面白法人カヤックの人事管理制度

1.賃金制度

同社の人事管理制度のうち、賃金制度、中でも「サイコロ給」という手当は同社の面目躍如というところです。

柳澤代表に拠れば、同社の賃金制度は、基本給、職能給、山分給及びサイコロ給からなります。

基本給:年齢など基本的な社会人としてのスキルによって決まります。勤続年数が増えれば自然に上がっていくようになっていて、組織も社員も年数をへてお互いに成長することを前提とした給与です。

能力給:職種に応じた手当で、各自のパフォーマンスによって決まります。自分にしかできないこと、自分の市場価値を知ってもらうことも大事という考え方を背景に決定されるそうです。

山分給:年2回のボーナスです。一つの組織にいる以上、組織が好調ならその喜びはみんなで味わいたい。隣のプロジェクトの成功も一緒に喜ぶための給与です。ということから、個人個人の成果にあまり連動せず、会社としての利益を皆で分けようというような趣旨のようです。

そしてサイコロ給です。特注でつくったサイコロを、各自が毎月給料日前にふり、「(出たサイコロの目の数)%×基本給」が、給料の+αとして支給されまるというものです。その根底にある思想は、やはり人間が人間を正しく評価するというのは、なかなか難しいということを認めてしまって、そもそも完璧ではない他人の評価で暗い気持ちになるのはもったいない、資本主義のものさしで測れない価値だってあるということを象徴的に提示しようということで、評価に余白を設けておいて、そこの部分は運を天に任せてみて、サイコロを振った出た目で決まるくらいでもいいんじゃないか、ということなのだそうです。

そして、その評価内容は代表のものも含めて全て公表しています。そもそも、給与の仕組みで「これが完璧」というものはないと思うので、社員が納得するかどうかが重要と考えているのです。

給与、手当の定義又は意義を明確にして、どういう思想で支払っているのか社員に分かるようにしておくことは非常に重要なことですが、意外にできていない会社が多いのではないでしょうか。また、賃金分配の前提にある人事評価を全て公表するというのは、さらりと言っていますが普通の会社にできることではないと思われます。こうする事によって、理念に共感できない社員、会社の方針に方向を合わせられない社員が白日の下に曝されることになるのでしょう。


2.社員の権限と損益管理

社員には「自由に何かをつくることができる権限」は無限に与えられていますが、予算を自由に使う権限などはもちろん与えられてはいません。

また、人件費の管理は、人の階層を3段階に分け、どの階層の人がどのプロジェクトに何%コミットしているかを計算することによって、プロジェクトごとの人件費を計算するそうです。

具体例をあげると、カヤック社ではほとんどの社員が複数のプロジェクトを掛け持ちしていて、ある人がA、B、Cの3つのプロジェクトを掛け持ちしているとしたら、自分の能力配分をAに50%、Bに30%、Cに20%というように決めます。この能力配分の%がコミット率です。

3箇月に一回、チームの編成を変えており、伸びているプロジェクトに人を増やしていくのですが、特に人事異動というものはなく、同プロジェクトにかかわる人数と%で増やします。Cのプロジェクトが伸びているので、あの人の20%をCにくださいとか、そのように人を増やしていくそうです。


3.組織論

カヤック社の資産は人ですが、クリエーターというかなり特殊な専門家であり、費用の大部分は彼らに対する人件費が占めています。それゆえに、前述のようなユニークな人事管理制度が生み出されてきたのでしょう。

しかし、ここで問題になるのは、十年単位で見れば、クリエイターの価値は将来必ず上がっていきます。優秀なクリエイターを集めて、切磋琢磨して、働きやすい環境を整えていければ、強い組織であり続けられるはずですが、今まで以上にクリエイターが一人でも食べていけるようになる時代が来るかもしれません。その結果、組織の価値が下がる可能性はあるということを柳澤氏は指摘しています。

そのような状況が現実的になった将来、クリエーターにとって組織に残ることの意味について、柳澤代表は、「ブレーンストーミングなどによるアイデアの相乗効果が生まれる環境をどのように整えていくかが重要だと考えています。自分一人でつくるよりも、組織で一緒につくることで、自分の力以上のものが出てくることを感じられれば、組織を選ぶのではないかということです。また、周囲に自分以上にクリエイターとしてがんばっている人がいるので刺激になるという状況があれば、組織にいる意味は十分にあるでしょう。そのために大事なことは、リーダーがクリエイターであり続けることだと思います。」と述べています。

組織は何のために存在するのか、突き詰めると柳澤氏の言うとおりだと思います。確かに分業化のメリットなどもあるのだと思いますが、そうではなくて、他者の考えを聞き、他者からの刺激を受けることによって一人で仕事をする以上の成果や成長がなければ、組織を作ることの意味は非常に小さいのかもしれないと思います。まあ。人間なかなか一人では、自分自身を管理し、がんばれないものでもありますが...。

面白法人カヤックの経営理念

こういう記事を読むと、世の中には面白いことを考える男がいるものだと心底感心してしまいます。おっさんになった証拠なのかもしれません。しかし、伝統的な経営と言うことからはみ出した感じの若い経営者の考えは、何かの参考になるかと思い、同社代表柳澤大輔氏の語録を取り上げてみました。

カヤックと言う会社ですが、「1998年、合資会社カヤックとして創業し、2005年に事業を引き継いで株式会社化。代表取締役は柳澤大輔、貝畑政徳、久場智喜の3名。鎌倉に本社を置き、経営理念は「つくる人を増やす」。カヤックオリジナルのサービスとクライアントサービスを軸にユーザー参加型のECサイトやコミュニティサイトなど、さまざまなWebサイトの企画・開発・運営を行う。」ということです。


1.面白いアイデアを生み出す仕組み

柳澤氏によれば、社員の半分がウェブ技術者で、アイデアを考えるという点では、全員がクリエイターなのだそうです。従って、とにかく面白いアイデアをたくさん考えて、形にしていくことが事業の中核と言うことのようなのです。

では、面白いアイデアをどうやって生み出すのか、その点について柳澤代表は

「アイデアは、すごいものを考えようとすると出てきません。大事なのは、すごくないものをとにかくたくさん出すこと。すごいアイデアを出す人というのは、その何倍もすごくないアイデアを出しています。とにかくたくさん出す。」といっています。

同社はブレインストーミング(Brain Storming)を多用するそうですが、そのやりかたとして3つの決まりごとを重要視していると言っています。

(1)とにかくアイデアの量を出す、
(2)とにかく相手を否定しない、
(3)とにかく相手の意見に乗っかる、の3つです。

「量を出すというのは、とにかく声に出して発言することです。量を出すとさっきまでは思いつかなかった意見が飛び出し、思わぬアイデアがひらめくことがあります。否定しないということは、否定されるとアイデアが出にくくなるからです。量を出すことが大事なのですから、否定してはいけません。そして、他人のアイデアに乗っかることも重要です。だれかのアイデアをさらにふくらませたり、そのアイデアをヒントにしてまったく違った案を出して、一つのアイデアを縦横無尽にかけめぐらせます。」

どうも、島国の人間と言うのは、国土や資源が限られていると言う事実を毎日突きつけられているせいか、小生も含めて潜在意識として量よりも質を重視する傾向が強いように思えるのですが、柳澤氏が言っていることは、アイデアの物量作戦の重要性です。


2.ブレインストーミングの効用と良い会社とは

柳澤代表は、頻繁にブレインストーミングをやることによって、社員のやる気が出てくるのだと言います。

柳澤氏は、よい会社というのは社員にやる気のある会社だと考えています。よい会社の指標としての社員満足度ということについて、代表は敢えて満足よりもやる気が大事と考えています。社員が満足しているということは、その会社の社員たちが現状で十分でこのままがいいということになります。柳澤代表によれば、これでは会社自体が止まってしまっていて、成長性も躍動感も感じることができないと考えているのです。

よく、「顧客満足」か「社員満足」かという議論がありますが、この議論はむしろ不毛な議論で、社員にやる気があって、「顧客満足」を高める方向に社員のやる気が向いているというのがあるべき姿なのだろうと小生も気付かされました。

ブレインストーミングの効用がどんな風に表れて来るのか、柳澤代表は次のように述べています。
「例えばどのようにしたらもっと会社は楽しくなるか? というブレストをみんなでします。出てきたアイデアを実際に採用するかしないかは、どちらでもよくて、実はブレストをやるだけで社員のやる気が全然変わってくるんですね。結果として、会社の雰囲気がすごくよくなります。会社のことを初めて自分のこととして考えたという経験が大事なんです。

確かにその通りと思う反面、出したアイデアが全然採用されない(何も変わらない)と言うことになれば、まじめに意見を言う人が次第に減っていくのではないかとも思います。このあたりは、制度の運用の仕方、リーダー達のリーダーシップに拠るところが大なのだろうと思います。

次に、発言できない人について、次のように述べています。これは、ふざけているようで結構実践的かなと小生などは思ってしまう方なのですが...

「発言ができないのには3つの理由があると思います。

1つ目は、心の中ではアイデアとか内容を思い付いているのに自信がなくて言えない場合です。言ってもしようがない、恥ずかしいというケースですね。この場合は、周りがどれだけフォローできるかが重要です。その人のアイデアを無視しないで、できるだけ拾ってあげる。ときには膨らませてあげる。これを繰り返すと、その人に自信がついてきます。
2つ目は、ほかのことを考えている場合。例えば、ブレスト中に「今日はとんかつが食べたいなあ…」なんて考えている場合です。こんなときは、無理をして建設的な発言をする必要はなく、「とんかつが食べたい」と発言すればいいんです。そこからアイデアが生まれることもありますから。会議室に置いてある新聞の見だしをそのまま言うのでもOKです。これも先輩や上司の方などブレストに慣れた人が手本を示してあげるといいですね。
3つ目は、本当に頭が真っ白になってしまう場合。そのようになったら、誰かの発言をオウム返しのように連呼するだけでも十分場があたたまって活性化してきます。そのほか、口で貢献できないと思ったら、とびきりに面白い格好でブレストに参加するというのでもいいですね! その格好について話しているうちにアイデアが出ることもあります。最初は同期だけとか、気兼ねしないメンバーだけでやるという方法もあります。いきなり変われと言っても難しいので、徐々に時間をかけてアイデアを出すことに慣れていきましょう。」


3.出されたアイデアをどのようにお金に換えるのか

こうして出されたアイデアを会社の収益にどうやって変えていくのか、その仕組みについては、あまり具体的に語られているとは言えませんが、至って正統的な手法をとっているように見受けられます。

つまり、実験的な段階とプロジェクト化する段階という2段階の判断基準があり、プロジェクト化したものに関しては、人件費などの原価を計算して、売上なども見て、しっかりと管理しているそうです。アイデアは誰もが出しますが、まずは新規事業チームを編成して実験的なサービスをつくり、それが成長するとプロジェクト化を検討するという仕組みで、プロジェクト化するかどうかの決定はリーダー層で行うとのことです。


沈黙は金の文化の中で育つ我々には、目から鱗のような話です。しかし、ものすごくないアイデアを物量作戦で出してこないと本当に他人の役に立つ又は興味を引く凄いアイデアはなかなか出てこないというのはわかるような気がします。また、物量作戦を実践するためのブレインストーミングの仕組みは、いいと思いました。

労働者派遣_偽装請負

1.派遣、請負及び出向

 一般用語として、あるいは意図的に、しばしば混同して使用される用語と思われます。ここで法律用語としての定義を整理しておきたいと思います。

 まず、派遣ですが、雇用契約は派遣元企業甲と派遣社員Aとの間に結ばれていますが、実態的な指揮命令関係は派遣先企業乙とAとの間に成立させ、かつ、乙とAとの間には雇用関係はないという法律関係です。甲と乙の間には、当然労働者派遣契約のような契約が締結されています。

 これに対して、乙とAの間にも雇用関係があるもの、即ち二重の雇用契約が成立しているのが「出向」です。典型的な例としては、親会社との雇用関係が継続しているまま、子会社に出向する場合です。

 それでは、請負(業務処理請負)とは何か、民法に条文があり、次のように定めています。

 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(民法第632条)。

 請負企業甲が発注企業乙に対し、その一定業務の処理を請負い、この請負業務を遂行するために、自己の雇用する労働者Aを発注企業の事業場において自己の指揮命令下に労働させることです。つまり、発注企業乙とAとの間には、指揮命令関係が存在しません。請負と派遣の違いは、労働者Aが雇用契約を締結している企業の指揮命令権の下で労働するか、雇用契約を締結している会社とは異なる企業の指揮命令権の下で労働するかと言う点です。


2.偽装請負

 偽装請負とは、形式的に請負の名目で請負事業者が注文者との間で契約を締結し、自己の従業員を注文者の事業場等において労働させるものの、実際には請負事業者が自ら当該従業員を指揮命令することはなく、注文者の指揮命令の下で労働に従事させることをいい、実質的に労働者派遣又は労働者供給事業にあたるものをいいます。

 このようなことが行われる主な理由は、労働者派遣契約の場合、労働者派遣法によって課されることになる様々な規制を回避することにあると思われます。

 偽装請負は、違法行為です。そこで、このような法律関係の効果について、諸説があります。

(1)無効説
 労働者派遣法は、そもそも我が国労働法体系で原則禁止とされている労働者供給事業を一定の要件を満たすことによって例外的に認めたものであるから、要件を満たさない契約は無効であるとする考え方です。

「(偽装請負は、)脱法的な労働者供給契約であり、職安法44条違反、労基法6条(中間搾取)違反という極めて強い違法性があり、公序良俗に違反するものであり民法90条によって無効である。」(松下プラズマディスプレイ事件 大阪高裁平成20年4月25日判決)

(2)有効説
 違法な労働者派遣であっても、労働者派遣法は行政取締規定であるから、これに抵触しても基本的には契約の効力に影響しないと言う考え方です。この見解に拠れば、違法な労働者派遣であっても労働者派遣法による罰則や行政的措置はさておき、契約自体は有効であると言うことになります。

 ちなみに、松下プラズマディスプレイ事件の最高裁判決(平成21年12月18日)が既にでており、高裁判決を否定しています。「しかしながら、労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべきである。そして、被上告人と(偽装請負業者)との間の雇用契約を無効と解すべき特段の事情はうかがわれないから、上記の間、両者間の雇用契約は有効に存在していたものと解すべきである。

 大阪高裁判決の特殊性は、偽装請負の違法性を強調して、労働者と偽装請負業者との間の雇用関係を民法90条違反で無効としています。その上で、偽装請負発注企業と労働者の間に実態的に(1)事実上の使用従属関係、(2)労務提供関係、(3)賃金支払関係があることをを認定し、両者の間には「黙示の労働契約」の成立が認められると言う理論構成を行い、「労働契約上の地位確認請求」を容認する判決で偽装請負労働者の保護を狙ったと思われます。しかし、この理論構成は、最高裁では支持されず、上記のような判断となり、さらに、(3)賃金支払関係などをの実態から、労働者と偽装請負発注企業との間の「黙示の労働契約」の成立は否定されたのです。

労働者派遣

1.派遣規制強化の動き

 昨年暮もおしつまった12月28日、厚生労働相の諮問機関労働政策審議会は、派遣法改正に向けた報告書を長妻昭厚生労働大臣に提出しています。派遣規制強化を謳ったこの答申は、企業への影響を緩和するため、施行までに最大5年の経過期間を置いているものの、製造業への派遣原則禁止及び登録型派遣の原則禁止という企業にとっては厳しい内容になっているといえます。

答申の概要
(1)登録型派遣:原則禁止
(2)製造業派遣:常用型を除き原則禁止
(3)日雇い派遣:原則禁止
(4)均等待遇:派遣労働者と派遣先社員の待遇を同じようにするような規定を設ける
(5)マージン率の情報公開:派遣料金の改定時などに派遣会社は料金を明らかにする
(6)違法派遣における直接雇用の促進:本人が希望すれば直接雇用に切り替えられる制度の創設
(7)法律の名称及び目的:「派遣労働者の保護」を明記する
(8)(1)、(2)は公布日から3年以内((1)は一般事務などの業務は+2年の暫定措置)、その他は6箇月以内

 本答申を基にした派遣法改正案が郵政改革法案とともに今国会の重要法案とされ、終盤国会の焦点となってきそうな様相です。


2.労働者派遣の法的意義

 我が国の労働法体系は、職業安定法第44条において、労働者供給事業を包括的に禁止しています。しかし、同法4条6項によって、労働者派遣は労働者供給事業から除外され、労働者派遣法の定める要件を満たすことにより、適法とされているのです。

 それでは、労働者派遣の定義ですが、労働者派遣法は第2条第1号で次のように規定しています。「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないもの」、つまり、雇用契約は派遣元企業甲と派遣社員Aとの間に結ばれていますが、実態的な指揮命令関係は派遣先企業乙とAとの間に成立させ、かつ、乙とAとの間には雇用関係はないという法律関係です。ちなみに、乙とAの間にも雇用関係があるのが「出向」です。

 労働者派遣事業は、特定労働者派遣事業及び一般労働者派遣事業に区分されます。前者は、派遣元企業が常時雇用する労働者のみを派遣するものであり、常用型派遣とも呼ばれます。後者は、派遣を希望する労働者を登録しておき、派遣の都度、派遣労働者と派遣期間だけの労働契約締結するものであり、登録型派遣とも呼ばれています。両者は、事業免許の方法において差が設けられており、特定労働者派遣事業を行うためには厚生労働大臣への「届出」だけで事業が始められるのに対し、一般労働者派遣事業の場合、厚生労働大臣の「許可」が必要とされています。


3.労働者派遣法

(1)労働者派遣法の目的
 労働者派遣法の第一義的な目的は、派遣労働者の保護です。しかし、正社員(終身雇用システム)の保護もその目的と考えられます。これはどういうことかというと、派遣労働者を無制限に認めていくと正社員の仕事が派遣労働者にとって代わられ、正社員の地位が脅かされることになるので、派遣対象業務を制限し、派遣可能期間を限定し、派遣先に対する直接雇用申込みを義務化するなどの措置を講じているのです。

(2)派遣対象業務及び派遣可能期間
 派遣対象業務は、これまで緩和されてきた歴史があり、平成15年の改正でそれまで禁止されてきた製造業が対象業務に含まれるようになり、派遣禁止となる業務はごく限定的に列挙されています。

①港湾運送業務、②建設業務、③警備業務、④医療関係業務などの一部

 派遣可能期間の原則は、派遣先が当該派遣先事業場の労働者の過半数代表者の意見を聴いた上で、1年から3年までの期間を定めることができ、その定めをしない場合、派遣可能期間は1年となります。

 但し例外があり、①平成11年改正以前に既に派遣対象業務となっていた26業務、②事業の開始、転換、縮小又は廃止のための業務であって、一定期間内に完了することが予定される業務、③その業務が1箇月に行われる日数が派遣先の通常労働者の所定労働日数に比べて少ない業務、④産前産後の休業及び育児・介護休業をする労働者の業務、これらについては派遣可能期間が適用されません。

26業務;
 ソフトウエア開発、機械設計、放送機器操作、放送番組等出演、事務用機器操作(昔の英文・和文タイピストなど?)、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、建築物清掃、建築物設備運転・点検・整備、受付・案内・駐車場管理等、研究開発、事業の実施体制の企画・立案、書籍の製作・編集、広告デザイン、インテリアコーディネーター、アナウンサー、OAインストラクション、テレマーケティング営業、セールスエンジニアの営業・金融商品の営業、放送番組等における大道具・小道具

(3)派遣先における雇用制限の禁止
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由なく、派遣元事業主との雇用関係が終了した後に、その労働者が派遣先に直接雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはいけません(労働者派遣法第33条)。

(4)派遣先の直接雇用義務
 派遣先は、派遣可能期間に制限のない業務について、派遣先が同一業務に3年を超える期間同じ労働者を受け入れ続けている場合で、当該同一業務に誰か労働者を雇入れようとするときには、その派遣労働者に雇用契約の申込みをしなければなりません(労働者派遣法第40条の4)。

 さらに、派遣可能期間の制限のある業務については、同一業務に継続して1年以上同一労働者を受け入れていた場合であって、その後当該業務に新たに労働者を雇入れようとする場合には、その派遣労働者を雇入れるように努めなければなりません(労働者派遣法第40条の3)。これは、強制ではなく、努力義務です。

 なお、申込みをする雇用形態は、必ずしも期間の定めのない契約に限られず、期間の定めのある契約、パートタイマーとしての雇用契約などでも足りるとされています。

パートタイム労働法

1.パートタイム労働者

 まず、パートタイム労働者の定義の復習です。パートタイム労働法が「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の通称であることからも分かるとおり、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されています。

2.労働条件の明確化

 労働条件に関するトラブルの防止をするために、労働基準法第15条第1項及び労働基準法施行規則第5条は、労働契約の締結に際し、使用者は労働者に対して、「賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めており、一定の事項は書面の交付によって明示されることとしています。

 これに加えて、平成19年に改正されたパートタイム労働法によって、正社員などフルタイムの労働者については義務化していない事項についても明示の義務を課すようになっています。

 労働条件の文書による通知は、通常、雇入通知書(労働条件通知書)の交付雇用契約書の締結等によって行われます。概略を以下にまとめてみました。

(1)労働契約の期間に関する事項:文書による明示義務
(2)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項:文書による明示義務
(3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を越える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて終業させる場合における就業時転換に関する事項:文書による明示義務
(4)賃金(退職手当を除く)の決定、計算及び支払方法、賃金の締切り及び支払の時期:文書による明示義務
(5)昇給に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示義務
(6)退職に関する事項(解雇事由を含む):文書による明示義務
(7)退職手当の有無:パートタイム労働者のみ文書による明示義務
(8)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払方法並びに支払時期:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務
(9)賞与の有無:パートタイム労働者のみ文書による明示義務
(10)臨時に支払われる賃金及び施行規則第8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務
(11)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務
(12)安全及び衛生に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務
(13)職業訓練に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務
(14)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務
(15)表彰及び制裁に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務
(16)休職に関する事項:パートタイム労働者のみ文書による明示の努力義務


3.パートタイム労働者に対する均等待遇

 パートタイム労働法は、平成19年に均等待遇の実現を目的として、大改正が行われています。

(1)通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の差別禁止

 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の要件は次の通りです。①通常の労働者と職務の内容が同一であること、つまり、業務の内容とその業務内容に伴う責任の程度が実態的に見て同一であることです。②通常の労働者と人材活用の仕組み、運用等が全雇用期間を通じて同一であること、つまり、転勤、職務内容の変更、配置の変更について同一であることを指しています。③雇用期間が実質的に無期限であること、期間の定めのない労働契約を結んでいること又は期間を定めて労働契約を締結していても反復更新をしていて実態的には期間の定めのない契約と変わらない雇用関係が成立している場合を言っています。

 使用者は、上記3要件を十分に勘案した上で、その程度に応じて、①賃金の決定、②教育訓練、③福利厚生施設の利用について、パートタイム労働法の条文にそった形で運用していかなければなりません。つまり、上記3要件を完全に満たしているパートタイム労働者については、①賃金の決定、②教育訓練、③福利厚生施設の利用について、通常の労働者と完全に均等に待遇されなければならないと言うことです。

(2)通常労働者への転換

 パートタイム労働者を正社員にするか否かは、あくまでも使用者の判断に委ねられていますが、パートタイム労働法は、パートタイム労働者の通常労働者への転換を推進するために、下記のいずれかの措置を講じることを使用者に義務付けています。
①通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既雇いのパートタイム労働者に周知すること、
②通常の労働者のポストを社内募集する場合、既雇いのパートタイム労働者にも応募の機会を与えること、
③パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入すること、
④その他、通常の労働者への転換を促進するための措置

(3)擬似パートの問題

 いわゆる擬似パート、フルタイムパート(おかしな言葉です...)は、パートタイム労働法が定義するパートタイム労働者には該当しません。従って、形式的にはパートタイム労働法の適用はないと言うことになります。しかし、このような労働者が、パートタイム労働法による保護を受けることができないということになれば、著しく均衡を欠いた状態になります。そこで、厚生労働省の指針では、このような労働者についてもパートタイム労働法の趣旨が考慮されるべきであるとしています。