健保組合の財政悪化問題

 平成37年(2025年)までに「大企業の健康保険組合の4分の1は財政悪化で解散の危機に追い込まれる。」という驚くべき記事が7月15日の日経新聞電子版に掲載されておりました。財政悪化の主な要因は、高齢者医療制度に対する支援金の増加です。特に、平成29年度からは、算定方法が加入者の人数に応じて計算する方法から「収入」を基準とする方式「全面総報酬割」に移行したことにより、大企業の健保組合など大幅増となったところが多いようです。健保組合にして見れば、保険料が協会けんぽを上回るような状況で社員の福利厚生のため健保組合を維持してゆくという意味が薄れ、そのまま解散に追い込まれるのは必然の流れともいえます。世界に冠たる国民皆保険制度を維持してゆくために、発想の大転換を図らないといけない時期に来ているのかもしれません。かといって、全ての国民が安心して医療を受けられないのに、自己責任で片付けるようなどこかの国の制度をなぞるような愚かな行為をしてはなりませんが。


=== 日本経済新聞電子版 平成29年7月15日 ===

 健康保険組合連合会(健保連)がまとめたこんな内部試算が明らかになった。高齢者向け医療費を補填するための「支援金」が急増するのが主因だ。保険料率が加速度的に上昇していく恐れが高く、高齢者の負担適正化やムダ排除など医療費抑制の議論が避けて通れない。

 東北地方のある企業は高齢者医療向け支援金の割り当て増で保険料率が中小企業が主に加入する協会けんぽを上回る10%超まで上昇。「健保組合を維持する意味が無い」。これ以上の支援金負担増には耐えられないと判断し、組合を解散して協会けんぽに加入した。

 大企業の健保組合は約1400あり加入者は約2900万人。保険料は企業と従業員が原則、折半している。現役加入者への医療費だけでなく、65歳以上の高齢者医療費にも多額の保険料を「仕送り」する仕組みが財政をむしばんでいる。健保連によると17年度は全組合の7割で収支が赤字の見通しで、赤字額は合計3000億円超に達する見込みだ。健保連が内々にまとめた試算では、25年度に協会けんぽの保険料率以上となる組合は380と全体の4分の1に上る。同料率は協会けんぽが赤字にならないように設定する「収支均衡保険料率」と呼ぶもので、このラインを越えた健保組合は協会けんぽに移ったほうが料率が下がるため、解散の引き金になりやすい。

 試算では、25年度には現役世代向けの支出(給付費)が4兆4200億円と15年度と比べて17%増える一方、支援金の伸びはさらに大きく39%に達する。実額では支援金は4兆5400億円まで膨らみ、この段階で組合員向けの医療費を「仕送り」分が逆転する。加入者の負担は増加の一途だ。保険料率は15年度の平均9%から25年度に同11.8%に急上昇する見通し。健保組合では実際の年収ではなく、国が定めた「標準報酬」という収入額に料率をかけて保険料をはじき出す。年収600万円のモデルケースの場合、保険料の自己負担分だけでもこの間におよそ8万1千円増えることになる。

 医療費の約6割は65歳以上の高齢者が使う。推計では医療費が25年度にかけ年3.7%ずつ増えると仮定。ここ数年の傾向からすると高めの数字だが、伸び率を3.2%とした中位推計でも25年度には支援金が医療費を逆転する。支援金の計算方法は「総報酬割」という仕組みに今年度から全面的に切り替わった。加入者の人数に応じて計算していたが、新方式では算定の基準が「収入」に変わり、収入の高い加入者が多い大企業へのしわ寄せが強まった。すでに出光興産の健保組合が今春に13年ぶりに保険料を引き上げるなど、料率を低めに据え置いてきた組合も軒並み料率を引き上げている。

 協会けんぽには15年度で約1兆3千億円の国庫補助が投入されている。仮に380組合が解散して協会けんぽに合流してくると国の財政負担も1800億円増える計算だ。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

20170512_高知旅行@はりまや橋

子供・子育て拠出金率が引き上げられました

 健康保険料と厚生年金保険料は事業主と被用者で折半のはずですが、実際には使用者の負担する社会保険料の金額の方が若干高くなっております。この原因は、すべての被用者の標準報酬月額に一定の料率を乗じて求める子供・子育て拠出金といわれるものを事業主が全額負担しているためです。同拠出金は、児童手当その他の子育て支援のための原資となっています。

 その子供・子育て拠出金が、平成29年4月から1000分の2.3に引き上げられています。社会保険料の支払いは、1箇月遅れになるため、5月納付分から社会保険料の納付額がその分増額となります。

 子供・子育て拠出金 料率推移
 
 平成24年4月~28年3月 0.15%
 
 平成28年4月         0.20% 
 
 平成29年4月         0.23%

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10年年金とその注意点

 平成29年も早や4月に入りましたが、激動の世界情勢は今月に入ってその動きを加速しているかのようで何やら不気味です。

4月4日  シリアの政府軍が化学兵器を使用したとの報道が伝えられる
4月5日  北朝鮮が日本海にミサイル発射
4月6日  トランプ-習近平首脳会談フロリダで始まる
4月7日  地中海の米海軍艦船、シリアの空軍基地に対し、59発の巡航ミサイル「トマホーク」発射
4月8日  米原子力空母打撃群が朝鮮半島に向けて移動開始
この間、ロシアの古都やストックホルム、今朝はエジプトのアレキサンドリアなどでテロが勃発しています。

 我が国も平和を維持するために、真剣に有事対応を計画し、実行することを余儀なくされる段階に既に達しているのか、その途上にあるのかわかりませんが、非常に危険な世界情勢をすべての国民が自覚し、意識を変えるべきときだと思います。

 さて、10年年金の話です。「年金受給資格期間短縮法(年金機能強化法の一部改正)」で、本年8月1日より年金受給資格期間が25年から10年に短縮されることになり、新たに推計約64万人が老齢年金の受給資格期間を得ることになるとされています。この措置で新たに支給されることになる年金額は約2000億円と試算されており、単純計算で一人当たり312500円となります。本年3月から、年金加入期間が10年以上あり25年未満、かつ、年金受給開始年齢を過ぎていると日本年金機構が判断できるデータを持っている方に対して、年齢の高い順に年金機構から「年金請求書が」送付する作業がすでに始まっています(10年年金の請求書発送始まる)。

 年金受給資格期間短縮措置の対象になるのは、(1)老齢基礎年金、(2)老齢厚生年金、(3)退職共済年金(一元化後は厳密には厚生年金だが、いわゆる共済系の年金)、寡婦年金とこれらに準ずる旧法老齢年金(旧国民年金の老齢年金・通算老齢年金、旧厚生年金の通算老齢年金、旧船員保険の通算老齢年金等)だけです。ここで注意すべきは、遺族基礎年金・遺族厚生年金の長期要件(年金受給権者の死亡又は年金受給資格期間満了者の死亡)については、期間短縮措置の対象にはならないことです。従って、10年年金の対象となって新たに老齢年金を受給される方が将来亡くなった場合に、遺族年金が支給されることはありません。

 また、寡婦年金というのは、第1号被保険者としての受給資格期間を満たした夫が、老齢基礎年金を受ける前に死亡した場合、10年以上の婚姻期間を有する生計維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間、支給される有期年金です。ここでいう夫の第1号被保険者としての受給資格期間というのが、本年8月1日以降に死亡した場合から、25年ではなく、10年でよいということになるわけです。

 今回の年金受給資格期間短縮措置の効力が発生するのは、平成29年8月1日になります。年金の受給権が発生するのは常に1月遅れですので、9月支給分(実際の支給は10月13日)からになります。

20170210_水上訓練@隅田公園

10年年金の請求書発送始まる

 本年8月(10月支給分)から公的年金の受給資格期間が10年に短縮されるのに伴って、新たに年金受給資格が生じる対象者への老齢年金の請求書送付が始まりました。対象となるのは、10年以上25年未満の加入期間がある65歳以上の人など約64万人とされています。年金請求書は、今回一斉に64万人に送付されるわけではなく、8月までに徐々に受給権者のもとに届けられるとのことです。ただし、納付期間は10年未満でも学生や専業主婦が任意加入であった時代の合算対象期間などを加えて10年になるような方には請求書は送られてこないので、年金事務所に照会したり、社会保険労務士に相談することが推奨されます。

20170210_梅園@隅田公園

平成29年度は0.1%年金額引下げ

 総務省は、1月 27 日、「平成28年平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)を公表しましたが、物価指数は対前年比0.1%の下落となりました。これにより、平成29年度の年金額は、法律の規定により、平成28年度から0.1%の引下げとなります。年金給付額の基準になる老齢基礎年金の年金額は、779292円に引下げられます。

 年金額改定の基準になる物価上昇率と賃金変動率の2指標がともに昨年はマイナスとなっています。特に賃金の下落率が目立ちますが、これは賃金水準が比較的高い高齢者が大量に引退年齢に達している近年の労働人口動態の変化によるところもあるかもしれません。とはいえ、景氣は決して楽観できる状況ではないこと、むしろ後退局面ではないかとさえ思っておいた方がよい状況なのかもしれません。

=== 日本経済新聞電子版 平成29年1月27日 ===

 厚生労働省は27日、2017年度の年金額を0.1%引き下げると発表した。マイナスは3年ぶり。同日発表された消費者物価指数(CPI)が下落したのを年金額に反映する。国民年金を満額で受け取っている人は16年度と比べ、月あたり67円減の6万4941円となる。厚生年金を受け取る標準世帯(夫が平均的な給与で40年働き、妻が専業主婦)では227円減の22万1277円となる。公的年金を受給する約4千万人に影響する。6月に支払われる4月分の年金から新しい金額となる。

 年金額は賃金や物価の変動に合わせて増やしたり減らしたりしている。改定の基準になるのは物価上昇率と賃金変動率の2つ。総務省が同日発表した16年平均のCPI(生鮮食品含む総合)は前年と比べて0.1%の下落だった。賃金変動率は1.1%のマイナス。現在の仕組みでは、賃金変動率と物価変動率がともにマイナスで、賃金の下げ幅の方が物価よりも大きいときは、物価の減少幅に合わせて年金額を変えることになっている。支給水準の伸びを物価や賃金の上昇幅よりも抑制する「マクロ経済スライド」は物価上昇が前提のため、今回は発動されない。

 年金と同様に、物価に連動して支給する児童扶養手当や障害者に対する給付なども下がる。母子家庭や父子家庭の子どもに対する児童扶養手当は、4月から月額で40円下がり、4万2290円となる。

 年金給付を巡っては、財政を安定させるための給付抑制が必要との意見も多い。年金額を今より抑え、将来の年金額を確保するために、21年度からは現役世代の賃金が下がったときに高齢者が受け取る年金額も減らす

 年金保険料は、17年度に国民年金が230円増の月1万6490円となる。保険料の引き上げは04年の法改正で定められた新しい年金財政運営の仕組みに基づき、国民年金、厚生年金ともに17年度で終了となる。厚生年金保険料は9月から0.118ポイント上がり18.3%(労使折半)となる。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

20161130_View@LMTower