職場における喫煙規制の根拠

 今日一般事務所を含む人が多く集まる場所での喫煙は、ご法度というのが一般的になりました。事務所における禁煙又は分煙が一般的になり、職場において堂々と喫煙が許される場面は、今や古い映画の中でしか見られない光景です。この職場における禁煙の根拠としては、社会規範の変化とともに一体どのような法律が存在しているのでしょうか?


1.WHOたばこ規制枠組条約の批准

 世界保健機関(WHO)は、法的拘束力のある国際条約でたばこに関する規制を行うこととし、平成17年2月に「たばこ規制枠組条約」が発効しています。我が国もこの条約の締約国であり、たばこに関する規制を行う義務を負っています。

第8条 たばこの煙にさらされることからの保護
(1)締約国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する。
(2)締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び実施を積極的に促進する。

 WHOたばこ規制枠組条約第8条履行のためのガイドライン
 (平成19年7月採択)
(1)100%禁煙以外の措置(換気、喫煙区域の使用)は、不完全である
(2)すべての屋内の職場、屋内の公共の場及び公共交通機関は禁煙とすべきである


2.国内法の整備

 国内における職場の受動喫煙防止対策については、平成4年以降、労働安全衛生法に定められた快適職場形成の一環として事業者を指導することになっています。これは労働法的な視点からの使用者に課せられると考えられている「安全配慮義務」又は「職場環境配慮義務」から来るもので、平成19年3月1日に施行された労働契約法にも使用者の安全配慮義務が第5条に明文化されています。

 これらの労働者を保護の対象とした法律のほかに、平成15年5月1日に施行された健康増進法があります。この法律では、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」(第25条)と規程しています。この規程に罰則はありませんが、平成22年2月には、多くの人が利用する公共的な空間では、全面禁煙であるべきとの健康局長通知が既に出されています。

 今後の方向性としては、平成22年12月22日、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会から、今後の職場における安全衛生対策について提言され、その一項目として、職場における受動喫煙防止対策の方向性が示されています。

 労働政策審議会の報告によれば、次のような提言がなされています。また、これらの提言を踏まえた安全衛生法改正案が一昨年12月の臨時国会に提出されましたが、議決に至らないまま、昨年12月の衆議院解散により一旦廃案になっています。

 (1)一般の事務所、工場等については、全面禁煙や空間分煙とすることを事業者の義務とすることが適当
 (2)飲食店等の顧客が喫煙できることをサービスに含めて提供している場所についても、同様の措置を取ることが適当であるが、それが困難な場合には、当分の間、換気等により可能な限り労働者の受動喫煙の機会を低減させることを事業者の義務とすることが適当
 (3)国民のコンセンサスの形成に努め、できるだけ早期に新成長戦略の目標を達成できるよう取組を推進

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戸籍謄本と戸籍抄本

 年金の裁定請求の際、添付書類として住民票の写しや戸籍謄本などを用意することになっています。そこで、戸籍謄本とはそもそもどのような文書なのか、また、戸籍抄本という言葉もしばしば耳にしますが、戸籍謄本とどこが異なるのか、まとめておきたいと思います。


1.戸籍とは

 戸籍とは、国民の身分関係を登録し、公に証明するために保管されている書類のことです。戸籍は、住所とは別に自由に決められ、役所や役場で保管されていますが、この戸籍の所在する場所が「本籍」で、本籍のある市区町村名を「本籍地」と呼んでいます。

 戸籍は、夫婦とその未婚の子を単位として編製されます。戸籍には、本人の名と生年月日、父母の名と続柄、出生や婚姻、養子縁組といった事柄が記載されています。

 「戸籍謄本」とは、戸籍の内容を全て写したものを指し、「戸籍抄本」とは、戸籍の中の特定の人についての部分を写したものです。


2.戸籍の電算化による名称の変更

 戸籍謄本及び戸籍抄本の他に「戸籍の全部事項証明書」又は「戸籍の個人事項証明書」といった言葉を見かけることがあります。これらは、平成6年に戸籍の磁気ディスクによる保存が認可されたことによる戸籍の改製と関係しています。即ち、戸籍が電算化され、原本が紙から磁気データに変換されたことから、戸籍謄本及び戸籍抄本という言葉が実態に当てはまらないことから、電算化を行った自治体では、窓口で発行する戸籍の証明物の呼称を戸籍謄本から「戸籍の全部事項証明書」に、戸籍抄本から「戸籍の個人事項証明書」にそれぞれ変更しています。

 また、データ化されたことによって、新たに個人データの中の一部の事項のみ証明することも可能になったため、このような書類を「戸籍の一部事項証明書」と呼ぶようになりました。


3.戸籍の附表

 戸籍の附表とは、市区町村の区域内に本籍を有する人の住所の遍歴を記載した書類です。


4.住民基本台帳及び住民票

 住民基本台帳とは、個人を単位とした住民票を世帯ごとに編製した住民の居住関係を公証する公簿のことです。また、住民票コードというものが存在しますが、これは住民票を持つ日本国民を対象に割り当てられる一意の番号であり、この番号によって住民基本台帳ネットワークシステム上で国民を一意に特定することを目的としています。

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G20は金融緩和容認

 モスクワで開催されていた20箇国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は16日、「通貨の競争的な切り下げを回避する」ことなどを含む共同宣言を採択して閉幕しました。懸念されていた「日本が円安誘導を行っている」との批判は、「大胆な金融緩和策を行うアベノミクスは、デフレを脱却し成長路線に乗せるために行うものであり、為替操作を目的とするものではない」という日本の主張が受け入れられた形になっています。大胆な金融緩和は、リーマン危機後の米国などがとっくの昔に実施している金融政策であり、日本だけが孤立する事態は、余程の下手を打たない限り、そもそもあり得なかったわけです。

 明日からは、再び円安及び株高になり、景気に好い影響が出そうです。実体経済の本格的な回復基調の一刻も早い顕在化が待ち望まれます。

「G20共同声明要旨」(17日 Reuter)
「G20は通貨安競争回避で一致、金融緩和の影響「最小化へコミット」」(17日 Reuter)

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ギリシャの失業率

 今朝は「ギリシャ失業率、最悪の27.0%=上昇に歯止め掛からず-昨年11月」という報道が伝えられておりました。中でも衝撃的なのは、「15~24歳の若年失業率は61.7%と6割の大台を超える」というところです。労働人口全体の4人に1人が失業者で、ごく若年層に限ると2人に1人を優に上回る失業者数って、一体全体この国はどうやって国を運営しているのでしょうか? ギリシャ経済がEUの中に占める比率は名目GDPでせいぜい2%を下回るほどでしかありません。ギリシャ経済が上手く回っていなくてもEU全体に大した影響は本来ないはずなのですが、ギリシャ経済はEuroという壮大な社会実験が生来抱合していた本質的な問題点を象徴した存在になってしまっています。そのため、ギリシャ問題は、ギリシャと類似の経済破綻がEU圏の8.41%を占めるスペインや12.49%を占めるイタリアなどに飛び火した場合にEuro構想自体が崩壊してしまう恐怖を市場に想起させることになり、世界経済にとっての大きな火種が鎮火せずにくすぶり続けているような状況なのです。

 しかし、この状況で最大の利益を享受している国があります。それはEU圏最強の工業力、従って最大の供給力を有する国ドイツです。ドイツは自国の需要を満たして余りある製品を生産し、他国へ輸出して稼ぎまくっています。同国の輸出依存度(財の輸出÷名目GDP)は41.23%と日米英仏などと比較しても断トツに高く、輸出依存度で同国を上回るのはせいぜい韓国くらいです。ドイツは、Euro圏内での共通通貨制度を利用して比較的供給力の劣るギリシャなど南欧に位置する国々に輸出攻勢をかけて1人勝ち状態を続けています。さらに、南欧諸国の弱い経済に引張られる形でEuro安が続いたために、貿易黒字にもかかわらず通貨安の状態を享受して非Euro圏に対しても輸出競争力を発揮できることになっています。文字通り「ドイツの、ドイツによる、ドイツのためのEuro」なのです。

 とはいえ、「ドイツの、ドイツによる、ドイツのためのEuro」は、Euro圏全体を見渡せば、まさに砂上の楼閣のようなもので、ギリシャ問題1つ解決できないドイツからの「アベノミクスは通貨安誘導で危険」などという批判は全くいわれのない的外れなものというほかありません。一体どの面下げてそういう批判ができるのでしょうか、と問い質したい気持ちになります。また、アベノミクス批判の急先鋒といわれる新興国については、為替操作を日常的に繰り返すと常に米国政府から非難を浴びている国であり、ドイツ以上にお前にだけはいわれたくないはという気がしてならないのですが、今後の日本経済の先行きを左右するやもしれない週末のG20での議論はの成り行きは大いに注目されるべきでしょう。
「第4四半期のユーロ圏GDPは0.6%減、予想以上の落ち込み」(15日 Reuter)
「麻生財務相「日本再生は世界に好影響」 G20初日」(15日 日経)

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改正労働契約法 改正18条をめぐって

 これまでも何度か採り上げてまいりました改正労働契約法(参照:改正労働契約法_2012年8月16日改正労働契約法及び改正高年齢雇用安定法のその後_2012年11月30日)は、平成25年4月1日から有期労働契約の無期労働契約への転換権を定めた18条が施行されます。同時に有期労働契約であることを理由に労働条件の不合理な差別を禁じた20条も施行されることになっておりますが、今回はその施行に当たって、留意すべき点が多い18条について、まとめておきたいと思います。


1.「同一の使用者」とは

 18条1項にいう「同一の使用者」とは、労働契約を締結する法律上の主体が同一である使用者のことを意味しています。従って、事業場が異なっていることは「同一の使用者」という要件を排除することにはなりません。全国にチェーン展開するアパレルやコンビ二店の北海道の店舗で働いた後、九州の同一の使用者の店舗で新たに有期労働契約を締結して働いた場合でも、18条1項にいう「同一の使用者」要件を充たすということです。


2.どの時点で転換権が生じるのか

(1)「通算契約期間」とは

 改正契約法18条1項は、2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えることを無期転換権発生の要件に挙げています。ここで第1に注意しなければならない点は、18条の規定は、施行の日以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用し、施行の日前の日が契約期間の初日である期間の定めのある労働契約の契約期間は、「通算契約期間」には算入されないという点です。つまり、今現在締結している有期労働契約が本年4月以降満了し、新たな有期労働契約を締結したとしても、両者を通算することはできません。また、現在の有期労働契約が既に何度か更新されており、既に通算して5年を超えていたとしても、無期転換権が本年4月以降当該契約が満了するまでの間に発生することは、当然のことながらありません。

 第2に、「2以上の有期労働契約」といっていることから、無期転換権の発生の要件には、少なくとも1回以上の更新が行われていることが必要であることがわかります。有期労働契約の上限は、通常3年までとされていますが、例外規程が適用されて期間5年以上の有期労働契約を締結したとしても、この時点で無期転換権が発生することはありません。

 第3に「通算契約期間」の計算方法ですが、同計算は、年・月・日単位で行い、契約期間の初日から起算して翌月の応答日の前日までを1箇月とし、複数の契約期間について1箇月未満の日数がある場合には、その日数を合算した後、30日を1箇月に換算するものとされています。

(2)クーリング

 ところで、改正契約法18条2項は、複数の有期労働契約の間に「同一の使用者」の下で働いていない期間(空白期間)が一定以上継続した場合には、当該空白期間以前の有期労働契約期間は、前述の「通算契約期間」には算入しないとしています。この仕組みは「クーリング」と呼ばれています。

 この仕組みが発動するための空白期間ですが、通常は6箇月以上とされています。但し、契約期間が1年未満である有期労働契約を複数回締結している場合、厚生労働省令に基づき契約期間の長さに応じて契約期間がクーリングされることになります。具体的には次のような仕組みになります。

 ①契約期間が2箇月以下____1箇月以上の空白期間
 ②契約期間が2箇月超4箇月以下____2箇月以上の空白期間
 ③契約期間が4箇月超6箇月以下____3箇月以上の空白期間
 ④契約期間が6箇月超8箇月以下____4箇月以上の空白期間
 ⑤契約期間が8箇月超10箇月以下____5箇月以上の空白期間
 ④契約期間が10箇月超____6箇月以上の空白期間

(3)無期転換権の発生時期

 さて、有期契約労働者が使用者に対して無期転換の申込みを行うことができる時期に関して、改正契約法18条1項は、「現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に」と規程しています。例えば、契約期間3年の有期労働者が同様の条件で最初の更新を行ったとき、「通算契約期間」は6年となります。従って、更新された契約期間の初日から同契約期間が満了する日までの3年間が無期転換の申込みを行うことができる期間となります。

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