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行政手続きの簡素化

 年金を受給する手続きの際に、一般的には住民票及び戸籍謄本などが求められます。住民票はまだよいとして、戸籍謄本は本籍地が遠い場合、用意するのが面倒でしたが、改善される見込みです。また、行政手続きの電子化も益々推進されることになっており、マイナンバーカード作成が必須になってくるのでしょうか。日経紙の記事から拾ってみました。


1.戸籍関係

 戸籍データを法務省のシステムでつなぐ改正戸籍法が24日午前の参院本会議で可決、成立しました。法務省は2024年をめどに新システムの運用を始める予定としており、これにより、戸籍謄本や抄本が本籍地以外の市区町村でも取得できるようになります。

 現在、戸籍の原本は市区町村がそれぞれ管理し、法務省のシステムで副本が管理されています。個人情報を含むため、自治体間や年金事務所などとの間で戸籍情報の共有ができない状態ですが、法改正を受けて法務省の管理システムをネットワークでつなぐことによって、本籍地以外の自治体でも戸籍データが見られるようになります。戸籍データは、マイナンバーとも連携され、年金受給など社会保障関係の手続きでも、戸籍データの添付を省略できるようになる予定です。


2.デジタルファースト

 行政手続きを原則、電子申請に統一するデジタルファースト法が24日、参院本会議で可決、成立しました。同法は、2019年度から順次実施され、引っ越しや相続などの手続きがインターネット上で完結できるようになるとのことです。

 マイナンバー法と公的個人認証法、住民基本台帳法などが一括改正されます。(1)手続きをIT(情報技術)で処理する「デジタルファースト」、(2)同一の情報提供は求めない「ワンスオンリー」、(3)手続きを一度に済ます「ワンストップ」――の3つの原則が柱。

 19年度から実施されるのは、引っ越しをする際、ネットで住民票の移転手続きの準備をすると、その情報を基に電気やガス、水道の契約変更もできるようなること、相続や死亡の申請もネットで完結されるようになることです。

 20年度からは実施されるのは、法人設立関係で、法務局に出向いて登記事項証明書を取得し、書類を複数の窓口に示す手間を省き、ネットで申請できるようにします。

 マイナンバーの個人番号を知らせる紙製の「通知カード」は廃止されます。行政手続きの電子化にはマイナンバーカードの活用が必要ですが、普及率はわずか1割にとどまるため、法改正でICチップの付いたマイナンバーカードの普及を促進する目論見のようです。

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マクロ経済スライドを発動 2019年度

 1月18日付け、日本経済新聞電子版によれば、厚生労働省は、2019年度の公的年金の受取額を前年度比で0.1%引き上げると発表したとのことです。厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯では月額22万1504円となります。数年ぶりのプラス改定ながら、年金の伸びを、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、2023年度末まで年金額の上昇を抑制する仕組みである「マクロ経済スライド」が4年ぶり2度目の発動となっています。これにより、今回の年金額の引き上げ幅も、賃金や物価の伸びをかなり下回る水準に抑えられています。将来、年金財政の悪化で若年世代の年金がなくなるといった極端な議論は論外ですが、年金額が物価上昇に応じて引き上げられていないのも事実であり、平均余命の伸びに応じて高齢者の雇用機会が恒常的かつ十分に提供される必要が益々高まって行くと考えられます。

 厚生年金は、夫が平均的年収(賞与含む月額換算42.8万円)で40年間働き、その間、妻が専業主婦だった場合をモデル世帯としており、このようなモデル世帯で、年金額は月額換算22万1504円となります。また、自営業者などが入る国民年金は、満額なら1人月額6万5008円で67円増となります。年金額は毎年度、物価や賃金の変動率に応じて改定されることになっており、前年の消費者物価指数がこの時期に総務省により発表されるのを受けて、厚労省が次年度の年金額を決定します。

 今回の改定率は、賃金上昇率の0.6%からマクロ経済スライドによって0.5%分の伸びが差し引かれています。マクロ経済スライドは物価と賃金が下がるデフレ局面では発動されないことになっております。2018年度からは、発動しない場合に調整分を翌年度以降に繰り越す「キャリーオーバー制度」が導入されました。2019年度の調整率に加えて18年度の未調整分0.3%がまとめて差し引かれているため、大幅抑制になっているのです。

 なお、年金額を決める際の指標とする賃金の変動率は、厚生年金加入者の標準報酬月額のデータを基にしており、不適切な調査を続けていた問題が明らかになった厚労省の毎月勤労統計は用いられていないとのことです。

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遺族年金と重婚的内縁関係

 遺族年金の受給権者は、本人の死亡当時、本人によって生計を維持されていた配偶者であることが多いです。その場合の配偶者には、戸籍上婚姻はしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者(内縁関係)が含まれます。事実上の婚姻関係があれば、事実上の離婚が当然存在します。ここで、問題になるのは、遺族年金の受給権者と推定される者として、戸籍上婚姻関係にある者がいて、その他に内縁の関係にある者がいる場合です。このような内縁関係を、重婚的内縁関係というそうですが、月間社労士11月号では、このような場合の遺族厚生年金の帰属先について、事例解説が掲載されておりました。

 事例解説によれば、このような場合、届出による婚姻関係が優先さるのが原則です。しかし、内縁関係が例外的に優先される場合も存在します。それは、内縁関係にある者が受給権者によって生計を維持していた事実に加えて、戸籍上の婚姻関係にある者との婚姻関係が、その実態を全く失ったものとなっているときです(「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発年金局長通知)。

 「婚姻関係が、その実態を全く失ったものとなっているとき」とは、具体的にはどういうときなのでしょう。

1.当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上の離婚の届出をしていないとき

または、

2.一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態がおおむね10年程度以上継続し、当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき

また、2の「夫婦としての共同生活が行われていない場合」とは、
(1)当事者が住居を異にすること、かつ
(2)当事者の経済的な依存関係が反復して存在しないこと、かつ
(3)当事者の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在しないこと

というわけで、内縁関係にある者にとっては、かなり厳しい要件が課されています。

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○○万円の壁の話

 巷間では、○○万円の壁というのをよく耳にしますが、特にパートタイマーの主婦の方などが注視されているこの○○万円の壁、一体何のことを言っているのかまとめてみます。


1.100万円の壁

 住民税には二種類あり、「均等割」と「所得割」があります。これらは、一般的には100万円以下には課税されないことになります。ただし、自治体によっては、上記2つの内の「均等割」が、100万円以下でもかかる場合があります。それは、非課税になる上限額が、自治体別に決まっているからです。東京などの人口の多い都市では、上限の100万円までは、非課税になります。一般的な都市では、96.5万円までが非課税のようです。


2.103万円の壁

(1)所得税が非課税ではなくなる。
(2)配偶者控除が外れてしまい、配偶者の払う税金の住民税、所得税の税額の軽減がなくなる(2017年まで)。

 配偶者控除、配偶者特別控除は2018年から大幅に改正されています。

(1)世帯主の所得制限について(世帯主=夫、配偶者=パートタイマーの主婦等)
 2017年まで適用されていた配偶者控除では、配偶者の年収が103万円以下の場合、世帯主がどれだけ給与をもらっていても、一律で38万円の控除を受けることができました(※配偶者の年齢が70歳未満の場合。以下、配偶者は70歳未満と仮定する)。2018年1月からは、配偶者控除に世帯主の所得制限が設けられ、一定の所得を超えると、段階的に控除額が減額されることになりました。具体的には、所得が900万円(年収ベースだと1120万円)以下なら、満額の控除(38万円)の対象となりますが、900万円超だと控除が段階的に引き下げられ、所得1000万円(年収ベースだと1220万円)を超えると控除額がゼロになります。

(2)年収150万円まで満額38万円の控除が受けられるように(世帯主=夫、配偶者=パートタイマーの主婦等)
 2017年までだと、配偶者特別控除の対象となるのは、配偶者の年収が141万円未満の場合でしたが、2018年からは配偶者特別控除の枠が広がり、年収201万円以下まで対象になったりました。配偶者特別控除も配偶者控除と同様で、世帯主の所得が1000万円超(年収ベースで1220万円超)の場合には適用されません。所得900万円以下(年収ベースで1120万円以下)であれば、配偶者の収入次第で満額受け取れますが、所得900万円超になると段階的に控除額は引き下げられます。

 世帯主の年収が900万円以下の場合、2018年からの改正によって、配偶者の年収が150万円までであれば、満額38万円の控除(配偶者控除と同等の控除)を受けられるようになりました。従来は配偶者の年収が103万円までだったので、大きな変化です。 


3.130万円の壁
 年収130万円を超えると、社会保険料の例外がなくなり、配偶者の社会保険の扶養から外れて、本人も、国民健康保険および国民年金または健康保険および厚生年金などの社会保険に加入する義務が生まれます。

  パートタイマーの人が健康保険又は厚生年金保険の被保険者となるか否かは、使用者又はパートタイマー本人が選択できることではなく、法律上適用対象か適用除外かで決まる問題です。具体的には、常用的使用関係にあるかどうかを労働日数、労働時間、就労形態及び職務内容等を総合的に勘案して判断されます。そのひとつの目安となるのが、就労している人の労働日数・労働時間です。

 健康保険または厚生年金保険に関しては、次の条件を同時に満たす者はパートタイマー等であっても原則として、被保険者となります。保険料は「健康保険料額表」及び「厚生年金保険料額表」に基づき、被保険者負担分を賃金から控除されます。

(1)1日の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね四分の三以上、かつ、
(2)1箇月の所定労働時間が、正規労働者に比べて概ね四分の三以上


4.106万円の壁
 前述した「3.130万円の壁」には、2016年10月の法改正で、501人以上の会社でパートタイマーとして働いている場合、130万円以下でも、厚生年金保険に加入しなければならないケースが設けられています。以下条件にすべて当てはまる場合は、年収が130万円超でなくても、健康保険および厚生年金に加入しなければなりません。

 新5要件
(1)全体で500人超の従業員を有する企業であること(=特定適用事業所)
(2)週当たりの所定労働時間が20時間以上(雇用保険と同期)
(3)勤務期間が1年以上と見込まれること
(4)賃金月額8万8千円以上(通勤費込み、見込み年収106万円)
(5)昼間学生ではないこと(雇用保険と同期)


5.150万円の壁

 「2.103万円の壁」のところでの説明の通り、配偶者控除、配偶者特別控除は2018年から大幅に改正されています。103万円の壁は、所得税、配偶者控除の2つの壁でしたが、この内の1つの配偶者控除が150万円(所得60万円以下)まで引き上げられています。そして、201万円まで、段階的に控除額が減っていく仕組みに改正されています。所得税はそのままなので、103万円の壁は、単純に所得税だけの壁になります。

 つまり、2018年1月以降
103万円の壁=所得税の壁
150万円の壁=配偶者控除の壁

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厚生年金の適用対象さらに拡大か?

 8月27日、日本経済新聞電子版は、厚生労働省が、現在特定適用事業所を対象に拡大適用している社会保険をさらに対象を拡大して運用する方向で制度の見直しを検討していることを伝えています。厚生労働省は、平成28年10月から厚生年金保険及び健康保険の適用に関して、短時間労働者に適用する際の要件が緩和し、被保険者の範囲が拡大します。その際、適用対象となった事業所は、全体で500人超の従業員を有する企業であること(=特定適用事業所)という要件で、限定的な運用でした。

 特定適用事業所 5要件
(1)全体で500人超の従業員を有する企業であること(=特定適用事業所)
(2)週当たりの所定労働時間が20時間以上(雇用保険と同期)
(3)勤務期間が1年以上と見込まれること
(4)賃金月額8万8千円以上
(5)昼間学生ではないこと(雇用保険と同期)

 今回、緩和が検討されているとされる要件の一つは、「全体で500人超の従業員を有する企業であること」というものを撤廃を含む従業員数の引下げです。さらに、本人の月収要件を8万8千円以上から6万8千円以上に引き下げる案が検討されています。これらによって、加入者が最大で200万人増えると見込まれているようです。

 厚生労働省は、9月にも社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で、適用拡大を議論する検討会の設置を提案する予定で、検討会には有識者や、小売りなどパート労働者が多い業界団体の代表者らの参加が見込まれます。2019年中に制度の詳細を詰め、20年に関連法案の国会提出をめざすとのことです。このような動きが出てきている背景には、人手不足で、事業主側にパート従業員などの処遇の改善を行って人材を確保したいという意識が高まりつつあることがあげられます。

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