を同じくする3親等以内の親族」にまで拡大され、甥、姪、子の配偶者、伯父(叔父)、伯母(叔母)、曾孫、曾祖父母等が新たに請求権者として加えられることとなりました。


6.国民年金保険料免除期間に係る保険料の取扱い

(1)国民年金保険料を前納した後に法定免除に該当した場合、又は申請免除が承認された場合に、既に納付された前納保険料のうち法定免除該当日又は申請免除申請日の属する月分以後の保険料について、還付手続が可能になります。

(2)障害基礎年金の受給権者になったときなど、遡及して法定免除に該当した場合、法定免除該当日後に納付されていた保険料は、有無を言わさず還付される取扱いになっていましたが、本人が希望する場合には還付手続を行わず、当該期間を保険料納付済期間として取り扱うことができるようになりました。

(3)法定免除に該当した後に、将来の年金受給資格確保のために、保険料の納付を希望する者については、申出をすることによって保険料を納付することも可能になりました。


7.国民年金保険料の免除に係る遡及期間の見直し

 申請免除等の遡及期間について、申請時点の直近7月までしか遡ることができないことになっていましたが、平成26年4月1日より、保険料の徴収権について消滅時効が成立していない過去2年分について遡及して免除されることが可能になります。なお、学生納付特例制度、若年者納付猶予制度についても、申請免除同様に過去2年分遡及して免除されることが可能になります。


8.付加保険料の納付期間の延長

 任意加入である付加年金の保険料については、納期限の翌月末日までに保険料が納付されなかった場合には、加入を辞退したものとみなされ、その後の納付はできないことになっています。しかし、実務では国民年金保険料と付加保険料の納付は一体的に行われていて、別々の扱いは被保険者の皮膚感覚になじまないため、国民年金保険料の納付と同様に過去2年分遡って納付できることになります。


9.産休期間中の保険料免除及び従前標準報酬月額の特例

 産前産後休業の取得者に対し、育児休業同様の配慮措置が講じられることになりました。すなわち、産前6週間(多児妊娠14週間)、産後8週間のうち、被保険者が労務に従事しなかった期間の厚生年金保険料が免除されます。また、産前産後休業終了後に育児等を理由に報酬が低下した場合に、次回の定時決定のときまで保険料負担が改定前の標準報酬月額により算定されることになるのを避けるため、育児休業終了時改定と同じ発想で産前産後休業終了後の3箇月の報酬月額を基に標準報酬月額を改定する制度を設けます。


10.所在不明の年金受給者に係る届出制度創設

 年金受給者の所在が明らかでない場合に、年金受給者の属する世帯の世帯員に対して、所在不明である旨の届出を行うことが義務化されます。具体的には、所在不明の届出がなされると、受給権者本人に対し、生存を確認できる書類の提出を求めた上で、その提出がない場合には、年金の支給を一時差し止めることになります。


競業避止義務_フォセコ・ジャパン・リミティッド事件

 競業避止義務とは、従業員又は退職者が、使用者との競業関係にある他社に就職したり、競業関係に立つ事業を開業したりしない義務のことです。営業所の支配人及び株式会社の取締役の競業避止義務については、それぞれ商法23条及び会社法356条に規定がありますが、一般の従業員に関する法律の規定はありません。会社の重要秘密技術に関与していた従業員が、退職後に競業避止義務違反の事業に従事したとして争われた事例、フォセコ・ジャパン・リミテッド事件(奈良地裁昭和45年10月23日判決)を採り上げてみました。


1.事案の概要

 X社は、金属の鋳造に関して使用する種々の化学物質の製造販売を業とする会社です。Y1及びY2は、過去10年余にわたってX社の研究部門に勤務しており、それぞれX社の重要秘密技術に関与していました。Y1及びY2は、
(1)雇用契約存続中、終了後を問わず、業務上知りえた秘密を他に漏洩しないこと、
(2)雇用契約終了後満2年間X社と競業関係にある一切の企業に直接にも、間接にも関係しないこと、
という趣旨の契約(以下、本件特約という。)を締結していました。また、X社はY1及びY2に対し特別の機密保持手当を支給していました。

 ところが、Y1及びY2は、昭和44年6月に相次いでX社を退職し、同年8月29日、X社と同業のA社が設立されると同時に、同社の取締役に就任しました。A社の製品は全てX社の製品と競合し、X社の得意先に対してX社と同様の営業品目の製造販売を行っていました。X社は、Y1及びY2に対して、A社の事業はY1及びY2がX社に在職している間に業務上知りえた技術的秘密に基づいていることは明らかであるとして、本件特約に基づきY1及びY2の行為の差止めを求めて提訴したものです。


2.解 説

(1)判決の要旨

 請求認容

 「一般に雇用関係において、その就職に際して、あるいは在職中において、本件特約のような退職後における競業避止義務を含むような特約が結ばれることはしばしば行われることであるが、被用者に対し、退職後特定の職業につくことを禁ずるいわゆる競業禁止の特約は経済的弱者である被用者から生計の道を奪い、その生存を脅かす虞れがあると同時に被用者の職業選択の自由を制限し、又競争の制限による不当な独占の発生する虞れ等を伴うからその特約締結につき合理的な事情の存在することの立証がないときは一応営業の自由に対する干渉とみなされ、特にその特約が単に競争者の排除、抑制を目的とする場合には、公序良俗に反し無効であることは明らかである。」

 「被用者は、雇用中、様々の経験により、多くの知識・技能を修得することがあるが、これらが当時の同一業種の営業において普遍的なものである場合、即ち、被用者が他の使用者のもとにあっても同様に習得できるであろう一般的知識・技能を獲得したに止まる場合には、それらは被用者の一種の主観的財産を構成するのであってそのような知識・技能は被用者は雇用終了後大いにこれを活用して差し支えなく、これを禁ずることは単純な競争の制限にほかならず被用者の職業選択の自由を不当に制限するものであって公序良俗に反するというべきである。」

 「しかしながら、当該使用者のみが有する特殊な知識は使用者にとり一種の客観的財産であり、他人に譲渡しうる価値を有する点において右に述べた一般的知識・技能と全く性質を異にするものであり、これらはいわゆる営業上の秘密として営業の自由と並んで共に保護されるべき法益というべく、そのため一定の範囲において被用者の競業を禁ずる特約を結ぶことは十分合理性があるものというべきである。」

 「このような営業上の秘密としては、顧客等の人的関係、製品製造上の材料、製法等に関する技術的秘密等が考えられ、」「従ってこのような技術的秘密の開発・改良にも企業は大きな努力を払っているものであって、右のような技術的秘密は当該企業の重要な財産を構成するのである。従って右のような技術的秘密を保護するために当該使用者の営業の秘密を知り得る立場にある者、例えば技術の中枢部にタッチする職員に秘密保持義務を負わせ、又右秘密保持義務を実質的に担保するために退職後における一定期間、競業避止義務を負わせることは適法・有効と解するのを相当とする。」
 
 「Y1及びY2は、X社の技術的秘密を知り、知るべき地位にあつたと言うことができる。」

 「そしてY1及びY2が昭和44年6月X社を退職すると、まもなく、同年8月29日にA社が設立され、両名は取締役となり、直ちにX社製品と同様の製品の製造販売活動を行っていること前認定のとおりであるのでY1及びY2の有する知識がA社において大きな役割を果していることは十分推認できるところであり、従って、Y1及びY2は、競業者たるA社に対し、X社の営業の秘密を漏洩し、或いは必然的に漏洩すべき立場にあると言え、X社は本件特約に基いてY1及びY2の競業行為を差止める権利を有するものといえる。

 「競業の制限が合理的範囲を超え、Y1及びY2の職業選択の自由等を不当に拘束し、同人の生存を脅かす場合には、その制限は、公序良俗に反し無効となることは言うまでもないが、この合理的範囲を確定するにあたっては、制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、X社の利益(企業秘密の保護)、Y1及びY2の不利益(転職、再就職の不自由)及び社会的利害(独占集中の虞れ、それに伴う一般消費者の利害)の3つの視点に立って慎重に検討していくことを要するところ、本件契約は制限期間は2年間という比較的短期間であり、制限の対象職種は債権者の営業目的である金属鋳造用副資材の製造販売と競業関係にある企業というのであって、X社の営業が化学金属工業の特殊な分野であることを考えると制限の対象は比較的狭いこと、場所的には無制限であるが、これはX社の営業の秘密が技術的秘密である以上やむをえないと考えられ、退職後の制限に対する代償は支給されていないが、在職中、機密保持手当がY1及びY2に支給されていたこと既に判示したとおりであり、これらの事情を総合するときは、本件契約の競業の制限は合理的な範囲を超えているとは言い難」い。


(2)競業避止義務の特約等

 一般従業員の競業避止義務は、労働契約が締結されている以上、信義誠実の原則(労働契約法3条4項)に基づき、使用者の利益に著しく反する競業行為は、差控える義務があると考えられます。従って、在職中であれば、一般の従業員も競業避止義務の責を負うと考えてよいでしょう。ただし、労働契約存続中であっても、競業避止義務違反に対して懲戒処分を行う場合には、就業規則に懲戒事由として「競業避止義務違反」を明示しておく必要があります。

 問題は、退職後の競業避止義務違反です。退職後に従業員であった者が、退職する以前の労働契約に基づいて競業避止義務の責を負うことは原則としてありません。きわめて悪質な営業秘密の使用について不正競争防止法が適用される場合がある程度です。従って、本事案でも論点になっていましたが、競業避止義務に関する特約の締結について論じられることになるのです。


(3)競業避止義務の特約の有効性

 特約を締結した場合のその有効性について、本判決では、「職業選択の自由」との関係で「特約締結につき合理的な事情の存在することの立証がないときは営業の自由に対する干渉とみなされ、特にその特約が単に競争者の排除、抑制を目的とする場合には、公序良俗に反し無効である」として無制限に認められるものではないことを確認した上で、合理的範囲を確定するにあたつては、

 ①制限の期間、
 ②場所的範囲、
 ③制限の対象となる職種の範囲、
 ④代償の有無等

 の各要素について、使用者の利益(企業秘密の保護)、元従業員の不利益(転職、再就職の不自由)及び社会的利害(独占集中の虞れ、それに伴う一般消費者の利害)の3つの視点に立って慎重に検討していくことを要すると述べています。


(4)競業避止義務違反に対する損害賠償

 競業避止義務違反に対する損害賠償請求も退職者に関しては認められていると考えられます。この場合、損害額の立証は通常困難なことが予想されますので、義務違反時に退職者が支払わなければならない違約金の金額を特約で定めておくこともできます。労働基準法16条は、「労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約」を禁じ、違反者に6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金を科していますが、16条の趣旨から退職後の特約は労働契約には該当しないと考えられ、罰則の適用もないと考えられます。

海賊とよばれた男_出光佐三

 今朝のラジオに百田尚樹氏がゲスト出演し、その著作「海賊とよばれた男」が紹介されていました。歴史経済小説の形式を採用しているようですが、時代は敗戦後間もない昭和の時代、唯一の民族系石油会社出光興産の創業者で社長の出光佐三その人が主人公のモデルです。

 出光興産という会社は、唯一の民族系石油会社であるというぐらいの知識しか持ち合わせていなかったのですが、今朝の百田尚樹氏のお話では、2つの点が印象に残りました。第一に、出光は敗戦と同時に全ての海外資産を失ったのでしたが、海外拠点から引き揚げてきた多数の従業員も含めて1人として解雇しなかった家族的な経営を標榜する企業であったという点です。それどころか、タイムカードなし、出勤簿なし、馘首(かくしゅ)なし、定年なしを亡くなるまで貫きました。近代的な合理主義的経営観とは対極に位置する、家族主義的、日本的な経営観を最後まで貫いた信念の経営者だったのだと思います。

 家族主義で世知辛い資本主義の競争に打勝ってゆくためには、壮絶なまでの覚悟と信念が必要だったことと思われます。そのことを思い知らされるのが、2つ目の「日章丸事件」です。日章丸事件、以前にご紹介した「エルトゥールル号遭難事件」などもそうでしたが、民族の宝ともいえる日本人として知っておくべき歴史が軽んじられ、忘却のかなたに忘れ去られるのは一体どうしたことでしょう。日章丸事件については、小生自身この放送を聴くまで、事件の名称を聞き知っていた程度の知識ですので、出光興産のHPから、以下に転載して紹介いたします。

「1953(昭和28)年3月、出光は、石油を国有化し英国と抗争中のイランへ、日章丸二世を極秘裏に差し向けました。同船は、ガソリン、軽油約2万2千キロLを満載し、5月、大勢の人の歓迎を受けて川崎港に帰港しました。
 これに対し、英国アングロ・イラニアン社(BPの前身)は積荷の所有権を主張し、出光を東京地裁に提訴。この『日章丸事件』は、法廷で争われることになりました。裁判の経過は連日、新聞でも大きく取り上げられ、結局、アングロ・イラニアン社が提訴を取り下げたため、出光側の勝利となりました。 イラン石油の輸入は、その後、イランにおいてメジャー(国際石油資本)の結束が再び強化され、1956(昭31)年に終了しました。
 しかし、この『事件』は、産油国との直接取引の先駆けを成すものであり、日本人の目を中東に向けるきっかけになりました。また、敗戦で自信を喪失していた当時の日本で、国際社会に一矢報いた『快挙』として受け止められたことも歴史的事実です。」

 この記事はさらっと書かれていますが、百田尚樹氏は、出光の動きに先立ってこの英国によるイラン海上封鎖の突破及び石油輸入をイタリアが試みて失敗しており、出光ももし英国に日章丸が拿捕されるようなことになっていたら、確実に倒産の危機に見舞われていたことだろうと述べています。「『イラン石油に輸入は堂々天下の公道を闊歩するもので、天下に何ひとつはばかることもない。ただ敗戦の傷の癒えぬ日本は正義の主張さえ遠慮がちであるが、いま言った理由から、日本国民として俯仰天地に愧じざることを誓うものである』。出光は乗組員に堂々と胸を張れと励ました。」優れた経営者という範疇を超越した正に海賊の棟梁という感じです。しかし、人の上に立つ者をその者たらしめる人間力とは、こういうことなのかもしれません。

  

法人の代表者等に対する健康保険の適用

1.健康保険法等の一部を改正する法律案

 厚生労働省は、現在開会中の第183回通常国会に健康保険法等の一部を改正する法律案を提出しています。この法律案の骨子は、現行の協会けんぽの保険料率10.0%(全国平均)を平成26年度まで維持するために、

(1)協会けんぽの財政基盤の強化・安定化のため、平成22年度から平成24年度までの間講じてきた国庫補助の13%から16.4%への引き上げ措置を2年間延長する。
(2)後期高齢者支援金の負担方法について、被用者保険者が負担する後期高齢者支援金の3分の1を、各被用者保険者の総報酬に応じた負担とする措置を2年間延長する。
(3)協会けんぽの準備金について、平成26年度まで取り崩すことができることとする。

といった措置、すなわち、「協会けんぽへの財政支援措置の継続」ということです。


2.法人の代表者等に対する健康保険の適用

 しかし、この法律案の中には、その他として、「健康保険の被保険者又は被扶養者の業務上の負傷等について、労災の給付対象とならない場合は、原則として、健康保険の給付対象とする。」という内容が含まれます。これは、健康保険法の適用について、業務外の事由による疾病等に関して保険給付を行うこととされているため、業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病は、健康保険の給付対象とならないことになっています(健康保険法1条)。一方、法人の代表者又は業務執行者(以下「代表者等」という )は、原則として労働基準法(昭和22年法律第49号)上の労働者に該当しないため、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づく保険給付も行われないことになります。これが、制度の隙間で保険適用の対象とならない「法人の代表者等に対する健康保険の適用」の問題です。

 この問題に関して、厚生労働省は、平成15年7月1日付けで保険局長名通達を発しています。通達の要旨は以下のとおりですが、今回の改正案では、この保険局長通達の内容が改正健康保険法に取り込まれるものと思われます。

(1)健康保険の給付対象とする代表者等について

 被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による保険給付の対象とすること。

(2)労災保険との調整

 法人の代表者等のうち、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び労働基準法上の労働者の地位を併せ保有すると認められる者であって、これによりその者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関し
労災保険による保険給付が行われてしかるべき者に対しては給付を行わないこと。

 このため、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び法人の登記簿に代表者である旨の記載がない者の業務に起因して生じた傷病に関しては、労災保険による保険給付の請求をするよう指導すること。

(3)傷病手当金について

 業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、法人の代表者等は、事業経営につき責任を負い、自らの報酬を決定すべき立場にあり、業務上の傷病について報酬の減額等を受けるべき立場にないことから、法第108条第1項の趣旨にかんがみ、傷病手当金を支給しないこと。


3.第1種特別加入者

 中小企業であって、徴収法の規定による「労働保険事務組合」に労働保険事務の処理を委託している事業の事業主とその家族従業者は、特別加入の申請を行うことにより、政府の承認を受けた場合には当該事業に使用される労働者とみなして保険給付を受けることができる(労災保険法33条1-2号及び34条)とされています。ここでいう中小企業の定義は、以下のようになります。

(1)金融業、保険業、不動産業又は小売業:常時50人以下の労働者を使用する事業
(2)卸売業又はサーヴィス業:常時100人以下の労働者を使用する事業
(3)(1)、(2)以外の事業:常時300人以下の労働者を使用する事業