健康経営優良法人認定制度とは

 「健康経営」という用語と運動は、厚生労働省ではなく、経済産業省管轄の話のようです。経産省は「健康経営」という概念を世に広めるべく、「健康経営優良法人認定制度」なるものを推進しています。

 健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。健康経営優良法人認定制度は、中小規模の企業や医療法人を対象とした「中小規模法人部門」と、規模の大きい企業や医療法人を対象とした「大規模法人部門」の2つの部門に分け、それぞれの部門で「健康経営優良法人」を認定しています。

 「日本健康会議」は平成28年11月から申請受付を開始、平成29年2月に初回となる「健康経営優良法人2017」として、「大規模法人部門」に235法人、「中小規模法人部門」に95法人が認定されました。また、「中小規模法人部門」については、中小企業等における更なる健康経営の普及促進を図る観点から、平成29年8月に223法人の追加認定を行い、「健康経営優良法人2017(中小規模法人部門)」の認定は合わせて318法人となりました。

健康経営優良法人2018(中小規模法人部門)の認定基準
健康経営優良法人(中小規模法人部門) 認定基準解説書

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15分でわかるストレスケア(「心の耳」より)

 昨年頃からでしょうか、社労士業界でも「健康経営」という標語が目につくようになってきました。今ではすっかり日本語になった感のある片仮名英語「メンタルヘルス」なる用語ですが、やはり、外来語はしっくりと腑に落ちない隔靴搔痒の感じは免れませんし(浅草社労士は、「ファシリテート」などとうそぶいているコンサルタントは全く信用しません)、経営の視点からはメンタルヘルス対策はコストがかかるという発想になりがちなのは否めないでしょう。そこで、従業員が健康で働ける職場環境を整備していけば、休職者の問題などが起こりにくくなり、結果的に収益性が向上して業績改善につながるといった発想がしやすい「健康経営」という言い方が出てきたものと思われます。

 では、健康経営といいつつ、具体的に何をすればよいのか。厚労省が開いている「心の耳」というインターネット上のサイトに簡単な教材がありました。これなどをまず従業員にやってもらう、こんなことが先ずは第一歩になるのではないかと思います。最近は、無料で使用できるインターネット上の教材もなかなか洗練されてきており、これを利用しない手はありません。

 ちなみに、3.ストレスとつき合う方法で紹介されている「呼吸法」や「適度な運動」ですが、これらを行うコツは頭の中を勝手にぐるぐると廻っている心の動きを抑えて無心の状態に至ることです。瞑想、ヨガ、氣功など須くこのいわゆる無心の状態に至る方法論を含んでいるように思えます。

15分でわかるセルフケア(「心の耳」より)
5分できる職場のストレスセルフチェック(「心の耳」より)
「心の健康づくり助成金」の手引き

  

ストレスチェック実施状況

 厚生労働省は、労働安全衛生法に基づくストレスチェック実施状況について取りまとめ、公表しています。昨年度から常時50人以上の労働者を使用する事業場には、ストレスチェックを実施して、結果を労働基準監督署に報告する義務があります。その報告を平成29年6月末時点でまとめたもので、83%の事業場がストレスチェックを実施、そのうち78%の労働者が受検しており、受検者の0.6%が医師による面接指導を受けています。また、集団分析の実施状況は、全体の78.3%でした。

 ストレスチェック実施状況(平成29年6月末)

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産業医の権限強化へ

 地味なニュースですが、過重労働などによる体調不良やメンタル不調など重要課題に対処していく方策の一環として、産業医の役割がより機能的になるよう見直しが行われているようです。(1)産業医の事業所巡視義務を事業主が同意すれば、月1回から2月1回とすることができる、(2)事業主に対して健康診断結果に関する産業医への情報提供を義務化する、(3)事業主に対して1月当たり100時間を超える労働者に関する情報提供を義務化する、の3点は6月1日から施行されています。

 日本経済新聞電子版によれば、厚生労働省は長時間労働や過労死を防ぐため、2019年度にも企業で働く産業医の権限を強化し、企業に対し、過重労働を抑えるためにとった対策を産業医に報告するよう義務付けたり、選任した産業医を安易に解任できない仕組みを設けたりする、とのことです。


=== 日本経済新聞電子版 平成29年6月18日 ===

 現行法では従業員50人以上の事業所に対し、産業医の選任を義務付けている。産業医には従業員への面接指導のほか、職場を月1回は巡回することなどが求められている。ただ企業との連携が進まず、働き過ぎを防げていないとの指摘もある。厚労省は産業医の指導の効果を高めるには、企業の対策や従業員とのやりとりを一定程度、把握する必要があるとみる。

 そこで企業には産業医との情報共有を促し、就業時間の削減や配置転換など講じた手立てを報告させる。産業医は企業の報告や情報をもとに従業員と面談する。対策を講じない企業には説明責任を果たすよう求める。今は企業と産業医がそうした情報を交換する規定がない。

 産業医が意見を言いやすい環境もつくる。企業が産業医との契約を打ち切るときはその理由を労働組合側に知らせる。企業に都合の悪い指摘をした産業医を簡単に解任できないようにする狙いだ。

 産業医の権限強化は、政府が進める働き方改革の一環。病気と仕事の両立やメンタル不調の改善で産業医が果たす役割は大きいとしている。残業時間の上限規制や正社員と非正規の不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」などと合わせ、今秋の臨時国会に関係法案を提出する方針だ。

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

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「社員をうつ病に」社労士事件の雑感

 もう20年も以前ことですが、大手証券会社の海外駐在員をやっていたときの話。米国人の中年おじさんが浅草社労士の上司でした。この人は、ドイツ系とアイルランド系の移民の血を引く白人で、労働階級からのたたき上げでしたが、比較的保守的な考え方を持っていたような氣がします。あるときその米国人上司が口にしたこんなジョークがありました。「日本では、融通の効かない官僚制度が批判されているようだが、何なら要らない官僚たちをアメリカで引き受けてあげてもいいよ。その代わり、米国人弁護士をごっそり日本に輸出させてくれるならね。」

 米国は言わずと知れた訴訟社会ですが、彼に言わせれば、紛争は多すぎる弁護士がつくり出しているのだということでした。確かに、この意見には一理あります。とはいえ、米国は異なる様々な文化的背景を持った人々が共に暮らす移民国家であり、摩擦や紛争が生じることはむしろ必然で、これらを調整しなければらならい社会的要請は、我が国をはじめとする自然発生的な国家に比べると、格段に高いということも確かなのだろうと想像できます。

 また、欧米社会を形成する背骨の一つであるキリスト教は、善悪二元論的傾向が強い感じがしていますが、これは、ゾロアスター教の二元論の考え方が入っているという説を聞いたことがあります。勧善懲悪は、クリスチャンに限らず、万人受けする考え方ではありますが、我が国の仏教のあり方や「和を以て貴しとなす」と書かれた17条憲法などを勘案すると、我が国の伝統的な思想は、善悪二元論とは離れたところにあったのではないかと考えられます。我が国で伝統的に善しとされた態度というものは、基本的には「和を以て貴しとなす」であり、元々争いのないところに敢えて紛争を持ち込まないことでした。この傾向がみられるのは、近いところだけ見ても、戦後の企業内組合、善玉と悪玉が必ずしも明確でないリアルロボットアニメの隆盛など、また、極端に悪い方に作用しているのが戦後の日本外交の一部などです。これらは、突然に現れてきたものなどではなく、民族の歴史や伝統を反映したものであったともいえるのではないでしょうか。

 そんなことを考えさせてくれたのが、昨年から社労士業界を騒がせたこの事件です。どうも、事件はいまだに収束しておらず、紛争状態が続いているようです。件の社労士先生に関しては、ちょっとやり過ぎたという印象を持たざるを得なかったのですが、徹底抗戦を続ける旨、新聞が報じていました。確かに、近年の我が国の動向と言ったら、グローバル化、英語公用語化、規制緩和、物・金・人の流れの自由化等々をもてはやし、「和を以て貴しとなす」の伝統をどんどんかなぐり捨てていきそうな勢いなので、その流れにはそった出来事なのだという見方もありなのかもしれません。

 さて、冒頭の米国人上司の問いかけに対する浅草社労士の返事ですが、もちろん、「それだけはご勘弁を(汗)」だったように記憶しています。

=== 朝日新聞 電子版 平成28年6月21日 ===

 ブログに「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」と題する文章を載せたとして、愛知県社会保険労務士会から会員資格停止3年間の処分を受けた県内の社労士男性が、処分の取り消しと100万円の損害賠償を求める訴えを名古屋地裁に起こしたことが20日、わかった。提訴は1日付。男性は昨秋、問題のある社員をうつ病にするとして独自の方法をブログに紹介。社労士会は「社労士の信用または品位を害する行為」だとして、昨年12月に資格停止処分と退会勧告を出した。訴状で男性側は、弁明の機会だった理事会の開催連絡が4日前と直前で、本人や弁護士が出席できなかったといい、「処分は弁明の機会が与えられないまま行われており違法」と主張している。また、ブログの内容も「必ずしも悪質とは言えず、処分は裁量権の逸脱だ」などと訴え、処分の取り消しを求めた。 社労士会は取材に対し、「会則にのっとって適切に対応しており、処分に違法な点はない」としている。

 男性は国に対し、業務停止3カ月の懲戒処分の取り消しも求めており、名古屋地裁で訴訟が続いている。(斉藤佑介)

=== 転載 終わり ===

皐月の連休に撮った写真 ↓ ↓ ↓
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