共通番号制度いよいよ導入か?

 国民一人一人に番号を割り振って所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を1つの番号で管理する共通番号制度、いわゆる「マイナンバー」制度の関連法案が、5月9日の衆院本会議で可決、通過の見通しです。民主党が賛成の立場なので、今国会での成立が確実になったと伝えられています。

 ちなみに、我が国の現状は、基礎年金番号、健康保険被保険者番号、パスポートの番号、納税者番号、運転免許証番号、住民基本台帳カードなど各行政機関が個別に番号をつけているため、国民の個人情報管理に関して縦割り行政で重複投資になっているということはご承知の通りで、確かにこれだけの番号があると管理する側もされる側も管理するのに骨が折れるということは言えるのかもしれません。

 しかし、税と社会保障のの一体化が進めば、行政の一体化、士業の業際問題などに波及する可能性を意識しておく必要があると思われます。目を引く報道もなく、地味に進行している感じですが、社会への影響力は大きな法案になりそうな予感がします。

マイナンバー委員会可決 今国会成立へ(平成25年4月26日_産経電子版)

共通番号制度に関する報道_平成23年2月9日

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公的年金制度の健全性及び信頼性確保法案の概要

 厚生労働省は、4月12日に現在会期中の第183回通常国会に「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」を提出しました。その概要は以下の通りです。


1.厚生年金基金制度の見直し

(1)この法案では、施行日は公布日から1年を超えない範囲で政令の定める日となっていますが、施行日から厚生年金基金の新たな設定を認めないこととしています。

(2)次に、施行日から5年間の時限措置として特例解散制度を見直し、分割納付における事業所間の連帯債務を外すなど、基金の解散時に国に納付する最低責任準備金の納付期限・納付方法の特例を設けることになっています。

(3)さらに、施行日から5年後以降は、代行資産保全の観点から設定した基準を満たさない基金については、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聴いて、解散命令を発動できることになります。

(註)特例解散
 代行割れとなっている基金が厚労相に特例解散を申請し、認可を受けることにより自主解散すること。また、新たに、代行割れの度合いが一定率以上である等の要件を満たし、かつ、自主的に解散の申請を行わない基金については、厚労相が第三者委員会の議決を経て指定を行い、一定期間内に解散を促す仕組みを導入する。

(4)また、上乗せ給付の受給権保全を支援するため、厚生年金基金から他の企業年金等への積立金の移行について特例を設けるとされています。

厚生年金基金制度の見直し厚労省試案_2012年12月5日
厚生年金基金、1割弱が存続へ_4月2日


2.第3号被保険者の記録不整合問題への対応

 一昨年の1月頃から問題が顕在化した第3号被保険者の記録不整合問題について、「保険料納付実績に応じて給付するという社会保険の原則に沿って対応するため」、次のような解決のための国民年金法の改正案が提案されています。

(1)年金受給者の生活の安定にも一定の配慮を行った上で、不整合記録に基づく年金額を正しい年金額に訂正するとしています。

(2)無年金となることを回避する目的で、不整合期間を「合算対象期間」として取扱うとしています。

(3)過去10年間の不整合期間の特例追納(3年間の時限措置)を可能とし、年金額を回復する機会を提供するとしています。

 なお、第3号被保険者の記録不整合問題とは、第2号被保険者からの被扶養配偶者である第3号被保険者が、第2号被保険者の離職などが原因で実態としては第1号被保険者となったにもかかわらず、必要な届出(第3号被保険者に関する種別変更問題の考察_2011年12月2日)を行わなかったために、年金記録上第3号のままになっていることから生じる記録不整合の問題を指します。


3.その他

 障害・遺族年金の支給要件の特例措置及び国民年金保険料の若年者納付猶予制度の期限を10年間延長するとしています。障害・遺族年金の支給要件の特例措置というのは、3分の2以上の保険料納付要件に該当しなくても初診日(死亡日)の前日において、初診日(死亡日)の属する月の前々月までの1年間に保険料の滞納期間がないことという要件です。

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生計維持関係とはどういう関係?

1.生計維持関係の認定

 社会保険制度を勉強していると、特に遺族給付関係などで「生計維持関係」が給付の要件として挙げられていることが目に付きます。例えば、遺族基礎年金では「被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、...」(国年法37条の2)、寡婦年金においては「夫の死亡の当時夫によつて生計を維持し、...」(国年法49条1項)、また、遺族厚生年金では「被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当時。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。」(厚年法59条)などという規定があります。

 従って、亡くなった者が死亡者の要件を充たしている場合、これらの給付が行われるか否かの判断では、「生計維持関係」の認定が重要な要件になってくるのです。原則は、亡くなった者と生計を同じくしていた遺族で、年額850万円以上の収入又は年額655.5万円以上の所得(収入額又は所得額の「基準額」という)を将来にわたって有すると認められる者以外のものとされています。

 この生計維持関係の認定に関して、「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(平成23年3月23日年発0323第1号)」というのが出ていますので、これを基に知識の整理をしておきたいと思います。


2.生計維持認定対象者と生計同一認定対象者

 社会保険の給付要件として、生計維持関係の認定が必要な場合と単に生計同一の認定で足りる場合に分けられます。その主な内訳は、次のとおりです。

生計維持関係の認定が必要な場合

(1)老齢基礎年金の振替加算等の対象となる者
(2)障害基礎年金(国民年金法等の一部を改正する法律による改正前の国民年金法による障害年金を含む。)の加算額の対象となる子
(3)遺族基礎年金の受給権者
(4)昭和60年改正法による改正後の国民年金法による寡婦年金の受給権者
(5)老齢厚生年金の加給年金額の対象となる配偶者及び子
(6)障害厚生年金の加給年金額の対象となる配偶者
(7)遺族厚生年金(昭和60年改正法による改正後の厚生年金保険法による特例遺族年金を含む。)の受給権者
(8)昭和60年改正法による改正前の船員保険法による障害年金の加給年金額の対象となる配偶者及び子

生計同一認定で足りる場合

(1)遺族基礎年金の支給要件及び加算額の対象となる子
(2)死亡一時金の支給対象者
(3)未支給年金及び未支給の保険給付の支給対象者


3.生計維持関係等の認定日

 生計維持の認定及び生計同一の認定対象者に係る生計維持関係等の認定を行う「認定日」について注意すべきは、次のとおりです。従って、老齢厚生年金の場合、受給権発生後に新たに生計維持関係がある配偶者及び子を有するに至った場合であっても、加給年金の認定日には該当しないということになります。

(1)受給権発生日
(2)老齢厚生年金に係る加給年金額の加算開始事由に該当した日
(3)老齢基礎年金に係る振替加算の加算開始事由に該当した日
(4)障害厚生年金及び障害基礎年金並びに障害年金の受給権者については、障害年金加算改善法の施行により、受給権発生後において、法施行日以後に新たに生計維持関係がある配偶者及び子を有するに至った場合にあっては、当該事実が発生した日


4.生計同一に係る認定要件

 生計維持の認定をするためには、まず生計同一の認定を行うことがその要件となります。また、その際に必要な手続書類等は以下のとおりです。

(1)認定の要件
生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計同一関係の認定に当たっては、次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。

(Ⅰ)生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又は子である場合

A 住民票上同一世帯に属しているとき
  →住民票(世帯全員)の写
B 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →別世帯となっていることについての理由書

C 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
 (a)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →同居についての申立書
  →別世帯となっていることについての理由書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等

 (b)単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
  (ア) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
  (イ) 定期的に音信、訪問が行われていること
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →別居していることについての理由書
  →経済的援助及び定期的な音信、訪問等についての申立書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等

(Ⅱ)生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が死亡した者の父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹である場合

A 住民票上同一世帯に属しているとき
  →住民票(世帯全員)の写
B 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写

C 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
 (a)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →同居についての申立書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等
 (b)生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われていると認められるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →経済的援助についての申立書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等


5.収入に関する認定要件

 次に、生計維持の認定をするためには、収入に関する要件を充たす必要があります。概ね、年額850万円以上の収入又は年額655.5万円以上の所得を将来にわたって有すると認められる者以外のものです。要件の詳細及びその際に必要な手続書類等は以下のとおりです。

(1)生計維持認定対象者(障害厚生年金及び障害基礎年金並びに障害年金の生計維持認定対象者は除く。)に係る収入に関する認定に当たっては、次のいずれかに該当する者は、厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとする。

① 前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては、前々年の収入)が年額850万円未満であること。
② 前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては、前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。
③ 一時的な所得があるときは、これを除いた後、前記①又は②に該当すること。
④ 前記の①、②又は③に該当しないが、定年退職等の事情により近い将来(概ね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。

(2)障害厚生年金及び障害基礎年金の生計維持認定対象者に係る収入に関する認定に当たっては、次のいずれかに該当する者は、厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を有すると認められる者以外の者に該当するものとする。

① 前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては、前々年の収入)が年額850万円未満であること。
② 前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては、前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。
③ 一時的な所得があるときは、これを除いた後、前記①又は②に該当すること。
④ 前記の①、②又は③に該当しないが、定年退職等の事情により現に収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。

改正労働契約法 改正18条をめぐって_その2

 4月1日施行の改正労働契約法、中でも無期転換権を労働者に付与する18条が注目されていましたが、大学の非常勤講師もこの規定によって無期転換権を取得するとの期待が持てる人たちだったようです。我が母校で非常勤講師の契約更新の上限を5年とする就業規則改正に関して、紛争勃発と伝えられています。都の西北は、俄かに騒然?

労働基準法違反:非常勤講師組合、早大総長を告発 「就業規則で不正」_4月10日

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グローバル・リスクを考える

1.グローバル・リスクの現状

 評論家中野剛志氏の「日本防衛論」を読んでみました。デフレからの脱却を掲げる第2次安倍政権が発足して以来、超円高が是正過程に入り、株価も上昇して景気回復の期待が高まっています。しかし、ここで世界に目を向けると、欧州における共通通貨の失敗、覇権国米国の長期後退傾向の顕在化など、世界恐慌を引き起こしかねない危機要因に満ちていることを中野氏は指摘しています。グローバル・リスクについて氏の主張の要点は次のようなものです。

(1)資本主義は本質的に不安定であり、放置すれば崩壊する。その崩壊を抑止するためには、財政金融政策を実施する国家の存在が不可欠である。また、グローバル資本主義も資本主義の延長線上にあるのだから本質的に不安定であり、その崩壊を抑止する装置が必要である。そして、その装置こそが覇権国家の存在であった。

(2)資本主義とは、主権国家による財政金融政策と、覇権国家による国際供給財の供給という、2重の安定装置がなければ崩壊してしまう脆弱な経済システムである。しかし、1970年代から80年代にかけて、覇権国家米国の衰退が始まり、安定化装置の一つに綻びが生じた。そして、80年代に入って、各国政府は、新自由主義の教義に則って、政府によるケインズ的な政策というもう一つの安定化装置までをも解除してしまった。

(3)1970年代、先進国は景気後退下でのインフレ進行、すなわちスタグフレーションに悩まされたが、今日では、スクリューフレーションという現象に突き当たっている。スクリューフレーションとは、一般物価は上昇し、消費者の負担になっている一方で、賃金上昇が抑えられた結果、中産階級が没落していく現象である。スクリューフレーションの原因は、グローバル化、技術進歩、非正規雇用の普及である。グローバル化による海外の低賃金労働力との競争の激化、技術進歩や労働市場の流動化によって、労働力コストの削減圧力はかつてなく強まり、経済成長や企業収益の拡大にもかかわらず、実質賃金が上昇しなくなった。

(4)地政学的変動が引き起こすエネルギー価格の高騰を抑制するためのエネルギー安全保障、気候変動による食糧価格の高騰を抑制するための食糧安全保障、地殻変動を想定した耐震化などの防災といった政策発動及び中低所得者層の貧困化に対して、より直接的に所得格差を是正する社会政策も求められる。こうした各種のリスク対策を総動員するには財政支出の拡大を伴う。しかし、この財政支出は、需要を創出し、デフレの原因である需要不足を解消すると同時に、世界的な経済ショックから国内経済を守る緩衝としての内需となるのである。


2.新自由主義成長モデルの成立とグローバル・リスク

 中野氏は、今日の世界経済危機、特にユーロ危機、米国の景気後退、新興国の構造不況の問題を取り上げ、米国における新自由主義成長モデルの問題及び中国経済の構造的欠陥について次のように述べています。
 
(1)ユーロ危機の直接的なきっかけとなったのは、2008年9月に起きたリーマン・ショックである。リーマン・ショックを引き起こした淵源は、1980年代以降の「新自由主義成長モデル」と呼ぶべき経済システムの成立まで遡る。1980年以前のアメリカの経済政策は、完全雇用を目的としていた。また、経済システムは、生産性の向上とともに賃金が上昇し、それによって総需要が拡大して雇用を生むという好循環によって経済成長を成し遂げていた。

(2)1980年以降は、「新自由主義成長モデル」が成立した。「新自由主義成長モデル」における経済政策では、グローバル化の促進、小さな政府、労働市場の柔軟化を掲げ、また、完全雇用よりも低インフレを優先するものであった。「新自由主義成長モデル」においては、賃金上昇の代わりに金融のイノヴェーションと規制緩和によって生み出される負債の増大と資産価格の持続的上昇が、需要の成長をもたらすことになった。賃金はほとんど上昇しなくなったが、グローバル化の促進によって安価な輸入品が流入したので、低賃金も消費者にとってはそれほど苦にならなかった。一方で、格差の拡大によって、富裕者向け贅沢品が消費の大きな割合を占めるようになった。そして、その結果、製造業の衰退、貿易収支の悪化、格差の拡大がもたらされた。

(3)日本が世界第2位の経済大国となった1968年、日本の対GDP比家計最終消費支出は53.7%もあり、輸出依存度は10.1%に過ぎなかったのに対して、中国のそれらは2010年当時で35%及び27%程度である。日本では、高度成長の過程で格差は縮小し、政治は安定し、行政も信頼されていたので、70年代の石油危機や世界不況にも対処でき、安定成長へと移行することができた。だが、現在の中国は、リーマン・ショック後の積極的な財政金融政策が功を奏して、いち早くV字回復を果たしたものの、その結果不動産バブルを発生させてしまい、それが崩壊している。GDPこそ世界第2位の地位を確保したとはいえ、高度成長期の日本のような好条件は一切備わっていない。

(4)21世紀となった現代は、経済は成長しなくなり、画期的なイノヴェーションが起きなくなった。エネルギー価格は、需要の停滞にもかかわらず高止まりし、食糧や水資源も不足しつつある。交通インフラや電力インフラが老朽化・脆弱化しているのに放置されている。知識、情報、サーヴィス、文化の時代が来るはずであったのに、エネルギー、食糧、水といった必需品や、社会インフラのような基本的な財の不足に悩まされる時代になってしまっている。グローバル化は終わり、新興国は経済的にも政治的にも不安定化している。日本の周辺では領土を巡る緊張が高まり、資源を巡る国際紛争が激化し、ナショナリズムが高揚している。
 我々が長い間、当然のものと考えていた20世紀後半までの世界は、覇権国家によって得られていたものに過ぎなかった。覇権国家が消滅すれば、これまでの世界も失われる。19世紀の英国、そしえ20世紀の米国という2つの覇権国家が実現したグローバルな政治経済秩序が、米国の覇権の消滅とともに、200年の寿命を終えたのである。その兆候が、我々が直面している数々のグローバル・リスクなのだ。

(5)グローバル・リスクの顕在化に備え、日本は第一に、国防、エネルギー、食糧そして大規模地震対策という4つの安全保障を優先して強化すべきである。第二に、外的な経済ショックに備えるため、できる限り早期にデフレ不況から脱却し、内需による成長を実現することである。最後に、政府が総合安全保障戦略を実現するための長期的な「計画」を策定し、公共投資を着実に実行していくことが重要である。