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遺族年金と重婚的内縁関係

 遺族年金の受給権者は、本人の死亡当時、本人によって生計を維持されていた配偶者であることが多いです。その場合の配偶者には、戸籍上婚姻はしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者(内縁関係)が含まれます。事実上の婚姻関係があれば、事実上の離婚が当然存在します。ここで、問題になるのは、遺族年金の受給権者と推定される者として、戸籍上婚姻関係にある者がいて、その他に内縁の関係にある者がいる場合です。このような内縁関係を、重婚的内縁関係というそうですが、月間社労士11月号では、このような場合の遺族厚生年金の帰属先について、事例解説が掲載されておりました。

 事例解説によれば、このような場合、届出による婚姻関係が優先さるのが原則です。しかし、内縁関係が例外的に優先される場合も存在します。それは、内縁関係にある者が受給権者によって生計を維持していた事実に加えて、戸籍上の婚姻関係にある者との婚姻関係が、その実態を全く失ったものとなっているときです(「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発年金局長通知)。

 「婚姻関係が、その実態を全く失ったものとなっているとき」とは、具体的にはどういうときなのでしょう。

1.当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上の離婚の届出をしていないとき

または、

2.一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態がおおむね10年程度以上継続し、当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき

また、2の「夫婦としての共同生活が行われていない場合」とは、
(1)当事者が住居を異にすること、かつ
(2)当事者の経済的な依存関係が反復して存在しないこと、かつ
(3)当事者の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在しないこと

というわけで、内縁関係にある者にとっては、かなり厳しい要件が課されています。

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○○万円の壁の話

 巷間では、○○万円の壁というのをよく耳にしますが、特にパートタイマーの主婦の方などが注視されているこの○○万円の壁、一体何のことを言っているのかまとめてみます。


1.100万円の壁

 住民税には二種類あり、「均等割」と「所得割」があります。これらは、一般的には100万円以下には課税されないことになります。ただし、自治体によっては、上記2つの内の「均等割」が、100万円以下でもかかる場合があります。それは、非課税になる上限額が、自治体別に決まっているからです。東京などの人口の多い都市では、上限の100万円までは、非課税になります。一般的な都市では、96.5万円までが非課税のようです。


2.103万円の壁

(1)所得税が非課税ではなくなる。
(2)配偶者控除が外れてしまい、配偶者の払う税金の住民税、所得税の税額の軽減がなくなる(2017年まで)。

 配偶者控除、配偶者特別控除は2018年から大幅に改正されています。

(1)世帯主の所得制限について(世帯主=夫、配偶者=パートタイマーの主婦等)
 2017年まで適用されていた配偶者控除では、配偶者の年収が103万円以下の場合、世帯主がどれだけ給与をもらっていても、一律で38万円の控除を受けることができました(※配偶者の年齢が70歳未満の場合。以下、配偶者は70歳未満と仮定する)。2018年1月からは、配偶者控除に世帯主の所得制限が設けられ、一定の所得を超えると、段階的に控除額が減額されることになりました。具体的には、所得が900万円(年収ベースだと1120万円)以下なら、満額の控除(38万円)の対象となりますが、900万円超だと控除が段階的に引き下げられ、所得1000万円(年収ベースだと1220万円)を超えると控除額がゼロになります。

(2)年収150万円まで満額38万円の控除が受けられるように(世帯主=夫、配偶者=パートタイマーの主婦等)
 2017年までだと、配偶者特別控除の対象となるのは、配偶者の年収が141万円未満の場合でしたが、2018年からは配偶者特別控除の枠が広がり、年収201万円以下まで対象になったりました。配偶者特別控除も配偶者控除と同様で、世帯主の所得が1000万円超(年収ベースで1220万円超)の場合には適用されません。所得900万円以下(年収ベースで1120万円以下)であれば、配偶者の収入次第で満額受け取れますが、所得900万円超になると段階的に控除額は引き下げられます。

 世帯主の年収が900万円以下の場合、2018年からの改正によって、配偶者の年収が150万円までであれば、満額38万円の控除(配偶者控除と同等の控除)を受けられるようになりました。従来は配偶者の年収が103万円までだったので、大きな変化です。 


3.130万円の壁
 年収130万円を超えると、社会保険料の例外がなくなり、配偶者の社会保険の扶養から外れて、本人も、国民健康保険および国民年金または健康保険および厚生年金などの社会保険に加入する義務が生まれます。

  パートタイマーの人が健康保険又は厚生年金保険の被保険者となるか否かは、使用者又はパートタイマー本人が選択できることではなく、法律上適用対象か適用除外かで決まる問題です。具体的には、常用的使用関係にあるかどうかを労働日数、労働時間、就労形態及び職務内容等を総合的に勘案して判断されます。そのひとつの目安となるのが、就労している人の労働日数・労働時間です。

 健康保険または厚生年金保険に関しては、次の条件を同時に満たす者はパートタイマー等であっても原則として、被保険者となります。保険料は「健康保険料額表」及び「厚生年金保険料額表」に基づき、被保険者負担分を賃金から控除されます。

(1)1日の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね四分の三以上、かつ、
(2)1箇月の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね四分の三以上


4.106万円の壁
 前述した「3.130万円の壁」には、2016年10月の法改正で、501人以上の会社でパートタイマーとして働いている場合、130万円以下でも、厚生年金保険に加入しなければならないケースが設けられています。以下条件にすべて当てはまる場合は、年収が130万円超でなくても、健康保険および厚生年金に加入しなければなりません。

 新5要件
(1)全体で500人超の従業員を有する企業であること(=特定適用事業所)
(2)週当たりの所定労働時間が20時間以上(雇用保険と同期)
(3)勤務期間が1年以上と見込まれること
(4)賃金月額8万8千円以上(通勤費込み、見込み年収106万円)
(5)昼間学生ではないこと(雇用保険と同期)


5.150万円の壁

 「2.103万円の壁」のところでの説明の通り、配偶者控除、配偶者特別控除は2018年から大幅に改正されています。103万円の壁は、所得税、配偶者控除の2つの壁でしたが、この内の1つの配偶者控除が150万円(所得60万円以下)まで引き上げられています。そして、201万円まで、段階的に控除額が減っていく仕組みに改正されています。所得税はそのままなので、103万円の壁は、単純に所得税だけの壁になります。

 つまり、2018年1月以降
103万円の壁=所得税の壁
150万円の壁=配偶者控除の壁

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厚生年金の適用対象さらに拡大か?

 8月27日、日本経済新聞電子版は、厚生労働省が、現在特定適用事業所を対象に拡大適用している社会保険をさらに対象を拡大して運用する方向で制度の見直しを検討していることを伝えています。厚生労働省は、平成28年10月から厚生年金保険及び健康保険の適用に関して、短時間労働者に適用する際の要件が緩和し、被保険者の範囲が拡大します。その際、適用対象となった事業所は、全体で500人超の従業員を有する企業であること(=特定適用事業所)という要件で、限定的な運用でした。

 特定適用事業所 5要件
(1)全体で500人超の従業員を有する企業であること(=特定適用事業所)
(2)週当たりの所定労働時間が20時間以上(雇用保険と同期)
(3)勤務期間が1年以上と見込まれること
(4)賃金月額8万8千円以上
(5)昼間学生ではないこと(雇用保険と同期)

 今回、緩和が検討されているとされる要件の一つは、「全体で500人超の従業員を有する企業であること」というものを撤廃を含む従業員数の引下げです。さらに、本人の月収要件を8万8千円以上から6万8千円以上に引き下げる案が検討されています。これらによって、加入者が最大で200万人増えると見込まれているようです。

 厚生労働省は、9月にも社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で、適用拡大を議論する検討会の設置を提案する予定で、検討会には有識者や、小売りなどパート労働者が多い業界団体の代表者らの参加が見込まれます。2019年中に制度の詳細を詰め、20年に関連法案の国会提出をめざすとのことです。このような動きが出てきている背景には、人手不足で、事業主側にパート従業員などの処遇の改善を行って人材を確保したいという意識が高まりつつあることがあげられます。

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兼業・副業と社会保険など

 厚生労働省が公表しているモデル就業規則で兼業・副業に肯定的な条文が書き加えられ、経済産業省などが兼業・副業を奨励する立場をとっていることから、今後兼業・副業に係る労働問題が増えてくることが予想されています。狭義の社会保険における特定適用事業所も念頭において短時間労働の兼業・副業をした場合の社会保険の適用についてまとめてみます。


1.労働保険

 労災保険については、労働基準法が適用されるすべての労働者が対象ですから、兼業・副業が特に問題になることはないでしょう。論点になりそうなのは、休業補償、障害補償、遺族補償等のベースになる賃金額です。これは、災害が発生した勤務先での賃金額のみに基づき算定されます。また、勤務先Aから勤務先Bへ向かう途中の移動時に起こった災害は、通勤災害として移動の終点たる事業所、つまり勤務先Bの保険関係に基づき処理されるということになります。

 次に、雇用保険ですが、適用事業所においては、週20時間以上の労働時間働き、かつ、31日以上雇用が見込まれる者については、事業主に雇用保険に加入させる義務があります。各事業所ごとに個別で判定されますので、A社で20時間未満、B社でも20時間未満ならば、雇用保険関係は成立しないことになってしまいます。逆に、両社で雇用保険関係が成立している場合には、労働者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係のある事業所で被保険者となります。


2.社会保険

 厚生年金保険および健康保険の社会保険への加入義務の有無は、次のようなフローで確認されます。ただし、※の項目は、特定適用事業所のみ適用されますので、それ以外の事業所は無視して良い項目です。

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上か※
 1週間の所定労働時間が20時間未満であれば、事業所で社会保険に加入させる義務はありません。所定労働時間が1箇月単位で定められている場合、52分の12を掛け、1年単位の場合は、52分の1を掛けて1週間の所定労働時間を求めます。

 所定労働時間が20時間未満であっても、実際の労働時間が直前の2箇月をみて週20時間以上で、今後も同様の状態が見込まれる場合、週20時間以上となります。

 一般の適用事業所および特定適用事業所で(1)20時間以上は、(2)を確認します。

(2)1日の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね4分の3以上、かつ、1箇月の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね4分の3以上か

 一般の事業所については、1日の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね4分の3未満、または、1箇月の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね4分の3未満ならば、事業所で社会保険に加入させる義務はありません。ただし、所定労働時間がそうであっても、実際の労働時間が直前の2箇月をみて4分の3以上であり、今後も同様の状態が見込まれる場合、4分の3とみなされます。つまり、あくまで実質を見るということです。

 特定適用事業所は、1日の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね4分の3未満、または、1箇月の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね4分の3未満ならば、(3)、(4)、(5)の要件を確認してゆきます。

(3)継続して1年以上使用される見込みがあるか※
 継続して1年以上使用される見込みがなければ、事業所で社会保険に加入させる義務はありません。ただし、労働条件通知書、雇用契約書などで1年未満になっていても、契約が更新される旨が記載されている場合や同様の契約が更新により1年以上になっている実績がある場合、継続して1年以上使用される見込みがあるとみなされます。

 継続して1年以上使用される見込みならば、(4)を確認します。

(4)報酬は月額換算で88000円以上か※
 報酬は月額換算で88000円未満ならば、事業所で社会保険に加入させる義務はありません。

 臨時に支払われる賃金、1箇月を超える期間ごとに支払われる賞与等、時間外労働・休日労働・深夜労働に対して支払われる割増賃金等、精勤手当・皆勤手当て、通勤手当、家族手当等は含まれません。
 
 報酬は月額換算で88000円以上ならば、(5)を確認します。

(5)学生ではないか※
 学生は、事業所で社会保険に加入させる義務はありません。ただし、大学の夜間部、高等学校の夜間定時制課程の者、卒業見込みで卒業前に卒業後勤務予定の事業所で就業している者、休学中の者などは、学生の適用除外には含まれません。

 特定適用事業所で、要件をすべて満たす者については、所定労働時間が常勤者の4分の3であっても事業所で社会保険に加入させる義務が生じます。

 特定適用事業所以外の一般の適用事業所については、兼業・副業の場合でも、事業所ごとに(2)の4分の3ルールを当てはめて判断するということになります。しかし、そもそも兼業・副業をするということは、賃金を増やすことが目的ですので、現行130万円未満に抑えて国民年金の3号被保険者、健康保険の被扶養者となっている場合、複数の事業所から受ける賃金の合計が年収130万円以上となれば、各事業所で所定労働時間が4分の3未満であっても、3号被保険者には非該当となり、被扶養配偶者からも外れることになります。

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日本年金機構の外部委託問題

 第169回通常国会の会期中ですが、企画型裁量労働の適用拡大のために作成された厚生労働省の基本データに誤りがあったことから始まって、財務省の森友決裁文書の書換え問題、文科省の前川前事務次官による課外授業への介入問題、そして、この日本年金機構の問題と、立て続けに顕在化してきています。これらに共通するのは、行政による独断専行や危機管理意識の低さを露呈したことです。報道機関は、そういった側面を繰り返し報道しますので、行政に対する国民の不信感は、間違いなく増幅させられるということです。

=== 日本経済新聞電子版 平成30年3月21日から一部転載 ===

 日本年金機構がデータ入力を委託した情報処理会社で契約違反が発覚した問題で、機構は20日、3月中に開始予定だった自治体とのマイナンバー連携が延期される見通しになったと明らかにした。同社はデータ入力ミスや中国の業者に無断で再委託していたことが相次ぎ判明した。機構は委託業者の管理手法や監査体制を抜本的に見直す。

 政府は年金の受給開始の申請手続きなどを簡単にするため、マイナンバーを使って機構と自治体の情報連携を始める予定だった。2015年に125万件の個人情報が流出した問題を受け、昨年1月の予定だった実施時期を延期。今回の問題の再発防止策がまとまるまで再延期する方針で、実施のめどはたっていない。

 機構は所得税の控除を受けるのに必要な申告書について、所得やマイナンバーに関する情報入力を情報処理会社のSAY企画(東京・豊島)に委託。同社は501万人分の氏名を入力する作業を無断で中国の業者に再委託していた。機構の水島藤一郎理事長は20日に記者会見し「心配と迷惑をおかけし深くおわびを申し上げる」と謝罪した。

=== 転載終わり ===

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