残業時間公表を大企業に義務付け

 政府の働き方改革に呼応した厚生労働省の次の一手は、「大企業に残業時間の公表義務を課す」ということのようです。働き方改革実現会議の初回会合は、昨年9月27日に開催されておりますが、そこで提案された論点9項目の第3番目が、「時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正」でした。厚労省は、2020年にも従業員の残業時間の公表を大企業に義務付けることとしており、企業は月当たりの平均残業時間を年1回開示するよう求められ、従わなければ処分を受けるとのことです。

 新たな規制は労働法制では大企業とみなされる従業員数301人以上の約1万5千社が対象とされ、従業員300人以下の中小企業については罰則を伴わない「努力義務」にとどめる方向です。対象企業は厚労省が企業情報をまとめたデータベースや企業のホームページで年1回開示する。虚偽が疑われるような情報しか出さない企業にはまず行政指導を実施、悪質な場合には最大20万円のペナルティーを科す。正社員と非正規社員を分けるかどうかなど詳細な仕組みの議論を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で来年から始めることになっています。

 厚労省では、残業時間を公表することで、企業が業界他社を互いに意識し合ったり、時間外労働を減らす新たな動機づけになったりすると見ています。また、学生が就職活動で企業を選ぶ際の判断基準になるとも期待しています。なるほど、大企業でも、ブラック度が外部に透け透けになってしまうというわけです。

 ただ、企業にとっては労務管理の事務が増えることになり、残業時間を他社と並べて相対的に比べられることへの心理的な抵抗感もあるため、労政審では経営側から慎重論も出されることが予想されます。従業員の平均値を年1回示すだけなので細かな労働実態をつかみにくい面もあり、経営者の理解を得ながら実効性ある仕組みをつくれるかどうか問われることになりそうです。

 また、こんなクオータ制のようなことまでやるのかというのが、厚労省は制度導入へ女性活躍推進法の改正を視野に入れてやっているという点です。同法の改正が残業時間の公表とどういう関係があるのかは今一つ不明ですが、採用時の男女別の競争倍率や月平均残業時間の公表などを求めていくということのようです。残業時間などについては公表を義務に切り替え、法改正が必要な場合、2019年の通常国会に関連法案を提出する方針とのことです。

20170301_Skytree@押上_KIMG_0124

労働法令違反企業名の公表

 この先週11日の日本経済新聞電子版が伝えた記事、「労働法令違反企業名公表 厚労省」というのがありました。電通事件が大きなきっかけになったのか、また、政府が進める働き方改革の一環なのでしょうか、ここのところ厚労省が次々と手を打ってきている感じがいたします。

 記事によれば、厚生労働省は、違法な長時間労働や労災につながる瑕疵(かし)、賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いで書類送検した334件に関し、関与した企業名を同省のホームページで公開、各労働局の発表内容を一覧表にして一括掲載したのは初めての試みとのことです。一覧表にまとめられたのは各地の労働局が昨年10月以降、法令違反で書類送検した企業名で、最も多かったのは愛知労働局の28件で大阪労働局の20件、福岡労働局の19件が続いています。

 また、一覧表には社員に違法な残業をさせた疑いで書類送検された電通やパナソニック、労災事故を報告しなかった疑いで書類送検された日本郵便など大企業も含まれています。企業経営者にとって、このような一覧表に社名を掲載されたときの負の宣伝効果は、全く洒落になりません。

労働基準関係法令違反に係る公表事案一覧表

20170301_Skytree@押上_KIMG_0121

子供・子育て拠出金率が引き上げられました

 健康保険料と厚生年金保険料は事業主と被用者で折半のはずですが、実際には使用者の負担する社会保険料の金額の方が若干高くなっております。この原因は、すべての被用者の標準報酬月額に一定の料率を乗じて求める子供・子育て拠出金といわれるものを事業主が全額負担しているためです。同拠出金は、児童手当その他の子育て支援のための原資となっています。

 その子供・子育て拠出金が、平成29年4月から1000分の2.3に引き上げられています。社会保険料の支払いは、1箇月遅れになるため、5月納付分から社会保険料の納付額がその分増額となります。

 子供・子育て拠出金 料率推移
 
 平成24年4月~28年3月 0.15%
 
 平成28年4月         0.20% 
 
 平成29年4月         0.23%

20170301_Skytree@押上_KIMG_0120

10年年金とその注意点

 平成29年も早や4月に入りましたが、激動の世界情勢は今月に入ってその動きを加速しているかのようで何やら不気味です。

4月4日  シリアの政府軍が化学兵器を使用したとの報道が伝えられる
4月5日  北朝鮮が日本海にミサイル発射
4月6日  トランプ-習近平首脳会談フロリダで始まる
4月7日  地中海の米海軍艦船、シリアの空軍基地に対し、59発の巡航ミサイル「トマホーク」発射
4月8日  米原子力空母打撃群が朝鮮半島に向けて移動開始
この間、ロシアの古都やストックホルム、今朝はエジプトのアレキサンドリアなどでテロが勃発しています。

 我が国も平和を維持するために、真剣に有事対応を計画し、実行することを余儀なくされる段階に既に達しているのか、その途上にあるのかわかりませんが、非常に危険な世界情勢をすべての国民が自覚し、意識を変えるべきときだと思います。

 さて、10年年金の話です。「年金受給資格期間短縮法(年金機能強化法の一部改正)」で、本年8月1日より年金受給資格期間が25年から10年に短縮されることになり、新たに推計約64万人が老齢年金の受給資格期間を得ることになるとされています。この措置で新たに支給されることになる年金額は約2000億円と試算されており、単純計算で一人当たり312500円となります。本年3月から、年金加入期間が10年以上あり25年未満、かつ、年金受給開始年齢を過ぎていると日本年金機構が判断できるデータを持っている方に対して、年齢の高い順に年金機構から「年金請求書が」送付する作業がすでに始まっています(10年年金の請求書発送始まる)。

 年金受給資格期間短縮措置の対象になるのは、(1)老齢基礎年金、(2)老齢厚生年金、(3)退職共済年金(一元化後は厳密には厚生年金だが、いわゆる共済系の年金)、寡婦年金とこれらに準ずる旧法老齢年金(旧国民年金の老齢年金・通算老齢年金、旧厚生年金の通算老齢年金、旧船員保険の通算老齢年金等)だけです。ここで注意すべきは、遺族基礎年金・遺族厚生年金の長期要件(年金受給権者の死亡又は年金受給資格期間満了者の死亡)については、期間短縮措置の対象にはならないことです。従って、10年年金の対象となって新たに老齢年金を受給される方が将来亡くなった場合に、遺族年金が支給されることはありません。

 また、寡婦年金というのは、第1号被保険者としての受給資格期間を満たした夫が、老齢基礎年金を受ける前に死亡した場合、10年以上の婚姻期間を有する生計維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間、支給される有期年金です。ここでいう夫の第1号被保険者としての受給資格期間というのが、本年8月1日以降に死亡した場合から、25年ではなく、10年でよいということになるわけです。

 今回の年金受給資格期間短縮措置の効力が発生するのは、平成29年8月1日になります。年金の受給権が発生するのは常に1月遅れですので、9月支給分(実際の支給は10月13日)からになります。

20170210_水上訓練@隅田公園

出張中の労働時間

 政府による働き方改革で労働時間の規制が俎上に上せられています。今後は今まで以上に厳格な労働時間管理が事業所に対して課されることも必然的になってくることでしょう。ところで、出張中の労働時間はどのように考えたらよいのでしょうか。出張先に移動している時間など、厳密に考えてみるとどう扱うべきなのか疑問が生じてくるところです。


1.出張中の移動時間

 通常の始業時間以後に出張先へ交通機関を利用して向かう行為は、当然労働時間に含められるということです。営業職が業務時間中に営業先に向かうのと同じことです。それでは、業務時間外に行った移動はどうなるのでしょうか。極端な場合は、日曜日に遠方の取引先などに移動して一泊し、翌日業務をこなすというようなことも想定されます。このような場合、移動時間を労働時間に含めるという学説もあるようですが、一般的な考え方は、通常の出勤のための通勤時間と同様若しくは類似の性質を有する時間とみなされ、労働時間に算入されないということです。もちろん、移動時間中の過ごし方の自由は確保されている必要があります。移動時間中に資料の作成等の業務を行う業務命令が出ている場合などは、当然業務時間に算入されなければなりません。


2.出張中の労働時間

 出張中は、事業場外での業務に従事しています。このため、通常は使用者の指揮監督が及んでいないとされます。従って、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に相当し、事業場外労働のみなし労働時間制の対象になると考えられます。事業場外労働のみなし労働時間制を適用する際に難しい点は、労働者の労働の実態をある程度は把握しつつ、指揮監督が及んでいると判断されるような厳密な管理が行われていてはならないことです。出張に関しては、時間の使い方は出張者に任されていることが一般的ですので、よほどの縛りがあらかじめかけられていない限り、事業場外労働のみなし労働時間制の適用が可能と思われます。

 事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務です。次のように事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はできません。
 ①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
 ②無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
 ③事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

第三十八条の二  労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
2  前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
3  使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。


20170226_大カンザクラ@上野公園_KIMG_0113