改正労働契約法への対応

 本年4月1日から施行されている改正労働契約法については、18条の有期労働契約の無期労働契約への転換権が今後実務上の大きな問題になってくる可能性があります。18条の施行日が本年4月ですので、1年更新の有期労働契約の場合、最短で平成30年(2018年)4月に5回目の更新をしたとき、無期転換権が生じることになります。そこで、改正労働契約法に対する実務上の留意点を「月刊社労士」11月号に掲載された記事などを参考にまとめておきたいと思います。


1.有期労働契約の仕分け

 改正労働契約法の施行によって、今後有期労働契約についての制約が課せられるのですから、有期労働契約による労働が事業の継続にとって本当に必要なのか、この機会に見直しておくべきです。具体的には、業務委託や派遣労働等の契約形態に切り替えることが可能か検討することになります。ただし、現に勤務している有期労働契約の従業員を無理やり雇止めにするようなやり方では、本末転倒です。この見直しと具体的な対策の実施は、数年の時間をかけて行うものと腹を据えることが大切です。


2.無期転換に向き合う(1)

 次に、現行の有期労働契約の切替が困難で有期労働契約の継続が必須の場合です。今日、スーパーなどの小売、チェーン展開をしているサーヴィス業など、有期労働契約の従業員が基幹業務の担い手であり、かつこれらの者を正規雇用に切り替えるには費用の観点から事業を成り立たせることが困難になると思われる業態が想定できます。

 このような業態では、多くの有期労働契約の従業員が数年後に5年超の無期転換権を有する者になりえます。従って、今から就業規則の見直し及び労働契約書又は労働条件通知書などの準備を積極的に進めておくこと必要があるといえます。

 早速、書き直しておかねばならないところは、正社員就業規則の適用の範囲のところです。正社員とは別に、無期転換社員就業規則を別途作るというのが最善策かもしれませんが、次のようにして、従来の契約社員用又はパート社員用の就業規則を準用する形も考えられます。

 第○条 従業員の種類

 従業員の種類は、次の通りとします。
 (1)正規従業員  入社試験その他の選考によって雇用される者であって、契約従業員、パートタイマー、嘱託従業員、臨時従業員以外の者。
 (2)契約従業員  所定労働時間が正規従業員に準ずる者で、期間を定めて雇用する者(労働契約法18条の規定により無期契約に転換した従業員を含む)。
 (3)パートタイマー  所定労働時間が正規従業員より短く、期間を定めて雇用する者(労働契約法18条の規定により無期契約に転換した従業員を含む)。
 (以下省略)

 第○条 適用範囲

 1.本就業規則は、前条に規定される正規従業員について適用されます。
 2.契約従業員、パートタイマー及び嘱託従業員については、別途定める「契約従業員及びパートタイマー就業規則」及び「嘱託従業員規程」をそれぞれ適用します。


3.無期転換に向き合う(2)

 続いて、2で挙げられた業種とは異なり、有期労働契約を維持していく必然性がそれほどは高くない業態についてです。この業態では、実務的に残ってもらいたい有期労働契約の従業員の一部は正規雇用にしても構わない者と思われます。従って、正規雇用にする基準と雇止めにする基準を明確に定め、確実に実施してゆくことが重要です。また、有期契約労働から正規雇用に移行するということは、配転・転勤、労働時間、及び職責などの点でも有期労働契約とは異なる処遇を受容しなければならないことを意味します。改正労働契約法では、無期転換後の労働条件について、原則として以前の労働条件と同一とするものとしていますが、「別段の定め」をすることにより、変更することが可能とされています。

 さらに、労働契約書又は労働条件通知書に次のような条文又は文言を入れておくこと自体は、問題なくできると思われます。

 有期労働契約の契約更新は、次の要領で行います。ただし、原則として、契約更新を行う場合でも通算5年を超えて更新することはありません。

 (1)契約更新の有無  □ 特別の事情がない限り、原則的に更新する 
               □ 契約満了のつど更新の可否を判断する 
               □ 契約更新は行わない
 (2)契約更新は次の事由により判断する
   (以下省略)         


4.再雇用制度適用者の無期転換への対応

 高年齢雇用安定法で65歳までの雇用が義務付けられている現状では、60歳定年制の企業で再雇用制度が導入され、65歳になるまで、有期労働契約で再雇用される場合が大多数と思われます。この場合には、高年齢雇用安定法の趣旨からいっても、次のような定めを嘱託従業員規程ないしは再雇用契約書等に入れておくことに何の問題もないと思われます。

 定年後再雇用される従業員(以下嘱託従業員という)は、会社と1年単位の有期労働契約を締結し、以後65歳に達するまで、有期労働契約の更新を行うことができます。ただし、第2定年を65歳到達日とし、原則としてこの日を以って当該有期労働契約又は無期転換権が付与された労働契約は終了します。

東京国立博物館

改正労働契約法 改正18条をめぐって_その2

 4月1日施行の改正労働契約法、中でも無期転換権を労働者に付与する18条が注目されていましたが、大学の非常勤講師もこの規定によって無期転換権を取得するとの期待が持てる人たちだったようです。我が母校で非常勤講師の契約更新の上限を5年とする就業規則改正に関して、紛争勃発と伝えられています。都の西北は、俄かに騒然?

労働基準法違反:非常勤講師組合、早大総長を告発 「就業規則で不正」_4月10日

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私生活上の非行と懲戒解雇_横浜ゴム事件

 労働契約法15条は、「...当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています。「客観的に合理的な理由」とは、就業規則該当事由・処分記載の原則とほぼ同義と考えてよいと思います。懲戒処分を行うためには、懲戒に該当する事由と各懲戒該当事由に対応する懲戒の種類及び程度が就業規則に具体的に記載されていなければならず、労働者の行為がその記載されている事由に該当しているかどうかということです。「社会通念上相当であると認められ」るとは、その事由に照らして対応する懲戒の種類及び程度が妥当なものであると判断できるかどうかということです。

 使用者の懲戒権の根拠は「使用者の企業秩序定立・維持権限」に求められるとするならば、一般に使用者の懲戒権は、労働者の私生活上の言動にまでは及ばないと考えられます。しかし、労働者の私生活上の言動であっても企業の社会的評価を毀損するなどの場合には、「使用者の企業秩序定立・維持権限」を行使できると考えられます。それでは、使用者が懲戒権を行使できるほど労働者の私生活上の言動であっても企業の社会的評価を毀損するなどの場合とは、具体的にはいかなる場合が当てはまるのかが問題になります。

 以上の論点を踏まえた上で、私生活上の非行と懲戒解雇の事例、横浜ゴム事件(最高裁昭和45年7月28日)を取り上げます。


1.事案の概要

 X(原告・被控訴人・被上告人)は、Y社(被告・控訴人・上告人)タイヤ工場製造課の作業員として勤務していました。昭和40年8月1日午後11時20分頃、Xは飲酒した上で、他人の居宅の風呂場を押し開け、屋外に履き物を脱ぎ揃えてから同所から屋内に忍び入りましたが、家の者に誰何されたため直ちに屋外に立ち出で、履き物を捨てて逃走したが、まもなく私人に捕まり警察に引き渡されました。Xは住居侵入罪に問われ、罰金2500円の刑に処せられました。

 その後数日を経ないうちに、Xの犯行及び逮捕の事実が噂として広まり、工場近辺の住民及びY社従業員の相当数の者が当該事実を知ることとなります。Y社は、賞罰規則所定の「不正不義の行為を犯し、会社の対面を著しく汚した者」に該当するとして、同年9月17日にXを懲戒解雇しました。XはY社に対して雇用契約上の地位確認を求めて訴訟を提起しましたが、1審及び2審ともにXの請求を認容する判決を下しました。これに対してY社が下級審判決を不服として上告したものです。


2.解 説

(1)判決要旨

 原審の結論を支持し、Y社の上告を棄却。

 右犯行の時刻その他原判示の態様によれば、それは、恥ずべき性質の事柄であって、当時Y社において、企業運営の刷新を図るため、従業員に対し、職場諸規則の厳守、信賞必罰の趣旨を強調していた際であるにもかかわらず、かような犯行が行われ、Xの逮捕の事実が数日を出ないうちに噂となって広まったことをあわせ考えると、Y社が、Xの責任を軽視することができないとして懲戒解雇の措置に出たことに、無理からぬ点がないではない。しかし、翻って、右賞罰規則の規定の趣旨とするところに照らして考えるに、問題となるXの右行為は、会社の組織、業務等に関係のないいわば私生活の範囲内で行われたものであること、Xの受けた刑罰が罰金2500円の程度に止まったこと、Y社におけるXの職務上の地位も蒸熱作業担当の工員ということで指導的なものでないことなど原判示の諸事情を勘案すれば、Xの右行為が、Y社の対面を著しく汚したとまで評価するのは、当たらないというほかはない。

(2)懲戒権の根拠と私生活上の非行

 懲戒処分とは、使用者が「その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し」て科する制裁罰という性格を有するものです。そもそも労働者は企業秩序遵守義務を負い、使用者は企業秩序定立権を有しており、労働者の企業秩序違反行為に対し、懲戒処分を行うことができるとされています。そして、企業の円滑な運営に支障を来たすおそれのある場合には、職場外で為された職務遂行に関係のない労働者の行為も企業秩序違反となるとして、企業秩序概念が私生活領域にも及ぶことを示した最高裁判決があります(関西電力事件、最高裁判決昭和58年9月8日)。

 とはいえ、裁判所の判断には、業務外で為された私生活上の非行について懲戒権が行使された場合には、就業規則にある懲戒規定に限定解釈を加えることにより懲戒事由の該当性を否定したり、又は、諸般の事情を総合判断することにより、処分の相当性を否定するといった厳格で制限的な姿勢が見て取れます。例えば、「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」という懲戒解雇事由の該当性について、「必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、

①当該行為の性質、情状のほか、
②会社の事業の種類・態様・規模、
③会社の経済界に占める地位、経営方針及び
④その従業員の会社における地位・職種等

諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」との一般的基準を設定し、それに基づき具体的な判断を行うとした最高裁判決があります(日本鋼管事件、最高裁判決昭和49年3月15日)。

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使用者の懲戒権_フジ興産事件

 使用者の懲戒権並びに就業規則の周知義務及びその効力について判断を下した有名な最高裁判例であるフジ興産事件(最高裁平成15年10月10日)を取り上げてみました。


1.事案の概要

 Xは、Y社に平成5年2月に雇用され、Y社の設計部門であるエンジニアリングセンターにおいて、設計業務に従事していました。Y社は、昭和61年8月1日、労働者代表の同意を得た上で、同日から実施する就業規則(以下「旧就業規則」という。)を作成し、同年10月30日、当該就業規則をA労働基準監督署長に届け出ました。旧就業規則は、懲戒解雇事由を定め、所定の事由があった場合に懲戒解雇をすることができる旨を規定していました。

 Y社は、平成6年4月1日から旧就業規則を変更した就業規則(以下「新就業規則」という。)を実施することとし、同年6月2日、労働者代表の同意を得た上で、同月8日、A労働基準監督署長に届け出ました。新就業規則においても、懲戒解雇事由及び所定の事由があった場合に懲戒解雇をすることができる旨を定めていました。

 Y社は、平成6年6月15日、新就業規則の懲戒解雇に関する規定を適用して、Xを懲戒解雇しました。その理由は、Xが、平成5年6月頃から同6年5月末までの間、得意先との間で生じたトラブルをきっかけに、上司に対して反抗的態度をとり、しばしば暴言を吐くなどして職場の秩序を乱した行為は、懲戒解雇事由に該当するというものでした。

 そこで、Xは、Y社に対し、懲戒解雇される事実が発生したときにY社に就業規則が存在しなかったこと等から懲戒解雇は無効であり、雇用契約上の地位の確認及び未払い賃金等の支払を求めて訴えを提起しました。また、Y社代表取締役を含む3人に対し、違法な懲戒解雇の決定に関与したとして、損害賠償を請求しました。なお、Xは、本件懲戒解雇以前に、Y社のエンジニアリングセンター長に対し、センターに勤務する労働者に適用される就業規則について質問しており、その際には、旧就業規則はセンターに備え付けられていなかったことが確認されました。


2.解 説

(1)判決要旨

 原判決を破棄し、原審に差し戻し。 

 原審は、次の通り判断して本件懲戒解雇を有効とし、Xの請求を全て棄却すべきものとしています。

 ①Y社が新就業規則について労働者代表の同意を得たのは平成6年6月2日であり、それまでに新就業規則がY社の労働者らに周知されていたと認めるべき証拠はないから、Xの同日以前の行為については、旧就業規則における懲戒解雇事由が存するか否かについて検討すべきである。

 ②Y社は、昭和61年8月1日、労働者代表の同意を得た上で、旧就業規則を作成し、同年10月30日、A労働基準監督署長に届け出ていた事実が認められる以上、Xがセンターに勤務中、旧就業規則がセンターに備え付けられていなかったとしても、そのゆえをもって、旧就業規則がセンター勤務の労働者に効力を有しないと解することはできない。

 ③Xの一連の言動は、旧就業規則所定の懲戒解雇事由に該当する。Y社は、新就業規則に定める懲戒解雇事由を理由としてXを懲戒解雇したが、新就業規則所定の懲戒解雇事由は、旧就業規則の懲戒解雇事由を取り込んだ上、更に詳細にしたものということができるから、本件懲戒解雇は有効である。

 しかしながら、原審の判断のうち、上記②は、是認することができません。その理由は、次の通りです。

 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要します(最高裁昭和54年10月30日第三小法廷判決「国鉄札幌運転区事件」)。そして、就業規則が法的規範としての性質を有する(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決「秋北バス事件」)ものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとされています。

 原審は、Y社が、労働者代表の同意を得て旧就業規則を制定し、これをA労働基準監督署長に届け出た事実を確定したのみで、その内容をセンター勤務の労働者に周知させる手続が採られていることを認定しないまま、旧就業規則に法的規範としての効力を肯定し、本件懲戒解雇が有効であると判断しています。原審のこの判断には、審理不尽の結果、法令の適用を誤った違法があり、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかです。

(2)懲戒権の根拠

 懲戒権の根拠について、本判決でも引用されている最高裁昭和54年10月30日第三小法廷判決「国鉄札幌運転区事件」では、「使用者の企業秩序定立・維持権限」に求め、「一般的に規則をもって定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、行為者に対し、その行為を中止し、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解する」と述べています。

(3)就業規則の効力と周知義務

 労働基準法106条1項によれば、使用者は就業規則を常時各作業場の見易い場所に掲示、備え付け、書面公布等の方法によって周知させなければなりません。本判決の最も肝心な点の一つは、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして効力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることが必要であると再確認したこと、従って、就業規則上の懲戒規定に基づいて労働者に対して懲戒処分を行うためには、当該就業規則が労働者に周知されていることがその効力発生要件としたことです。周知手続きの履行を条件に「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」とした労働契約法7条は、本判決・判旨を立法化したものとされています。

(労働基準法)
第106条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第18条第2項、第24条第1項ただし書、第32条の2第1項、第32条の3、第32条の4第1項、第32条の5第1項、第34条第2項ただし書、第36条第1項、第37条第3項、第38条の2第2項、第38条の3第1項並びに第39条第4項、第6項及び第7項ただし書に規定する協定並びに第38条の4第1項及び第5項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない

(労働基準法施行規則)
第52条の2  法第106条第1項 の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
一  常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
二  書面を労働者に交付すること。
三  磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。


(4)懲戒処分の有効要件

 今日では、労働契約法(平成19年12月5日)が施行され、懲戒についても次のような条文が用意されております。
(懲 戒)
第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。


 しかし、判例では労働契約法が施行される以前から、次のような要件が充たされない場合、懲戒権の濫用に当たり、懲戒処分は無効と考えられてきました。今日でも労働契約法15条を当てはめる場面において、以下の要件は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の判定に使用されるべき要件であるといえます。

 ①就業規則該当事由・処分記載の原則、懲戒処分を行うためには、懲戒に該当する事由と各懲戒該当事由に対応する懲戒の種類及び程度が就業規則に具体的に記載されていなければならないということです。
 ②不遡及の原則、新たに設けた懲戒規定をそれより以前の行為に適用してはならないという原則です。
 ③二重処分の禁止の原則、過去に懲戒の対象となった行為について、蒸し返してもう一度別の懲戒処分の対象とすることは許されないという原則です。但し、過去の懲戒処分の実績をその後の行為に対する懲戒処分の際の情状として考慮することは差支えないとされます。

 ④平等取扱いの原則、懲戒処分は、同種の非違行為に対しては、同等のものでなければなりません。従って、懲戒処分を行う場合には、先例を尊重することが要請されています。労働者の非違行為について、一度でも温情で軽い処分にとどめると、これが先例になる場合があり、同様の非違行為が将来発生した際に、影響を及ぼす可能性があることを十分に認識しておくべきでしょう。

 ⑤行為・処分均衡の原則、労働者の非違行為が懲戒事由に該当するものであったとしても、労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、対応する懲戒処分が社会通念上相当であると認められるものでなければなりません。

 ⑥適正手続き、適正手続きを欠く懲戒処分は、相当性が認められず、無効とされることがあります。就業規則上の規定の有無にかかわらず、本人へ弁明の機会を与えることは、最低限必要な手続きとされています。

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平成21年改正育児・介護休業法適用除外の解除

 平成21年に育児・介護休業法が改正されましたが、その内の一部について、企業全体で(事業所単位ではなくて)従業員が100人以下の場合にその適用が除外されていました。平成24年7月1日からは、改正法が全面施行となり、例外なく適用されることになります。これまで適用除外とされていて、7月1日以降全面適用となる点についての復習です。


1.短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)

 事業主は、3歳に満たない子を養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けなければならないことになりました。この制度は、就業規則に規定される等、制度化された状態になっていることが必要であるとされ、運用で対応するだけでは不十分です。また、1日の労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。

 この制度の対象となる従業員は、以下のいずれにも該当する従業員であり、特に女性に限られることはありません。
(1)3歳未満の子を養育する従業員であって、短時間勤務をする期間に育児休業をしていないこと。
(2)日々雇用される労働者でないこと。
(3)1日の所定労働時間が6時間以下でないこと。
(4)労使協定により適用除外とされた従業員でないこと。(註)

(註)労使協定により適用除外とすることができる従業員
(1)当該事業主に引続き雇用された期間が1年に満たない者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の者
(3)業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する者。ただし、この場合には、事業主は、代替措置として①育児休業に関する制度に準ずる措置、②フレックスタイム制度、③始業・終業時間の繰上げ・繰下げ(時差出勤制度)、又は④従業員の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与、のいずれかを講じなければならないとされています。

 短時間勤務制度の適用を受けるための手続きは就業規則等に定め、この定めは手続が従業員に過重な負担を求めるようなものにならないよう配慮し、適切なものでなければなりません。

 就業規則の条文は、次のようなものが考えられます。
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第○○条 3歳に満たない子を養育する従業員は、会社に申し出ることにより、就業規則第○条の所定労働時間につき、午前10時から午後5時(休憩時間は正午から午後1時までの1時間とします)までの6時間に変更することができます。

2.申出をしようとする従業員は、短時間勤務の開始日及び終了日を明らかにして、短時間勤務開始予定日の1箇月前までに、所定の様式により会社に申し出るものとします。

3.第1項及び第2項の定めにかかわらず、次の(1)から(4)のいずれかに該当する者は、短時間勤務の申出をすることができません。
(1)短時間勤務が適用される期間に育児休業をしている者
(2)日々雇用される労働者。
(3)1日の所定労働時間6時間以下である者。
(4)労使協定により適用除外とされた者。

4.前項第4号に定める労使協定により適用除外とされる従業員は、次の(1)から(3)のいずれかに該当する従業員です。
(1)当社において引続き雇用された期間が1年に満たない者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の者
(3)業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する者

5.前項第3号に定める者については、会社に対し所定の様式で申し出ることにより、始業及び終業時刻を30分の範囲内で繰上げ又は繰下げることができます。この場合には、繰上げ又は繰下げの開始日及び終了日を明らかにして、開始予定日の1箇月前までに、所定の様式により会社に申し出るものとします。

6.短時間勤務の適用を受ける間の賃金は、賃金規定に基づき、時間給換算した実労働時間分の基本給及び諸手当を支給します。

7.賞与は、算定対象期間に短時間勤務の適用を受ける期間がある場合には、短時間勤務の期間中の不就労時間分につき、減額して査定するものとします。
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2.所定外労働の制限

 事業主は、3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合、当該従業員に所定労働時間を超えて労働させることができなくなります。

 この制度の対象となる従業員から日々雇用される者は除かれます。また、労使協定により、(1)当該事業主に引続き雇用された期間が1年に満たない者、(2)1週間の所定労働日数が2日以下の者、を対象から外すことができますが、対象者を特に女性に限ることはできません。

 所定外労働制限の申出は、1回につき1箇月以上1年以内の期間について、開始予定日と終了予定日等を明らかにして、開始予定日の1箇月前までに事業主に申し出る必要があります。

 就業規則の条文は、次のようなものが考えられます。
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第○△条 3歳に満たない子を養育する従業員は、当該子を養育するため所定労働時間外の労働の制限を会社に申し出た場合、就業規則第△条の規定にかかわらず、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働することを命じないものとします。

2.申出を行う従業員は、1回につき1箇月以上1年以内の期間について、開始予定日と終了予定日等を明らかにして、開始予定日の1箇月前までに、所定の様式により会社に申し出るものとします。

3.第1項及び第2項の定めにかかわらず、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者は、時間外労働の制限の申出をすることができません。
(1)日々雇用される労働者。
(2)労使協定により適用除外とされた者。

4.前項第2号に定める時間外労働の制限の対象から除外される従業員は、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する従業員です。
(1)当社において引続き雇用された期間が1年に満たない者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の者
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3.介護休暇

 要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う従業員は、事業主に申し出ることにより、労働基準法で定める年次有給休暇とは別枠で、対象家族が1人であれば1年に5日まで、2に以上であれば10日まで、1日単位で休暇を取得することができます。

 ここでいう、「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を要する状態をいいます。また、「対象家族」とは、配偶者(事実上の婚姻関係を含む)、父母及び子、配偶者の父母、従業員が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫です。

 この制度の対象となる従業員から日々雇用される者は除かれます。また、労使協定により、(1)当該事業主に引続き雇用された期間が6箇月に満たない者、(2)1週間の所定労働日数が2日以下の者、を対象から外すことができます。

 介護休暇の申出は、休暇を取得する日及び理由等を明らかにして、事業主に申し出る必要があります。介護休暇の利用は緊急を要する場合も多いので、当日の電話等口頭の申出でも取得を認め、書面による提出を求める場合は、事後となっても差し支えない旨を定めることが必要です。

 就業規則の条文は、次のようなものが考えられます。
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第△△条 要介護状態にある対象家族を介護している従業員は、会社に申し出ることにより、当該家族の世話をするための介護休暇を取得することができます。

2.介護休暇の日数は、4月1日から翌年3月31日までの1年間につき、要介護状態にある対象家族が1人の場合には5労働日まで、2人以上の場合には10労働日までとします。

3.第1項及び第2項の定めにかかわらず、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者は、時間外労働の制限の申出をすることができません。
(1)日々雇用される労働者。
(2)労使協定により適用除外とされた者。

4.前項第2号に定める介護休暇の対象から除外される従業員は、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する従業員です。
(1)当社において引続き雇用された期間が6箇月に満たない者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の者

5.申出を行う従業員は、前日までに、所定の様式により会社に申し出るものとします。ただし、やむを得ない事情により事前に申出ができないときには、事後速やかに様式による届出を行わなければなりません。

6.介護休暇は無給とします。

7.会社は、介護休暇の申出に関する事項を確認するために、各種証明書の提出を求めることがあります。この場合、介護休暇を取得した従業員は、速やかに必要書類を提出することとします。
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