「させていただく」というのは敬語なのか?

 「最近の若い奴らは」と「最近の日本語の乱れは」というは、おそらくは大昔から使われてきたのであろうし、これからも絶えることなく語り継がれていく言い回しとなるのでしょう。ことに、今年で150周年となる明治維新の前後では、文明開化などといって、生活様式や風俗にある種の断絶が生じて、明治の指導者たちは、そもそも高等教育を日本語で行うのか、はたまた英語や独語のような外国語で行うべきなのか、というようなことで悩むことから始めなければならなかった訳ですから、時代の急激な転換についていけない守旧派の人々からの非難などは、想像を絶するものがあったことでありましょう。結果的に、明治の先達は、熟慮の末、西洋のから輸入された新しい概念を次々と日本語に翻訳し、日本語で高等教育を行うという最善の選択をしてくれたおかげで、今日私たちは、母国語だけで高度な知識を身に着け、物事を思考することができるようになっているのです。

 とはいえ、昨今の日本語の乱れというのは、目に余るものがあります。まず思いつくのが、英語などのカタカナ外来語の野放図な侵攻です。年齢がばれてしまうのですが、「Gパン」とか「チョッキ」といっていたものが「ジーンズ」やら「ベスト」になったのは、正しい英語や準世界共通語の英語に収束していく動きで、ご愛敬というところです。また、パソコン周りの用語なども仕方がないところではあると思います。ですが、役所が率先して、「クールジャパン」とか、「マイナンバー」などとうそぶくのは、どうなんだろうと首をかしげてしまいます。ちなみに、浅草社労士は「ファシリテート」とか言い出すコンサルタントとか専門家は、即刻お引き取りいただくようにしています。

 最近の耳障りに感じるのは、「〇〇させていただく...」という似非敬語の類です。これは、数年前に今振り返ってみると我が国に禍根ばかりを残して去った某政治家がテレビなどに頻繁に登場し、多用したのがきっかけだったように記憶しています。どういうわけか、今やこの言い回しがかなり定着し、様々なところで使われているようです。たとえば、五輪に出場することになった選手が「皆様が応援してくださったおかげで五輪に行かせていただくことになりました。」というような表現です。一見謙虚そうで、無難な表現なのかもしれませんが、どうも主体性のない空虚な言葉のにおいがします。「皆様が応援してくださったおかげで五輪に行くことができます。」で十分でしょう。そうでなくても、主語が曖昧だといわれる我が母国語です。一体全体誰の意思で物事が動いているのか、少しは明確にする意思が必要です。政治家はもちろん、我々のような士業に就いて、人前で話をする機会のある者は、須く注意して、回避すべき似非敬語だと思うのです。

 可能の意味を表現する「見られる」、「起きられ」、「投げられる」などが「見れる」、「起きれる」、「投げれる」という「れ」抜き言葉にになりつつあるのも、もう誤用の方が多いくらいで、いわゆる正しい言葉遣いをしているのは、NHKのアナウンサーくらいという惨状ですから、早晩正誤が逆転するのかもしれません。「れ」抜き言葉の評価が難しいのは、仄聞するに、方言によっては、「れ」抜きの方が昔から一般という地方もあるからです。

 そのNHKにしても、皇室に関する敬語にはかなり心もとないものがあります。皇室に関する敬語・用語は、一般に使われるそれとは異なる場合があり、かなり難しいので、NHKをはじめとする報道機関が正しい敬語・用語を使って初めて我々がその使い方を知るという場合が多いと思います。ところが、そのNHKが、「譲位」を「生前退位」と伝え、皇太子殿下や内親王殿下を「様」で代替してしまうような状況ですから、お寒い限りです。某新聞紙に至っては、皇室に関してまともに敬語を使わない方針のようで、話にもなにもなりません。そういう、言葉を大切にしない報道機関が、果たして将来生き残っていけるのか、大いに疑問に感じている次第です。

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勝負に勝つにはボーと観る

 超一流といわれる競技選手の脳の機能を解明するといった内容の柏野牧夫氏による講演を聴講して参りました。柏野氏は、NTT コミュニケーション科学基礎研究所の上席特別研究員で、スポーツ脳科学プロジェクトを率いておられる方です。

 講演で柏野氏が取り上げた競技は、主に対人競技で、格闘技および野球でした。これらの競技では、対戦相手の挙動を的確に予測し、かつ、相手が行うこちらの挙動予測をはずしてしまうことができれば、ほぼ勝つことができます。ここで、野球における投球と打撃に絞って動作と脳の動きが語られます。

(1)人間の「見る」という行為においては、必ずしも物理的なボールの動きの通りに見ているわけではないのです。その理由は、人間の網膜の中で、物がくっきり見えているところはごく一部であり、その周辺の網膜の大部分を占めているところでは、ぼんやりとしか見えていないからです。見るという行為は、物がくっきり見えているところをきょろきょろ動かしたり、脳で画像を補ったりしているのです。そのため、くっきりした画像として意識するまでにコンマ数秒の時間を要しているのです。

(2)ところが、超一流、達人といわれる打者の中には、「見る」という行為に要する時間よりも明らかに早い瞬間に球筋を目で捕捉し、反応している選手がいます。逆に、敢えて目をはずすような動きをする選手もいます。

(3)脳の中の視覚をつかさどる領域は二種類あり、「物をしっかりと見る」領域と「大雑把に動きを把握する」領域があります。前者は、しっかりと見て意識することができるのですが、反応が遅く、後者は、意識が伴わない分速い反応ができるのです。

(4)要は、潜在意識のようなものを発揮して、見ないようで見るような姿勢でいることが、相手の挙動に素早く対応できるということのようです。古くから剣術の世界で言い古されてきた「遠山の目付」、「観の目強く、見の目弱し」といった言葉の真意は、もしかすると、こういうことだったのかもしれません。

 浅草社労士は、若い頃、何時も肩に力が入っていて、見の目強しの状態でした。これでは、スポーツにしろ、対人関係にしろ、好成績は望めませんね。肩の力を抜かなければ、実力は十分に発揮することができないというのは、かなり前に(といっても年齢をくってから)悟りましたが、「見る」ということについては考えたこともありませんでした。遠山の目付でボーと観ることを試してみたいと思っております。

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税・社会保険のオンライン一括申請計画

 1月29日の日本経済新聞電子版は、政府が2020年をめどに企業が実施する税や社会保険の手続きをオンライン上で一括して済ませられるようにする計画があることを伝えています。記事によれば、オンライン申請の普及の障害になっていた電子署名を省略するほか、企業名や住所など各申請に共通する情報は一度入力すればすむようにするとのことです。これによって、企業の作業時間を2割以上減らして生産性を高めるほか、行政の業務を削減する効果も見込んでいるようです。現在士業が行っている手続き業務にも今後大きな影響が出てくることが予想されます。

=== 日本経済新聞電子版より転載 ===

 政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)が3月中に計画をまとめる。安倍晋三首相は17年に企業の行政手続きの負担軽減に向けた計画づくりを指示。既に内閣府や財務、厚生労働、総務各省など関係省庁が協議を進めており、新しいオンライン申請のシステムを20年をめどに立ち上げる。

 企業による税・社会保険の申請はこれまで、所得税は税務署、住民税は地方自治体、年金は年金事務所、健保は全国健康保険協会(協会けんぽ)など、雇用保険はハローワークで行っていた。大半の企業が書類やCD―ROMを各機関の窓口に持ち込んでおり、主な項目のオンライン申請の割合は16年度で13%にとどまっている。企業からの申請は社会保険だけでも年6300万件あり、大きな負担になっていた。

 現在でもオンラインで申請する仕組みはあるが、社会保険、所得税、住民税のシステムがそれぞれバラバラだった。加えてオンライン申請には電子署名が必要だ。電子署名を利用するには年間7900円の費用がかかるうえ、取得の手続きが複雑だった。特に人員に余裕の無い中小企業でオンライン申請が普及していないという。

 政府はこのため、税と社会保険をまとめて申請できる新しいシステムを20年をめどに立ち上げる。電子署名は原則として省略できるようにする。代わりに既に国が通知している法人番号(企業版マイナンバー)とひもづけたIDとパスワードを発行し、税・社会保険のオンライン申請に活用する。IDとパスワードは無料で簡単に取得できるようにする。不正利用や情報漏洩が起きないように、セキュリティーを確保することが課題になる。

 加えて書式を見直すことで、企業名や社長名、企業の住所など各申請に共通する情報は一度入力すればいいようにする。作業負担を大幅に軽くすることで中小企業を含めて広くオンライン申請を使ってもらう考えだ。補助金の申請でも共通情報の入力は一度きりにして国・地方の様々な補助金を一括申請できるようにする。

 オンラインでの申請を促すことで、企業の行政手続きの作業時間を2割超減らせる見通しで、働き方改革や生産性の向上につながる。加えて年金事務所やハローワークなど行政機関の事務作業も大幅に減る。窓口での受け付け作業や、書類をパソコンで入力し直す手間が無くなるためだ。行政経費の削減につながる。

 政府は国民向けに、転居や介護、死亡・相続といった暮らしにかかわる申請手続きを18年度にもスマートフォン(スマホ)でできるようにする。これと並行して企業向けにもオンラインでの申請を普及させて、企業活動の効率性を高める。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

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新年のお慶びを申し上げます

昨年は、一昨年の歴史の分岐点ともいえる一連の動きを引き継いで、様々な出来事があった一年でした。なかでも、「フェイクニュース」という言葉が内外で普通に使われるようになり、テレビと新聞に対する不信感がこれほどまでに高まったことには驚きました。情報戦がすでに始まっていると、市井の人々の方が先んじて感じとり始めているのかもしれません。

国技相撲をどう考えるかは、人によってさまざまでしょう。ですが、相撲は神事とおっしゃる方も多数おられるかと想像いたします。昨年後半は、再び大相撲が乱れに乱れました。国が乱れるとき、国技相撲が乱れ、角界の混乱は、世の中が混乱を極めることを暗示しているのではないかと心配になりますが、それが杞憂であればと願う年の瀬でした。

だからというわけではないのですが、昨年は危機管理の仕事に参画し、社会に微力ながら貢献できるよう心を致しました。今年は、公私にわたり、危機管理の意識を高めていきたいと思っているところです。

本年が希望の持てるような一年になるよう、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

平成30年 元 旦

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国家公務員と時間外労働の問題

 7日の日本経済新聞電子版に「労働基準法の適用外 厚労省で続く徹夜勤務」という矢崎日子氏の署名記事が掲載されておりました。記事の骨子は、以下のような内容でした。

<霞が関は年末に向け2018年度の予算編成作業が大詰めを迎える。その中でも今年の厚生労働省は特に大変だ。予算のうえに、医療と介護の公定価格である診療報酬、介護報酬の改定作業、障害者向けサービス、生活保護制度の見直しなどが重なるためだ。

 昼間は会議や、国会議員への対応などで時間をとられる。夕方からやっとそれぞれの作業に移るが、午後10時にはとても終わらない。深夜0時を過ぎるのは普通、徹夜になることもある。労働関連法を所管する厚労省だが「国家公務員に労働基準法は適用されないから」と自嘲ぎみに語る職員もいる。確かに、国家公務員の一般職には労働基準法は適用されていない。

 世間一般には長時間労働の是正を促す立場の厚労省。ただ国家予算の3分の1を占める社会保障を担当しており業務量は多い。霞が関では「強制労働省」とやゆされる。残業による過労死をなくすために残業をする人たちがいるとしたら、それを厚労省の人たちはどう考えているのだろうか。>

 労働基準法116条2項は、① 同居の親族のみを使用する事業、及び② 家事使用人については、労働基準法が適用されないとしています。一方で、112条は労働基準法の国、都道府県、市町村などへの適用を謳っています。しかし、公務員に対する労基法の適用はかなり複雑な仕組みになっています。

 まず、一般職の国家公務員については、労基法の適用は原則なしと考えます。その根拠は、国家公務員法附則16条で一般職の国家公務員に対する労基法の適用除外が規定されているからです。労働基準監督機関の職権の行使も当然できないと考えます。一般職の国家公務員とは、特別職に属する職以外の全ての国家公務員であり、特別職は法律上明文で列挙されています。

 ということで、働き方改革を進めている主要当事者の一人であるところの厚生労働省自身が職員に過重労働を強いているという何とも皮肉な現状を矢崎氏は指摘しておきたかったのでしょう。一方で、国家に対して重い責任を負い、国民の生命及び財産を護る使命を担った高級官僚に過重労働の禁止とか、ワークライフバランスといった世間一般の概念は当てはめられないという議論もあると考えます。しかし、いくら使命感に燃えるエリート官僚であっても、徹夜や深夜帰宅が何日も続いたとしたら、疲れ果ててしまった心身で真に国益にかない、国民の利益につながる政策を遂行していけるのか、少々心もとない感じを持ってしまいました。

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