交差点で衝突、バスの6人死亡 三重

昨日、少々引っかかったのは、三重県亀山市で起きた交通事故の報道です。三重県亀山市と言えば、近年は家電大手のS社の工場が液晶パネルを国内生産していることで、名を馳せています。大企業による「生産拠点の海外移転には要注意」と言うのがかねてからの持論であったので、この家電大手の姿勢には非常に好意的な感情を抱いています。

しかし、今回の亀山市で起きた交通事故で亡くなった6人の方々の国籍は、いずれもフィリピンなのだそうです。そして、亀山市にある派遣先の液晶テレビの部品製造工場に出勤する途中で事故にあったと報じられています。亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、お怪我をされた方の早期の回復を願う気持ちは国籍を問うものではありません。

ただ、たまたま起きた交通事故の被害者が外国人労働者であったという事実から、その背景にどのくらいの人数の外国人労働者が亀山で働いているのだろうと思ってしまいました(外国人への労働許可は現在どのような基準で与えているのかという点も含めて)。また、早くも忘れられていることなのかもしれませんが、去年の暮もおしつまった12月28日、厚生労働相の諮問機関労働政策審議会は派遣法改正に向けた報告書を当時の長妻昭厚生労働大臣に提出し、報告書は製造業の派遣原則禁止及び登録型派遣の原則禁止という企業にとっては厳しい内容になっていたのですが、今回被害にあわれた外国人労働者の方々は、いずれも派遣労働者と言う範疇に含まれる労働者だったようで、この問題も絡んできます。

=== 日本経済新聞電子版より引用 ===

交差点で衝突、バスの6人死亡 三重、22人重軽傷
2010年11月28日

28日午前7時45分ごろ、三重県亀山市の県道交差点で、マイクロバスと大型トレーラーが衝突、マイクロバスに乗っていた工場従業員アダロ・アルマ・ドラさん(33)=亀山市=らフィリピン国籍の男女6人が死亡した。2台の運転手2人と、フィリピン人従業員20人が負傷し病院で手当てを受けた。県警によると、このうち10人が重傷。

県警は自動車運転過失致傷の疑いでトレーラーの運転手森脇隆夫容疑者(45)=大阪府松原市=を現行犯逮捕。衝突の際にトレーラーが横転し森脇容疑者も右肩を骨折するなど重傷を負っており、県警は治療のため釈放し同過失致死傷容疑に切り替えて捜査している。亀山署によると、現場は国道1号沿いに通る側道と県道が交わる信号のない交差点。マイクロバスは県道を直進しようとして、トレーラーと出合い頭に衝突したとみられる。トレーラー側に一時停止義務があったが、現場にブレーキ痕はなかった。亀山署が詳しい状況を調べている。

マイクロバスは人材派遣会社「エーワンテック」(同県松阪市)の所有。フィリピン人従業員26人は同社に所属し、亀山市にある派遣先の液晶テレビの部品製造工場に出勤する途中だった。

トレーラーは石材を入れたコンテナを積んで大阪から長野県大町市に向かう予定で、森脇容疑者は事故当時の状況について「休憩するために側道に入った。気付いたら目の前にバスがあった」などと説明している。現場はJR亀山駅から北西に約2キロで、山中を通る県道。〔共同〕

=== 引用終わり ===

派遣労働者


移民政策の困難さ

企業年金受給権者の給付減額の問題

月刊社会保険労務士(2010年11月号)に横浜国立大学経営学部教授山口修氏の「企業年金受給権者の給付減額をめぐって」という記事が掲載されています。広義の公的年金制度の3階部分にあたる企業年金の非常に重要で核心的な問題です。日本航空及びNTTと言う社会になくてはならない公共部門を担う大企業において起きた事例を山口氏の記事から引用しつつ、企業年金の給付減額問題の要点をまとめておきたいと思います。


1.企業年金の種類

我が国の主な企業年金制度は、厚生年金基金、適格退職年金、確定給付企業年金及び確定拠出年金です。少し古い統計ですが、平成19年(2007年)の数字で、次のようになっています。
(1)厚生年金基金 642基金 5250千人
(2)適格退職年金 38885件 5060千人
(3)確定給付   2384件  4780千人
(4)確定拠出   2357件  2424千人

このうち(2)は、平成24年3月末で廃止されることが決まっていますので、大幅に減少していると思われます。(3)は平成14年4月に施行された確定給付企業年金法、(4)は平成13年10月に施行された確定拠出年金法によってそれぞれ新たに制定された企業年金制度です。

これらの新たな企業年金制度が制定された背景は、第一に、少子高齢化の進行により、企業年金も給付と負担の見直しが必須となってきたことが挙げられます。第二に、産業構造の変化に伴う大幅な企業再編が頻発するようになり、企業再編の際にも柔軟に対応できる企業年金の設計を担保しておく必要性が高まったことがあります。第三に、低成長経済に移行した結果、運用環境の非常に厳しい状況が続いており、運用リスクを企業と従業員がどのように負担していくかという課題に応える要請が高くなってきたことです。第四に、会計基準の国際化、とりわけ退職給付会計の導入により、企業年金が経営の重要な課題となってきたことです。すなわち、退職給付会計では、厚生年金基金の代行部分を企業の債務として認識する必要があるため、企業にとっては大きな負担となってきたのです。


2.確定給付企業年金法の概要

さて、ここからは話を(3)確定給付企業年金に絞り込みます。というのは、今日企業年金制度として確定給付企業年金(以下DBと言います)制度を採用する企業が増える傾向にあること、前述の日本航空及びNTTの採用している制度もDBだからです。

確定給付企業年金法の最大の目的は、「受給権の保護」とされています。その根幹をなすものが「積立義務」であり、これは制度継続中及び終了時にそれぞれ必要な準備金の確保を要求し、積立不足があれば一定期間内に積立てることを要請しています。この他、受給権保護のために「受託者責任の明確化」及び「情報の開示」について規定しています。

確定給付企業年金法は、加入者期間20年以上の者には年金給付を行うことを義務付けており、年金支給期間は、5年以上の有期であれば足り、必ずしも終身年金にする必要はありません。選択一時金は、保証期間の年金の現在価値の範囲内で可能です。また、脱退一時金は、加入期間3年以上で支給することが必要であるため、適格退職年金に見られるような定年退職者のみを給付の対象にするような制度は認められていません。給付の形態として、定額制、給与比例、ポイント制の他、キャッシュバランスプランの採用も認められています。


3.DB受給権者の給付減額の要件

給付の減額は、対象が加入者に限られる場合と受給権者等に及ぶ場合が考えられます。受給権者等の給付減額は、確定給付企業年金法の目的からして、原則は禁止であり、例外的に認められるための要件として、「減額しなけらば確定給付企業年金の事業の継続困難になること、その他省令で定める理由がある場合でなければならない」としています(確定給付企業年金法施行令4条)。具体的には、次の2つの場合に限られるとされています。

(1)給付減額がやむを得ないほどの経営悪化
(2)給付減額しないと事業主が掛金拠出が困難になるほどの掛金負担の大幅上昇が見込まれること


受給権者等については、加入者について認められている企業再編による制度の統合や他制度への移行を理由とした減額が認められていません。しかも、これらの要件に加えて、受給権者等の同意について次のように定めています。

(1)受給権者等の3分の2以上の同意を得ること
(2)受給権者等のうち、希望する者には最低積立基準額相当額を一時金として支給すること


4.日本航空とNTTの給付減額

山口氏の記事によれば、日本航空の場合、加入者からの3分の2以上の同意を取り付ける目途は立ったものの、受給権者等からの同意取り付けは難しかったため、事実上、日本航空の企業年金だけを対象とする3分の2以上の同意なしで給付の減額を可能にする特別立法の制定が検討されたり、同意が取れないのであれば、年金基金を解散するという企業再生機構の方針が打ち出されるなどすったもんだの末、ようやく3分の2以上の同意に漕ぎ着けたのです。

一方、NTTの場合、退職者の83%からの同意は得ており、この点は要件を満たしていましたが、給付減額がやむを得ないほどの経営の悪化があったのかという点が問題になりました。NTTは「給付減額がやむを得ないほどの経営の悪化は見られない」として申請を不承認とした国を相手取り、行政の過剰介入であるとして裁判で争うことになりました。本年6月9日最高裁判決は、次のような理由でNTTの上告の訴えを退け、NTT側の敗訴が確定しました。

(1)給付減額は、企業の自主性、労使の合意のみに委ねられているのではない。なぜなら、確定給付企業年金法の目的は、受給権の保護にあるから。
(2)そもそも受給権者の給付減額は、母体企業の経営状態の悪化などにより企業年金を廃止するという事態を避けるため、限定的な要件の下で認められていること。
(3)受給権者の年金額を減らして、株主の利益配当を優先する姿勢が見られること。

そうだとすれば、8割以上にのぼるNTTの受給権者の方々が給付減額に同意した理由とは一体何だったのだろうと疑問がわいてきます?

EU金融危機_ギリシャに続きアイルランドも

PIIGSと通称されるEUの問題国のうち、ギリシャ(Greece)に次いでアイルランド(Ireland)の危機がにわかに顕在化してきています。アイルランドとはいかなる国なのでしょうか。英国の隣の島国で、4世紀から5世紀にかけてのゲルマン民族の大移動前から大ブリテン島を含むこのあたり一帯に住みついていたケルト民族(Celts)の子孫で、大移動によって大ブリテン島に侵攻してきたアングロサクソン族(Anglo-Saxon)により、辺境に押しやられた人々です。

アイルランドには、3つの首都があると言われます。首都ダブリン(Dublin)の他、対岸のリヴァプール(Liverpool)及び米国ボストン(Boston)ですが、これらの地を中心に多くの移民を送り出していることによるものです。

さて、アイルランドの経済規模ですが、多くの移民を出している反面、本国の人口は4.5百万人(2008年)ほどで、名目GDPは2008年で1857億ユーロ(約21兆円)です。ちなみに、我が国は人口120百万人、2010年の名目GDP見通しは475兆円です。

アイルランドの財政危機は、金融機関の債務を一律保証したことに起因すると言われています。金融危機前、金融部門は借入金に過剰に依存してバブル経済をもたらしました。バブル崩壊後、アイルランドの金融機関は深刻な損失を負ったため、政府は金融機関を救済し、無担保の上位債務すべてを保証する施策を行いました。これまでアイルランド政府は、財政赤字を削減するために福祉手当や公務員賃金の削減などで今年の財政赤字の対GDP比率が昨年の14%から11.5%に下がると見込んでいました。しかし、国有化したアングロ・アイリッシュ銀行への公的支援が急増しており、この支援を統計上の政府債務に含めるか欧州委員会と協議中ではありますが、含めるとGDP比が約20%に上昇する(アラン・アハーン財務相特別顧問)とも最悪32%になるとも言われています。

不動産金融専業のアングロ・アイリッシュ銀行は2009年1月に破綻、国有化されました。今年上期に同国企業史上最悪の赤字(82億ユーロ=約8700億円)を計上。長期的な損失処理コスト予想は当初の220億ユーロから250億ユーロに増加しています。これだけでGDPの1割超となりますが、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は「最大350億ユーロに膨らむ恐れがある」と指摘し、同国の国債格付けを8月下旬「ダブルAマイナス」に1段階引き下げています。


===時事通信より引用===

アイルランドに緊急融資へ=最大10兆円-EU

【ブリュッセル時事】財政・金融危機に直面しているアイルランド政府は21日、欧州連合(EU)に緊急融資を正式に要請した。これを受けてEU加盟国財務相は電話による緊急協議を行い、ユーロ圏および欧州の金融安定のため、同国を支援することを決めた。EUによるユーロ圏諸国への緊急融資はギリシャに次ぎ2例目。アイルランド支援をめぐっては、EUは18日から国際通貨基金(IMF)を交えて本格的な協議を行っている。融資額は近く固まる見通しで、最大900億ユーロ(約10兆2600億円)に上るとみられている。今春のギリシャへの緊急融資は1100億ユーロだった。

EUの声明によると、アイルランドへの支援はユーロ圏諸国向けに整備した最大7500億ユーロの緊急融資制度を活用する。同制度の発動は初めて。また、英国とスウェーデンはこれとは別に2国間融資を供与する意向。IMFのストロスカーン専務理事も21日声明を発表し、「複数年の融資を含めた支援努力に参加する用意がある」と語った。

アイルランドは、金融危機下で経営が行き詰まった大手銀行を国有化したことなどが重荷となり、財政状況が悪化している。同国の金融機関は今後、一層の資金繰り難が懸念されており、緊急融資は、こうした問題への対応に充てられる。(2010/11/22-10:09)

===引用終わり===

メンタルヘルス、最近の傾向と対策

 11月19日に銀座 Blossom Hall で開催された中央統括支部必須研修「メンタルヘルス(社労士としてどうかかわるか)」を聴講してきました。講師は、福武書店を経て臨床心理士をしておられる廣川進先生でした。


1.過労自殺及び過労による精神障害の労災判断指針

 一般に「自殺」は労働者本人による死亡であるため、労災認定されないのが原則です。しかし、「業務による強度の心理的負荷」を原因として重度のうつ病等(気分障害)や重度のストレス障害などを発症していた場合は、その病態としての自殺行為が出現する蓋然性が高いと医学的に認められることから、遺書の有無又は内容に関わらず、原則として業務起因性を認め労災認定される事例が増えています。

(1)対象となる精神障害は、国際疾病分類(ICD-10)で「精神及び行動の障害」に分類されている精神障害です。
(例)うつ病等の気分(感情)障害、ストレス関連障害、神経症性障害、精神分裂病、分裂病型障害、妄想性障害、症状性を含む器質性精神障害など

(2)次に掲げる3つの要件を全て満たす場合に労災認定されます。
① (1)の精神障害が実際に発症していること
② 発症前6箇月間に、客観的にみて、その精神障害を発症させるおそれのある業務による強度の心理的負荷が認められること
③ 業務以外の心理的負荷及び個体側要因によりその精神障害が発症したとは認められないこと


2.誰でもかかり得るうつ病と実務における対策

 今日では、10人に1人がうつ病を患っているといわれ、心の風邪、捻挫であり、誰もがかかり得る病気という認識です。だからこそ、初動的な職場におけるうつ病対策は、管理職の必須能力になってきています。いわゆるうつ病の場合、外に現れやすい、従って医学や心理学の知識に乏しい管理職にも注意していれば気付くことができる点は、次の3点です。

(1)不眠---入眠困難、早朝覚醒
(2)食欲低下
(3)自責感

 この3つが揃って観察されたら、うつ病を疑い、それとなく医師の診断を勧めます。この段階ならば、医師は内科の家庭医で十分です。なぜなら、医師がうつ病の可能性があると判断すれば、当然専門医の受診を勧めると考えられるからです。


3.非定型うつ病

 問題をさらに困難にしているのは、2で述べたような古典的なうつ病には分類できない症状を発症する非定型うつ病というものも存在していることです。非定型うつ病では、過眠、過食甘食、体重増、他責他罰、社内にいるときだけ抑うつなど、古典的なうつ病とは対照的な症状を見せます。

 このように、多様化するうつ病に対して、会社のできる対応として、次のような点が挙げられます。

(1)個別対応、柔軟な対応
(2)問題の深刻度を見極めたうえでの対応
(3)健康管理と労務管理を混同しない
(4)必要に応じて、ときには親や保証人などを巻き込む

 複雑化し、深刻化する心の健康管理については、今後上記のような対応能力をもった人材を社内で育成する必要性があります。適性のある人材を選定し、中長期的に担当させることを検討するべきです。

日本航空が整理解雇へ

2010年11月16日の日本経済新聞Web版で、会社更生法が適用され再建途上にある日本航空の整理解雇について報じています。整理解雇についてまとめておきたいと思います。

整理解雇とは、企業経営上の必要性に基づいて行われる人員削減のための解雇のことです。解雇とは、使用者が一方的な意思表示によって行う労働契約の解約であり、大きく普通解雇と懲戒解雇とに分類されますが、整理解雇は懲戒解雇ではないので普通解雇の一態様と考えられます。

労働契約法は、16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として、解雇に関する「権利濫用法理」の適用を明文化した規定を設けています。

さらに、整理解雇に関しては、判例で次のような点を検討すべきであるという判断の枠組みが形成されています。ただし、次の1から4の各事実について、その1つでも欠けた場合には、整理解雇は解雇権濫用にとなるとする「4要件説」があるのに対して、1から4の事実は、必ずしもそれが全てそろわないと法的な効果を生じない要件ではなく、事案ごとに個別具体的に事情を考慮して総合判断する際の要素に過ぎないとする「4要素説」に立った判例が存在しています。

1.人員削減の必要性があるか
2.解雇回避努力義務履行を尽くしたか
3.被解雇者選定の相当性
4.手続の妥当性

日本航空の事案に当てはめて考えてみると、1は会社更生法を申請した会社であり、被整理解雇者の人数などが常識的な線にとどまる限り、まず必要性ありと判断されると思います。2も希望退職を募ることを行ってきた結果、人数が目標に達しなかったという事実が前提としてあるので、要件を満たしていると判断されそうです。

問題は、3及び4で、3について組合側が相当性を問題にしているとみられます。3については、例えば勤続年数が長い者を対象にするのと短い者を対象にするのとどちらが相当か、また、正社員とパート社員のいずれを対象とするのが相当かなど、個別具体的に検討していくしかない問題です。4についても会社のやり方の一部に組合が反発しているようで、手続きの妥当性が問われることになりそうです。会社が組合に対し3箇月間に7回の団体交渉を行った事例について、会社は誠意をもって対応したと認めた判例があります。

=== 日本経済新聞より引用 ===

「時間ない」日航が整理解雇 労組反発

会社更生手続き中の日本航空が15日、雇用契約を強制的に解消する整理解雇に踏み切る方針を決めた。日航と企業再生支援機構は労働組合と協議を進める考えだが、一部の労組は強く反発。今後ストライキや訴訟に発展する可能性もある。混乱をどう収拾するのか、経営陣は難しいかじ取りを迫られている。
「予想していたよりも人数がずいぶん少なかった。しかし、もう時間がない」。希望退職の募集を締め切った9日深夜、日航幹部は険しい表情を浮かべた。
日航と管財人の企業再生支援機構は東京地裁に提出した更生計画案の中で、グループの社員数4万8714人(2009年度末)から約1万6000人を削減する方針を掲げた。このうち日航本体での削減目標は1500人。9月3日から全職種を対象に希望退職を募ったが、当初の締め切りでは「パイロット130人、客室乗務員140人の計270人が未達」(大西賢社長)だとして最終募集を実施。客室乗務員については対象年齢も引き下げたが、9日の締め切りではパイロットで110人客室乗務員で90人程度が足りなかった。
最終募集の期間中、パイロットの労働組合「日本航空乗員組合」からは「ワークシェアリングを検討して欲しい」といった要請も出ていた。しかし、経営側らは「対応できない数字だと判断した」という。

労使の溝は深い。「整理解雇を回避するため、最後までぎりぎりの検討を重ねた」(日航幹部)とする経営側。これに対し、客室乗務員の労働組合「日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)」の幹部は「当初から特定の人間を辞めさせようとする意図を感じた」と批判の声をもらす。
例えば客室乗務員の削減目標。日航は職種別の内訳を公表しなかったが9月の募集当初は、労使協議の場で「550人程度」と伝えていたという。それが、いつの間にか「実人数ではなく、稼働ベースの実態で判断する。目標は610人」という説明に変わったという。
稼働ベースとは月に一定時間の乗務があった人を「1人」として換算するやり方だ。客室乗務員は10月26日までに650人が応募。当初目標からいえば達成していることになるが、長期欠勤者が含まれているため稼働ベースで換算すれば470人にしかならない――。経営側の説明に、CCUは「納得がいかない」と不信感を募らせた。

また、乗員組合も経営側が一部のパイロットを乗務から外して個別面談を受けさせた手法を問題視している。「運航への影響を考え、安全面から外した」とする経営側に対し、乗員組合は反発。東京地裁に退職強要の差し止めを求める仮処分を申し立てており、徹底抗戦する構えだ。

労使問題は日航にとって長年のアキレスけんだが、ここに来て、その根深さが改めて示されている。再建に向けて更生計画案の実効性が問われるなか、問題が社内で波及し、労使の信頼関係が損なわれるような事態になれば、再建の行方にも黄信号がともりかねない

=== 引用終わり ===