冬季五輪と日本人の働き方

 日本選手も大いに活躍した平昌での冬季五輪が閉幕しました。地政学上のリスクが高まる中で、無事大会を終えて選手が帰国できれば「御」の字とさえ思っていたものですから、選手たちの活躍で予想外に盛り上がることができたといえます。

 その中でも、羽生結弦選手の完璧なSPと魔物を封じ込めたがごとくのフリーの演技、そして、日本人の美点を結晶にしたような立ち居振る舞いは素晴らしいものでしたが、ここでとり上げたいのは、スピードスケートの女子パシュート競技での金メダルです。個々人のタイムでは明らかに勝っている大柄なオランダ人選手を相手に、2秒近い差をつけて圧勝できた理由は、チームワークの良さの一言に尽きるのでしょう。ここで、浅草社労士が真っ先に思い出したのは、リオ五輪における男子400メートルリレーにおける銀メダルの走行でした。日本人がこの手の競技において発揮する「チームワークの良さとは一体何なのか」に思いを致したのです。

 陸上短距離競技にしても、スピードスケート競技にしても、基本的には、個々人の身体能力の高さ、体格の良さや筋力がものをいう競技だと思います。小柄で筋力の劣るアジア系の日本人は、これらの種目で不利な条件を背負って戦わなければなりません。しかし、チームで戦うという要素が加わることで、勝敗を左右する条件に変化が生じてくることを一番わかっていたのも日本チームだったのかもしれません。400メートルリレーにおける世界一速くて正確なバトンタッチやパシュートにおける芸術的ともいえる3人のシンクロ走行や戦略的な先頭交代、これらを実現した選手の練度と協調性は、日本の歴史、文化や伝統に根差したものであり、他国と比べても卓越したものであるように思えます。

 私たちの暮らす日本列島は、いうまでもなくユーラシア大陸から海で隔てられた島国であります。日本人の成り立ちには諸説ありますが、太古の昔から土着した人々にこれも相当に古い時代にユーラシア大陸や南方の島嶼など様々な地域から渡ってきた人々が混血してできた民族と考えておけば、まず間違いはないでしょう。日本列島は、大部分が温帯広葉樹林帯に属し、稲作農業などを行えば、それなりに生産を上げられる地域ですが、台風の通り道であるうえに、活火山も多く、ときには大地震に襲われること、さらに洪水を引き起こす急流に世界有数の豪雪地帯もあるという、文字通り災害の百貨店のような列島でもありました。

 そういう地域で生き延びていくためには、助け合い、協力し合うことの方が、殺したり、だましたりすることよりも合理的で、はるかにましな選択だったのでしょう。また、大陸に地続きの地域の事情とは全く異なった適度に狭い国土の中では、むやみに他者を殺害したり、危害を加えたりする豪族の噂は、直ちに伝播されることになり、こういう者たちの逃げ場がないため、淘汰されていったのではないでしょうか。結局は、この列島において協調性のある助け合いの精神を持った者が優勢となり、生き残ってきたのではないかと推測できるのです。さらには、そうして実現した比較的安全な生活環境の中で、職人的な技を磨いて蓄積していくことを善しとする伝統的な美意識が養われ、それが技の練度を磨いてゆく過程での選手が持つ高い意識の背景にあるものとの推測も成り立つのです。

 おそらくは、日本の学校や会社でやたらと協調性やチームワークの大切さが強く主張されることになっているのは、こうした国土の条件や風土に根差したある種の必然だったのではないかとさえ考えられるのです。米国流の文化が押し寄せてきた戦後、そして、バブル崩壊後方向性が見いだせなくなっている昨今は、脱日本的経営が叫ばれ、個人主義的な傾向、例えば「成果主義」などが強まっているような状況ですが、成果主義などを取り入れれば入れるほど日本経済は弱体化してきているように感じられるのは何故でしょうか。むしろ見直すべきは、我が国の歴史であり、伝統なのではないかと思います。平昌五輪におけるチームパシュートの金メダル獲得は、そんなことも私たちに教えてくれているように思えるのです。

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外国人労働者問題

 1月13日の日本経済新聞電子版には、「日本の職場、外国人労働者頼み 製造業は3%超え」と題した川手伊織氏の署名記事が掲載されておりました。「人手不足が強まるなかで外国人労働者への依存度が高まっている。この4年で外国人の雇用者は大きく増え、日本人がやや集まりにくい建設や警備などで就労する動きが活発だ。急激に伸びている女性や高齢者の就労者数もいずれ壁にあたりそうで、労働現場の外国人頼みが強まる見通しだ。」といった趣旨なのですが、この4年といえば第二次安倍政権発足以降の話です。自民党右派といわれ、比較的国民主義的傾向があると思われている安倍政権下でも、外国人労働者の流入はとどまるところを知らないようです。

 「厚生労働省によると、外国人労働者は2016年10月時点で108万3769人で今の景気回復が始まる直前の12年10月から40万人増えた。3割超にあたる36万人が従業員30人未満の中小零細企業に集中している。」、2016年時点で既に100万人を突破しており、しかも急激な伸び方といってよいです。

 「あらゆる分野で外国人の割合が上がっており、日本の全就業者数に占める外国人の依存度は12年秋の1.1%から1.7%に上昇した。過酷な労働条件から敬遠されることもある職業でとくに目立っており、廃棄物処理や警備などのサービス業は1.8%から2倍の3.7%に跳ね上がった。宿泊・飲食や製造業も3%を超えた。実際の人数をみてみると、製造業の場合は4年間で全体で9万人増えたが、この9割弱の7.7万人は外国人だ。卸売・小売業でも増えた分の67%にあたる7万人弱が外国人で、いずれも新しい働き手のほとんどを外国人が占めるという異例の状況だ。建設業は4年で外国人が2.8万人増えた。それでも労働力不足を補えず、全体の就業者は17万人も減った。リネンサプライなど生活関連サービス・娯楽業も外国人を入れても全体で就業者が減少。インターネット通販拡大で倉庫で仕分けなどをする人が足りない運輸・郵便も外国人の伸びが際立っている。」

 要するに、低賃金で過酷な労働条件の仕事を日本人労働者が敬遠する業種について、外国人労働者を入れて彼等に担ってもらわざるを得ないと言いたいようです。しかし、日本人も賃金が引き上げられれば、多少過酷な労働条件であっても建設業または製造業などの業種に労働者が流入する可能性は高いのです。この類の外国人労働者を大量に入れようとするのは、低賃金で労働者を使用するための方便に過ぎず、記事中でも指摘されているとおり「同じ仕事の日本人の賃金上昇を抑えている」のです。そればかりではなく、安い労働力が使えるということになれば、生産性向上のための設備投資意欲が薄れるという副作用も容易に想像されます。さらに、注意しなければならないのは、外国人労働者の急増が将来の外国人移民の問題に直結していくことです。すなわち、現在のEU諸国が抱えてしまって手の施しようがなくなっている「社会保障費負担の増大」、「治安の急激な悪化」といった深刻な事態をなぞってしまうことです。

 また、技能実習制制度は、そもそもその制度の成り立ちからして腑に落ちない点があるばかりでなく、低賃金労働や過酷な労働条件で働かされているといった弊害が指摘されるようになってきており、発足から20余年が経過した今日、早期の制度廃止を検討すべき時期にきていると思われます。

=== 日本経済新聞電子版記事より抜粋 ===

 経済に及ぼす影響は様々だ。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は不法滞在者ら統計に載らない人も最大21万人いると想定。労働単価が低い外国人も多く入ってきたことで同じ仕事の日本人の賃金上昇を抑えている可能性があるという。それでも経済全体でみれば大きな利点も浮かぶ。河野氏によると、現在の年10万人ペースで外国人労働者が増えれば経済のパイが次第に膨らみ、国内総生産(GDP)を年0.07%押し上げる。30年まで続けば効果は1%になる。

 労働市場の変化からも、外国人依存が進むのは確実だ。2000年から16年までに日本の労働力人口がどう変化したかをみると、15~64歳の男性が397万人も急減した。その一方で高齢者が293万人、15~64歳の女性も10万人ずつ増え、労働人口の減少分の8割弱を補ってきた。だが、国立社会保障・人口問題研究所によると15歳以上人口は25年までにさらに270万人も減る。20年代になると高齢者、女性の労働参加にもおのずと限界が訪れ、不足する労働力の多くを外国人に頼らざるを得なくなるとの声が多い。第一生命経済研究所の星野卓也氏は医療・介護分野の担い手だけで150万人以上不足し、経済的な損失が6兆円に上るとはじく。

 外国人の就労には規制の壁もある。外国人には技能実習生や留学生も含まれ、実習生は16年秋時点で約21万人と4年で6割も増えた。ただ、実習生は常勤職員が300人超いる企業の初年度の受け入れ枠は原則、職員の5%までで、むやみに増やせるわけではない。技能を身につける名目で働くという曖昧な位置づけを悪用する企業も多い。低賃金、長時間労働といった劣悪な待遇で働かせる問題への対処が必要だ。 留学生は週28時間以内ならアルバイトができ、コンビニエンスストアなどで働く例が多い。そのまま日本企業に就職する学生もいるが、専門性の高い職種や日本企業の海外展開業務に限られる。比較的単純な労働で働ける期間は限られ、ノウハウ蓄積にも限界がある。経済界の中では、中程度のスキルを持つ外国人に対し、国がもっと労働参加の門戸を広げてほしいとの声もある。

 政府の外国人労働者の受け入れは、経営者・研究者らの高度人材を除けば特定分野に絞ってきた。人手不足の深刻な農業などに広げているが、企業活動の実態を見ながら受け入れ議論を加速する必要がある。

(川手伊織)

=== 転載終わり (下線は浅草社労士) ===

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未払い賃金と消滅時効

 未払い賃金(多くの場合「未払い残業代」)の請求期限を、現行2年から5年に延長することが検討されているという記事が平成29年11月19日の日本経済新聞電子版に掲載されておりました。記事では、専らサービス残業を減らし、長時間労働の抑制につなげるのが狙いという文脈で語られておりましたが、本年5月26日に国会で可決成立した改正民法(未施行)に関連して「賃金債権」の時効期間が2年から5年になるのではないかという問題提起が一部の学者および専門家からも投げかけられていた論点です。


1.賃金債権の消滅時効の考え方

 まず、これまでの民法における債権の消滅時効がどのようになっていたかということですが、次の通りです。

(1)債権の消滅時効は、10年。これが大原則。(民法167条1項)

(2)しかし、1年から3年の短期消滅時効にかかる債権が多く存在し、賃金債権の消滅時効は民法上1年と規定されていました。

 1年:民法174条
 1箇月以下の期間によって定めた使用人の給料に係る債権、自己の労力の提供・演芸を業とする者の報酬・供給物の代価に係る債権 等

 2年:民法172条、173条
 自己の技能を用い、注文を受けて物を製作し、または自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
 生産者・卸売商人・小売商人売却した産物・商品の代価に係る債権 等

 3年:民法170条・171条
 医師・助産師・薬剤師の診療・助産・調剤に係る債権 等

(3)ただし、労働基準法115条は、賃金債権の消滅時効を2年、退職金債権については5年と定めており、一般法の民法に対して、労基法の規定が優先されることになります。

 従って、これまでは、一般的な賃金債権の時効は2年と考えられてきました。ですから、未払い残業代が問題になった事案では、2年さかのぼりの金額が請求されることになっていたのです。


2.改正民法で債権時効は?

 それでは、今回の改正民法は、消滅時効に関してどのようになったかといいますと、次の通りです。

(1)短期消滅時効は全廃され、債権の種類を問わず、主観的起算点(権利行使できることを知った時)から5年または客観的起算点(権利行使できる時)から10年のいずれか早く満了する方の期間ということになりました。(改正民法166条1項)

(2)契約に基づく債権については、基本的には主観的起算点から5年の時効期間が適用されると考えられます。

 この債権の消滅時効に関する原則を素直に賃金債権に当てはめると、賃金債権についても消滅時効は5年ということになります。そこで、問題になるのが、賃金債権の消滅時効を2年と規定した労働基準法115条との整合性です。これまで、労基法115条は、労働者を保護するために民法よりも労働者にとって有利な消滅時効期間を定めた規定であると解されてきましたが、改正民法ではこの関係が逆転しています。

 しかし、この問題に関しては、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」においても言及されておらず、現行の労基法115条がそのまま適用され続けるものと考えられています(「民法改正が人事労務に与える影響」廣石忠司専大教授 東京都社労士会会報11月号)。

 今回の日経紙の記事は、厚生労働省が、長時間労働の問題とも絡めて、改めて消滅時効期間の延長を検討していることを伝えているものですが、実際消滅時効が2年から5年に延びた場合、経営に与える影響は大きく、今後活発な議論とともに慎重な検討が必須ではないかと考えます。


3.不法行為も消滅時効

 不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅し、不法行為の時から20年経過したときも同様と定めています(民法724条)。そして、後者の20年については、判例上、時効の中断・停止を認めない除斥期間とされてきました。この解釈に対しては被害者救済の観点から問題があるとの指摘があったためか、今回の改正では、不法行為の時から20年の期間も時効期間であることが条文上明記されました。

 また、人の生命・身体にの侵害による損害賠償請求権について、消滅時効を延長するための特則が設けられ、不法行為であっても主観的起算点から5年とされています(改正民法724条の2)。


=== 日本経済新聞電子版 平成29年11月19日 ===

 厚生労働省は働き手が企業に対し、未払い賃金の支払いを請求できる期間を延長する方針だ。労働基準法は過去2年にさかのぼって請求できるとしているが、最長5年を軸に調整する。サービス残業を減らし、長時間労働の抑制につなげる狙いだが、企業の負担を増やす面もある。厚労省は専門家や労使の意見を幅広く聞いて結論を出すことにしている。
 厚労省は年内に民法や労働法の学識経験者らによる検討会を設置。そこでの議論を踏まえ、来年夏をメドに労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で労使を交えた具体的な時効の議論を進める。法改正が必要となれば、2019年に法案を国会に提出し、20年にも施行することにしている。

 検討会では、請求可能な年限を何年にすべきかについて一定の結論を出してもらう。長時間労働の抑止効果や企業の人事労務管理の負担増などを点検。未払い賃金の時効期間を議論することで、有給休暇の取得が進むかどうかについても議論したい考えだ。

 労働政策研究・研修機構によると、未払い賃金の時効は英国とフランスで2年、ドイツは3年となっている。一般的な債権の時効より短めだという。日本は民法で1年とするが、労基法は労働者保護の観点を強くして2年に延ばしている。
 ただ5月に成立した改正民法では、賃金の支払い請求ができる期間を1年から5年になることを決めた。労基法を民法の基準に合わせるかが議論のポイントになる。
(以下省略)

=== 転載終わり(下線は浅草社労士) ===


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定年年齢65歳の会社

 60歳を超えた社員のうち、希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入などを企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が参院本会議で民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立したのが、平成24年(2012年)8月29日のことでした。同改正法は翌年の平成25年(2013年)4月に施行されております。ここでいう65歳までの雇用安定措置ですが、(1)定年年齢の引上げ、(2)継続雇用制度(勤務延長制度及び再雇用制度)、又は(3)定年制度の廃止の3つの方法から選択することが認められています。このうち、(1)及び(3)は人件費の面から大企業や余程の高収益企業でなければ現実的ではないといわれ、現に再雇用などの継続雇用制度を導入した会社が8割から9割といわれていました。

 しかし、ここに来て構造的な要因ともいえる生産年齢人口の急減から、慢性的な人手不足常態が顕在化してきたからでしょうか、大企業を中心に(1)定年年齢の引上げを行う会社が散見されるようになってきています。9月6日の日本経済新聞電子版は、日本生命保険が2021年度から従業員約1万5000人を対象に定年を現状の60歳から65歳に引き上げることとし、8月末に労働組合に示したとを報じています。生保業界ではT&Dホールディングス傘下の太陽生命保険が本年4月からの65歳までの定年延長を決めています。また、明治安田生命保険も2019年度からの定年延長を決めていると伝えられています。

 製造業大手では、 日本ガイシが、全従業員の定年を65歳に引き上げる制度を導入したと正式に発表しています。従来は60歳で定年を迎えると、希望者のみを嘱託職員として再雇用してきましたが、8割以上が再雇用を選択することを踏まえて定年延長を決めたそうです。制度導入に合わせて60歳以降の給与体系も見直し、組合員については従来の再雇用では5~6割ほどに年収が下がっていたのを定年延長の導入により60歳以降も年収を維持できるようにします。また、管理職らについても定年延長の対象とし、給与については60歳時点での評価や役割などに応じて年収水準を決める仕組みになっています。

 本田技研も次のような抜本的ともいえる賃金制度の見直しを平成27年(2015年)に発表しています。

-ホンダは、定年を現状の60歳から65歳に引き上げる方針。現状の再雇用制度よりも給与の削減幅を緩やかにしてシニア社員の労働意欲を高める。ホンダの現制度では60歳で定年を迎えた後、定年時の50%の給与水準で最長5年間、再雇用している。新制度では定年時の平均80%の給与水準で、最長65歳まで定年時期を選べるようにする。

-現在の再雇用制度の利用者は全体の5~6割程度。新制度導入で60歳以上で働く人材が増える見通し。海外駐在なども可能にして職場の選択肢を増やす。国内出張の日当廃止などで総人件費は現行と同じ程度に抑える。

-家族手当も見直す。これまでは専業主婦を含む1人目の扶養家族に対して月1万6千円を支給し、2人目からは1人当たり4800円を増額していた。今後は家族手当を段階的になくす代わりに、18歳までの子どもの育児手当、扶養する要介護者への介護手当を新設する。1人当たり2万円ずつを上限なしで支給する考えだ。

 金融・サーヴィス業界でも、ファミリーレストラン最大手のすかいらーくは2015年9月、従業員の定年を60歳から65歳に延長することを決めています。野村証券は、4月から個人向け営業を担当する一部社員の定年を65歳に延長し、65歳到達後は最長70歳まで再雇用すること、大和ハウス工業とサントリーホールディングスも2013年に65歳定年制を導入したことなどが知られています。

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企業の倒産動向に人手不足の影

 ここ2、3年顕著になってきた生産年齢人口の急激な減少による労働市場の人手不足傾向ですが、これによって最近の企業の倒産動向にも変化の兆しがみられることを、16日の日本経済新聞電子版が伝えています。

 記事によれば、「2009年の中小企業金融円滑化法の施行を機に倒産は減少に転じ、同法終了後も企業の返済猶予申請に対して金融機関が柔軟に対応したため、倒産は減少が続いてきた。それが17年上半期の倒産は4247件となり、8年ぶりに前年同期を上回った。倒産をめぐる状況が変わりつつあるのではないか。タカタが6月26日東京地裁に民事再生法の適用を申請したため、上場企業の倒産が1年9カ月ぶりに発生。倒産のトレンドにも変化の兆しがみえる。」とのことです。

 一般消費者を対象にしたビジネスでの倒産で世間の耳目を集めることになったのが、3月27日に東京地裁に破産を申し立てた旅行会社、てるみくらぶ(東京・渋谷)のケースでした。また、エステサロン経営のグロワール・ブリエ東京(東京・港)が3月28日、結婚式場経営のBrillia(東京・渋谷)が3月8日、それぞれ東京地裁に自己破産を申請しています。旅行、エステ、結婚式場は、サービスの提供前に代金を受け取る「前受け金ビジネス」という点でも共通しています。

 業績拡大するなかで倒産する事例も目につくようになってきているようです。相次いで出店する一方で店長となる人材が確保できなかったほか、労働環境に不満を持つ従業員の退社もあったとされる倒産事例もあります。人手不足による倒産の増加はデータでも裏づけられ、2017年上半期は49件の人手不足倒産が発生していますが、これは4年前の2.9倍にあたり、人手不足が続くとみられる中、今後もさらに増加すると予想されます。業種別にみると、サービス業が全体の30.6%でトップで、次いで建設業となっています。

 経営者にとって、いかに良い人を採用して、会社に定着して働き続けてもらうか、「採用」と「教育研修」が絶対的に重要な時代に入りつつあるようです。

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