年金改革の動向

先週は、6月に本格的な政策論議が予定される「社会保障と税の一体改革」に向けて、政府及び与党に動きがありました。政府は6月中に与党政策調査会案と厚生労働省案を参考に最終案を決める予定としています。新聞記事を転載してその動きをまとめておきます。

===5月24日 日本経済新聞朝刊より引用===

厚労省案、年金給付増に歯止めなく
パート「週20時間」で加入、低所得者に加算 抑制策課題に

政府は23日、社会保障改革に関する集中検討会議を開き、厚生労働省が示した年金制度改革や貧困・格差対策について議論した。厚労省の年金改革案は低年金・無年金者への加算や非正規労働者の厚生年金の適用拡大など現行制度の手直しが中心だ。膨らむ一方の給付の抑制策などは検討課題にとどまり、少子高齢化への対応という点では不十分な内容となった。

厚労省は創設から50年が経過した現在の年金制度について、社会経済の状況に合わなくなっていると総括した。しかし、改革案の内容は「現行制度の改善を速やかに進める」ことに軸足を置いており、抜本改革にはほど遠い。


1.長期展望見えず

今回、厚労省が示した改革案で目立つのは、給付拡大につながるものばかり。例えば低所得者については年金を加算することを盛り込んだ。基礎年金(40年加入で月約6万6千円)を定額(1万6千円程度)か定率(25%)で加算する案を検討している。未納などで納付期間が少なく、毎月の年金額が4万円未満の人が4割弱いることが背景にある。これは給付増で年金財政の悪化につながる。所得が低くても資産を持つ高齢者も含めるかなど加算対象者の範囲ははっきりしないので、年金財政への影響は不透明だ。

見込み者を含め118万人いるとする無年金者については、年金受給資格を得られる期間を短縮することで、無年金になるのを防ぐ。期間は明示しなかったが、厚労省内では現在の25年を10年に短縮する案を検討中だ。

改革案の最大の問題は、高齢者への給付効率化策が曖昧で年金財政が長期的に維持できるかどうか見えない点だ。厚労省は高所得者の基礎年金を最大で半額にする給付削減を盛り込んだが、効果は限定的とみられる。高所得者の年金減額を実施しているカナダの制度を参考にすると、年収600万円以上が減額対象になる。厚労省試算では、600万円以上の人は全体の2.4%にすぎず、削減効果は大きくない。

2.企業の反発必至

物価や賃金の上昇よりも年金額を抑える仕組みのマクロ経済スライドについては「検討課題」との位置付けにとどめた。「デフレ経済下における年金財政安定化方策について検討する」とし、具体策は示さなかった。英国やドイツなどの先進国で引き上げが相次ぐ支給開始年齢については「中長期的に検討する」とした。

どのようにひとつひとつの改革を実行するか、道筋も見えない。首相が指示した非正規労働者の厚生年金加入拡大は、保険料の半分を負担する企業の反発が必至だ。厚労省のかつての試算では、加入条件を週30時間勤務から週20時間以上にすると、310万人が対象になる。対象者の総報酬月額が10万円とすると、企業の負担は3400億円増える見込みだ。

受給資格の期間短縮についても、年金制度を根本から揺るがす危うさをはらんでいる。25年払うよりも10年だけ払う人が続出しかねないからだ。さらに10年だけ払う人は年金加算の対象となる低年金者となり、国の負担は増える。持続可能な年金制度をつくるという意気込みは改革案からは見えない。

===5月27日 日本経済新聞朝刊より引用===

最低保障年金を事実上棚上げ 現実路線へ
民主調査会が改革案、野党との協議にらむ

民主党の拡大政策調査会役員会は26日、社会保障改革案を決定した。2009年衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた最低保障年金を柱とした新年金制度の導入時期を明記せず、事実上、棚上げした。厳しい財政事情を踏まえた現実路線への軟着陸を図るとともに、野党との政策協調への布石との見方がある。マニフェストの目玉政策の先送りにつながるもので、党内から反発も予想される。

改革案は仙谷由人代表代行(官房副長官)が会長を務める「社会保障と税の抜本改革調査会」がまとめた。調査会は30日に、政府の社会保障改革に関する集中検討会議(議長・菅直人首相)に改革案を提出。政府は6月中にも、調査会案と厚生労働省案を参考に最終案を決める予定だ。

改革案は、支払った保険料に応じた年金を受け取る「所得比例年金」の保険料を収入の15%、「最低保障年金」は月額7万円とする内容。09年マニフェストでは「2013年まで」にこの制度を導入すると約束しているが、関連法案の成立時期には触れなかった。

このほか、改革案は現行制度の改善策も提示した。(1)厚生年金の対象を、パートやアルバイトなどの非正規社員に広げる (2)税制の抜本改革により、基礎年金の国庫負担を2分の1に保つ――ことなどが柱だ。

民主党が「税方式の最低保障年金」を最初に掲げたのは03年衆院選だ。仙谷氏に近い古川元久氏らが作成した。当時は同年金の支給範囲は決めなかったが、07年に小沢一郎元代表が「年収600万円以上の人から減額し、1200万円で支給をゼロにする」と表明。その数字が事実上、民主党公約となっていた。ところが4月中旬、調査会が厚生労働省に再試算をさせると、「小沢案」の実現には消費税の大幅増が必要であることが判明。「現実的でない」(調査会幹部)として、今回の棚上げを決めた。

マニフェストの目玉政策の修正に、小沢元代表を支持する勢力などから反発が出るのは必至だ。民主党が自民党の獲得議席を上回った04年の参院選では、年金改革案が原動力になった。若手にもこの案へのこだわりが強い議員が多い。党内では元代表と距離を置く仙谷氏が、対決色を強める自民、公明両党との“接点”を探るため、あえてマニフェスト修正にカジを切ったとの見方も出ている。自公両党は年金制度について、社会保険方式の維持を主張しており、民主党のマニフェストとの隔たりは大きい。今回の改革案は自公との溝を減らし、政策協調に道筋をつける布石という見立てだ。

=== 引用終わり ===

社会保障と税の一体改革-社会保障重点3分野-

先週は、厚生労働省が政府の「社会保障と税の一体改革」で実現を目指す年金制度改革案が5月20日に公表されていましたが、今朝は菅首相が重点的に取り組む3分野として、(1)非正規労働者への社会保険適用拡大、(2)共通番号制度の導入、(3)幼保一体化などの子育て支援を挙げていることを報じています。また、6月末の一体改革では消費税率引き上げの必要性にも言及する見通しで、負担増への理解を得るために首相は30日の会合では第2弾として給付抑制などの「効率化3本柱」を指示する予定とも伝えられています。


===5月23日 日本経済新聞朝刊より引用===

社会保障3分野重点 首相きょう指示

菅直人首相は22日、6月末に決定する社会保障と税の一体改革でパートなど非正規労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大など3分野を「安心3本柱」と定め、重点的に取り組む方針を固めた。自民党政権時代に実現できなかった政策を前面に出し、政権の求心力回復を図る。23日夕に開く政府・与党の社会保障改革に関する集中検討会議(議長・首相)で検討を指示する。
 
首相が一体改革で重点分野を具体的に指示するのは初めて。
(1)中小企業支援策とセットにした非正規労働者への社会保険適用拡大 
(2)社会保障と税の共通番号導入で医療・介護・保育などの自己負担額を捕捉し合計に上限を設ける「総合合算制度」の創設 
(3)幼保一体化などの子育て支援
――を「安心3本柱」とする。
 
6月末の一体改革では消費税率引き上げの必要性にも言及する見通し。負担増への理解を得るために首相は30日の会合では第2弾として給付抑制などの「効率化3本柱」を指示する予定。計6本の柱の具体策は6月2日に検討会議の「改革試案」として示す。負担増、給付抑制とも与党内の調整は難航が必至だ。
 
パートなど非正規労働者への厚生年金と健康保険の適用拡大に関しては、加入要件を大幅に緩和する。「週30時間以上働く人」としている現在の基準を雇用保険の要件を参考に「週20時間以上」に緩める方向。対象者は300万~400万人に上るとの推計もある。
 
2007年に当時の自公政権が閣議決定した被用者年金一元化法案(その後廃案)では従業員300人以下の中小企業は除外するなどの条件を設けた。このため対象者は10万~20万人だった。
 
「効率化3本柱」では、医療、介護、年金などで社会保障費抑制の具体策を指示する見込み。外来患者の窓口負担に一定額を上乗せする制度や年金の支給開始年齢引き上げなどが浮上している。

=== 引用終わり ===

厚生労働省の年金改革案

厚生労働省が政府の「社会保障と税の一体改革」で実現を目指す年金制度改革案の全容が5月20日に明らかになりました。

改革案の骨子は、次の通りです。

1.現行制度の改善

(1)働き方の選択に影響を与えない制度にする
 ①短時間労働者の厚生年金への加入
 ②働く60~64歳の年金減額緩和
 ③産前・産後も厚生年金の保険料を免除

(2)厚生年金と共済年金の一元化
 ①公務員、私学教員も厚生年金に加入
 ②保険料率や給付要件を厚生年金にそろえる

(3)最低保障機能の強化
 ①受給資格を得られる期間を短縮
 ②低所得者の基礎年金額を加算

(4)能力に応じた負担を求める
 ①高所得者の基礎年金額を減額
 ②高所得者の厚生年金保険料の上限引き上げ

(5)年金財政の持続可能性の確保
 ①基礎年金国庫負担二分の一の維持
 ②支給開始年齢の引き上げを中長期的に検討
 ③デフレ経済下での総合調整策の検討

2.新しい年金制度の方向性(一定準備期間が必要)

(1)所得比例年金(社会保険方式)
 ①職種を問わず、全ての人が同じ制度に加入
 ②所得が同じならば、同じ保険料、同じ給付
 
(2)最低保障年金(税方式)
 ①高齢期に最低限受給できる額を明示


1.現行制度の改善では、共済組合を原則廃止して厚生年金保険制度に一元化することを明示した点は大いに評価できますが、その他は小手先の改善案ばかり並んでいる印象をぬぐえません。また、基礎年金国庫負担二分の一の維持というのは、福祉目的税化した消費税の導入ということも当然念頭にあると見なければなりません。現行のままの賦課方式で行くか、積立方式を中心にした制度に改めるかという明々白々な論点を「デフレ経済下での総合調整策の検討」などとお茶を濁している点、いまさら何を検討するのかと言いたいです。

2.新しい年金制度の方向性では、政府及び与党の基本方針がないためにこの程度の素案しか出しようがないのでしょう。具体的な枠組みを構想するためには、所得が同じならば同じ保険料、同じ給付と言っても、所得を一元的に把握する制度が未だ手つかずの状態です。また、最低保障年金を実施するためには、当然税制度にも踏み込んで行く必要がありますが、百年に一度の大不況に震災が加わったしまった状況で、消費税の大幅引き上げが可能とはとても思えません。小生は、所得税の累進性を強める方が良いかと現段階では考えています。ただし、それには条件があって、それは、仕事なり、商売なりで大金を稼ぎ、多額の所得税を納めている人は、嫉妬されず、尊敬の対象になるという文化を根付かせることです。金持ちに対する嫉妬は、税及び年金に対する基本知識の不足に起因していると思われるものがあります。価値観の話は脇に置くとしても、一般的に税と年金の基本的なことも知らない人が多いのが現状です。税と年金の基礎の基礎は、義務教育の中学校でもう少し実践的に教育してはどうかと思うのです。

===5月21日 日本経済新聞より引用===

厚生労働省の年金改革案は働き方の多様化への対応で具体策を盛り込んだ。パートなど非正規の労働者の厚生年金の加入条件を緩め、週20時間以上に広げる。働く女性の産休中の保険料を免除し、子育てを支援する。高所得の会社員の保険料負担は引き上げる。高齢者については高所得者の年金は減額する一方、低所得者の年金は加算する。

改革案は現在の年金制度について「労働時間や収入によって適用が変わり、就業行動や事業主の雇い入れに影響を与えている」と指摘。「働き方・ライフコースの選択に影響を与えない制度」を目指すと打ち出した。

「3号問題」対応先送り 
具体的には厚生年金の加入要件を緩め、非正規労働者の加入を促す。現在は週30時間以上働く人としている対象を雇用保険と同じ週20時間以上に広げる方向だ。ただ、企業の保険料負担が増えるので実現には曲折も予想される。
 
出産・育児期の女性への支援策も拡充する。現在は育児休業中だけとしている厚生年金の保険料の免除期間を産前・産後の休業期間まで広げる。
 
夫が会社員の専業主婦である「3号被保険者」をめぐる問題では対応を先送りする。新たな保険料負担は求めない。
 
高所得の会社員には負担増を求める。厚生年金の保険料は報酬に応じてかかる仕組みで、現在は月額報酬が60万5千円以上だと保険料が月額約9万9千円で頭打ちとなる。この上限を引き上げ、保険料負担を増やす。
具体策を示さず、方向性を示すにとどめた項目も少なくない。例えば、年金受給資格を得るのに必要な期間(現在は25年)について、厚労省は10年に短縮する案を検討しているが、「短縮することを検討する」との表現にとどめた。
 
低所得の高齢者の基礎年金は、定額か定率での加算を検討する。厚労省内では定額で1万6000円程度、定率で25%の加算案が軸だ。いずれも民主党の議論が収束してないため数字を明記しておらず、財政への影響は分からない。

給付抑制は踏み込み不足 
民主党が掲げた月額7万円の最低保障年金の創設は「最低限これだけは受給できるという額を明示」という表現にとどめ、年金水準に触れていない。導入に40年かかる長期課題と棚上げした印象は否めない。
 
現役世代の負担増を和らげるための給付抑制策は踏み込み不足だ。高所得の高齢者の基礎年金(40年加入で月約6万6000円)を最大で半減する案を掲げたが、高所得者とみなす収入基準や減額でどれだけの給付抑制効果が出るのかといった肝心の点は不明だ
 
給付抑制効果が大きい支給開始年齢の引き上げも検討課題という位置付けにとどまる。長期的に年金財政をどう安定させるかの道筋は見えない。

=== 引用終わり ===
 

各種助成金の概況

5月17日に城北能力開発センターで開催された中小企業福祉事業団の定期研修会「平成23年度 助成金改正のポイント解説」に出席してまいりました。これを機会に、各種助成金の現状を簡単にまとめてみます。

現在制度として存続している各種助成金は、便宜上、1.雇用維持関連の助成金、2.正社員化関連の助成金、3.起業関連の助成金、4.教育関連の助成金、5.育児関連の助成金、6.高齢者関連の助成金、7.障害者関連の助成金、8.介護関連の助成金、9.建設業関連の助成金、10.時短・健康診断関連の助成金、及び、11.地域関連の助成金に整理できます。

このうち、1.雇用維持関連の助成金、及び、2.正社員化関連の助成金が助成金の支給要件、必要書類の量及び難易度といった点で現在最も一般的に支給されるようになってきています。この2つに次ぐのが4.教育関連の助成金であり、さらに5.育児関連の助成金及び6.高齢者関連の助成金も比較的頻繁に使われています。これらに対して、3.起業関連の助成金は、支給要件が年々厳しくなる一方です。10.時短・健康診断関連の助成金などは、雇用の確保が最大の問題になっている昨今のご時世に時短など言ってはおられないということなのか、11.地域関連の助成金とともに後退傾向にあり、8.介護関連の助成金に至っては壊滅状態と言われているようです。


1.雇用維持関連の助成金

(1)中小企業緊急雇用安定助成金: 中小企業向けの休業・教育訓練に伴う手当を補助。
(2)雇用調整助成金: 大企業向けの休業・教育訓練に伴う手当を補助。
(3)労働移動支援助成金: 労働者の再就職支援のための助成金。


2.正社員化関連の助成金

(1)特定就職困難者雇用開発助成金: 高齢者・障害者向け助成金。対象を東北・関東大震災被災者にも拡大した。
(2)中小企業均衡待遇・正社員化助成金: パート・契約社員向け、その処遇を改善を行った場合に支給される助成金。
(3)試行雇用奨励金: 必要書類も少なく、2週間で支給される助成金。
(4)若年者等正規雇用化特別奨励金: フリーターだった若者を正社員にした場合に支給される助成金。(3)とセットになる場合が多い。
(5)派遣労働者雇用安定化特別奨励金: 派遣労働者を正社員にした場合に支給される助成金。
(6)3年以内既卒者 トライアル雇用奨励金: 東北・関東大震災被災者については増額措置。
(7)3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金: 東北・関東大震災被災者については大幅増額措置。


3.起業関連の助成金

(1)中小企業基盤人材確保助成金: 起業・異業種進出に際して、人材を雇用した場合に支給される助成金。成長分野と判定される事業のみ支給対象となる。
(2)受給資格者創業支援助成金: 基本手当受給者が受給できる助成金。
(3)中小企業人材確保推進事業助成金: 成長分野と判定される事業のみ支給対象となる。
(4)地域雇用開発助成金: 地域の大規模創業に対して支給される助成金。
(5)通年雇用奨励金: 寒冷地域で季節雇用外まで継続して雇用した場合に支給される助成金。


4.教育関連の助成金

(1)中小企業緊急雇用安定助成金、雇用調整助成金: 休業した上での教育訓練に対して上乗せ支給される助成金。
(2)緊急人材育成支援事業: 職業訓練事業に携わる民間校に対する助成金。
(3)実習型雇用助成金: 試用期間と教育訓練がセットになった助成金。OJTに対しても支給する。
(4)キャリア形成促進助成金
(5)求人セット型訓練
(6)職場適応訓練費
(7)均衡待遇・正社員化奨励金: パート・契約社員の処遇改善の一環としての教育訓練に対して支給される助成金。
(8)建設労働者緊急雇用確保助成金: 建設業が新規事業を始める上での教育訓練に対して支給される助成金。
(9)既卒者育成支援奨励金: 成長分野の教育訓練付き採用助成金。入社後5年以内が対象。
(10)成長分野等人材育成支援事業奨励金: 中途採用に対する教育訓練についても支給される助成金。


5.育児関連の助成金

(1)両立支援レベルアップ助成金など
(2)東京都中小企業両立支援推進助成金: 東京都独自の総合的な育児支援助成金。


6.高齢者関連の助成金

(1)定年引上げ等奨励金: 65歳以上の定年延長制度を導入する場合に支給される助成金。
(2)高年齢者職務拡大助成金: 70歳以上まで働ける制度及び職務拡大を導入する場合に支給される助成金。
(3)高年齢者雇用開発特別奨励金: 65歳以上の方の新規雇用に対して支給される助成金。
(4)中小企業高年齢者雇用確保充実奨励金: 団体の高年齢雇用対策助成金。

以下省略

社会保障協定とは何か

1.社会保障協定とは何か

 例えば、日本企業に籍を置く日本人従業員Xが米国の子会社に出向しているような場合において、Xは放っておくと日本の厚生年金保険の被保険者として保険料を負担すると同時に米国の社会保険制度にも加入して保険料を負担することになります。社会保障協定とは、このような二重加入の防止を目的として2国間の協定に基づいて発効する制度です。社会保障協定を締結した2国間では、就労地である国の制度が優先され、原則として就労地の制度にのみ加入することになります。但し、例外的に一時的な派遣の場合には、派遣元の国の制度にのみ加入することとしています。原則で行くか例外措置になるかの分かれ目の目安は、5年とされています。当初から派遣期間が5年以内の場合、派遣先の国の社会保障には加入せず、上記Xの例でいえば米国滞在中も厚生年金の被保険者を続けます。派遣期間が5年を超える場合、又は何年になるかはっきりと決められない場合は、原則通り派遣先の制度にのみ加入します。

 社会保障協定を締結するもう一つの目的として、短期滞在による保険料の掛捨て防止のために加入期間の通算が行えるようにするということが挙げられます。協定の内容によっては加入期間の通算ができない場合もありますが、米国を始め多くの場合、一方の国の年金制度の加入期間のみでは受給資格期間を満たせない場合に、他方の国の年金制度の加入期間を一方の国の加入期間とみなして受給資格期間に通算することが認められています。とは言っても、通算された加入期間に応じて計算された年金が一方の国からまとめて支給される仕組みではなく、一方の国の実際の加入期間に応じて計算された年金額が一方の国から支給され、他方の国でも同様に受給資格期間の通算が行われて、受給資格を満たせば、他方の国で実際に加入していた期間に応じて計算された額の年金が支給されることになります。


2.国民年金の場合

 国民年金の第1号被保険者が住所を協定相手国に移すと、国民年金の強制加入被保険者である第1号被保険者ではなくなります。一方、相手国内で事業活動を行った場合、外国人であっても一定の要件に該当すれば相手国の年金制度に加入することになります。但し、その事業活動が5年以内の一時的なものである限り、相手国の年金制度への加入が免除されます。


3.厚生年金保険の場合

 厚生年金保険の場合、協定の本人への適用は前述のとおりです。厚生年金保険の被保険者によって生計を維持する20歳以上60歳未満の配偶者は、居住地にかかわらず、国民年金の第3号被保険者です。従って、相手国に派遣された者が引き続き厚生年金の被保険者である限り、その配偶者が、相手国にいるか日本にいるかにかかわらず要件に該当すれば、第3号被保険者になります。

 また、相手国に派遣された者が原則通り相手国の年金制度のみに加入することになった場合であっても、その配偶者は、就労していなけらば、相手国の年金制度に加入する義務はありません。配偶者は、日本に居住していれば国民年金の第1号被保険者となります。相手国に居住しており、かつ日本人であれば、国民年金の強制加入被保険者ではなくなり、被保険者になりたければ任意加入することになります。

 なお、共済年金のうち、国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合の組合員が相手国へ派遣される場合は、派遣期間にかかわらず、相手国の年金制度への加入が免除されます。一方、私立学校教職員共済の加入員が相手国へ派遣される場合の取扱いは、厚生年金保険の被保険者の場合と同様になります。


4.社会保障協定の現状

 社会保障協定は、「社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例に関する法律」の施行が平成20年(2008年)4月1日からも分かる通り、比較的新しい制度です。2011年3月末現在我が国との間に社会保障協定を締結している国は以下の通りです。

ドイツ、英国、韓国、米国、
ベルギー、フランス、カナダ、
豪州、オランダ、チェコ